右ひざ負傷から復帰2戦目で…

 セルティックに所属する日本代表FW古橋亨梧が、右ひざの負傷から戻ってきた。復帰2戦目となった現地3日のアバディーン戦で貴重な先制ゴールを奪い、不振にあえいでいたチームを勝利に導いたのである。負傷明け早々の日本代表招集に賛否両論渦巻くなか、自らのプレーでその不安を払拭して見せた。(文:舩木渉)

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「キョウゴが仕事をした! どれほど恋しかったことか! 彼はなんという違いを生み出すのか!」

 現地の実況が感情のままに吠えた。現地3日に行われたスコティッシュ・プレミアシップの第8節で、セルティックに所属する日本代表FW古橋亨梧が自らの復活をアピールする先制点を挙げた。

 アバディーン戦に1トップで先発出場した古橋は11分、右サイドのスローインの流れからMFデイビッド・ターンブルの精密なクロスに胸で合わせ、約1ヶ月ぶりのゴール。公式戦では今季8得点目を記録した。

 先月の日本代表戦で右ひざを痛めたことにより、9月はほとんどプレーできなかった。古橋が不在の間、セルティックは不振にあえぐことになる。特に成績が芳しくなくなかったアウェイでは8月下旬から4連敗。国内リーグも9月は3試合でわずか1勝と苦しみ、アンジェ・ポステコグルー監督の立場が危うくなるのではないかとも囁かれていた。

 右ひざの回復までに約1ヶ月を要するとみられていた古橋の復帰も、当初は10月の代表ウィーク明けが濃厚とされていた。

 しかし、予想以上のスピードでチーム練習に再合流し、9月30日に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)のレヴァークーゼン戦で実戦復帰。試合はホームで0-4の敗戦に終わったが、状態の良さを感じさせるプレーを披露して、直後に日本代表への追加招集も発表された。

 背番号8の離脱にともなってチャンスを得たスイス代表FWアルビアン・アジェティは懸命にエースの穴を埋めようとしていたが、ゴールはリーグ戦で9月唯一の勝利を記録したロス・カウンティ戦の2つだけと不甲斐ないプレーに終始。オランダ1部リーグ得点王の実績を引っ提げて加入したギリシャ代表FWギオルゴス・ジャコマキスは国内リーグ戦で1試合も出番を与えられておらず、期待に応えられていない。

らしさが溢れたワンチャンス

 そんな状況でチーム成績も低迷し、誰もが待ち焦がれていたのが古橋の復帰だったのである。そして、彼は周囲の期待に結果で応えて見せた。

 スローインのリターンを受けたターンブルが右サイドで顔を上げると、古橋はすでに相手DFの背後をとろうと動き出していた。そしてターンブルがクロスの体勢に入るとみるや、一気にステップのスピードを上げてファーサイドへ。鮮やかな動きで相手DFの視界から消え、スコットランド代表MFからの絶妙なクロスを胸で押し込んだ。

 古橋がアバディーン戦で放ったシュートはこの1本のみ。チーム全体としてボール支配率61%を記録しながら、ディフェンスラインからのビルドアップがおぼつかず、相手に主導権を握られている印象の時間帯も多かっただけに、序盤の11分にワンチャンスを生かして先制パンチを食らわせられたのは大きかった。

 その後、セルティックは56分にコーナーキックから失点してしまう。追いつかれたうえに先制点以降はまともなチャンスシーンをほとんど作らせてもらえず、シュート数でもアバディーンに上回られていた。終盤に差し掛かるにつれて「またアウェイで勝ち点を落とすのか…」という雰囲気も漂う。

 アウェイで5試合連続勝利なしという結末が迫るなか、不穏な空気を振り払ったのは古橋と同じく今夏新加入のポルトガル人FWジョタだった。

 84分、ペナルティエリア手前でターンブルからのパスを受けたMFトム・ロギッチは反転しながら左サイドへスルーパスを送る。そして、パスコースの先にオーバーラップしてきていたDFアダム・モントゴメリーの折り返しを、ジョタが相手DFを背負いながら押し込んだ。

 セルティックは72分に右ウィングのFWリエル・アバダに代えてストライカータイプのアジェティを投入し、古橋を左サイドへ配置転換。それまで左サイドでプレーしていたジョタを右サイドに移していた。同時に経験豊富なチャンスメーカーであるロギッチを交代出場させていたことも含め、ポステコグルー監督の采配が実った形だ。

ジョタの台頭で固まった攻撃の形

 そして、最終的に2-1で勝利を飾ったアバディーン戦では改めて攻撃陣のタレント力が証明された。とりわけ古橋とジョタの個人能力とユーティリティ性は、今後の戦いにおいても極めて重要な要素になっていくだろう。

 夏の移籍市場閉幕間際にベンフィカからの期限付き移籍でセルティックに加入したジョタは、ポルトガルの各世代別代表の常連だった22歳のウィンガーだ。母国では“ネクスト・ジョアン・フェリックス”と期待され、ベンフィカのトップチームではジョーカー的起用により台頭しつつあった時期もあった。

 繊細な足もとのテクニックと正確な両足のキックが持ち味で、細かいステップとフェイントで相手を手玉に取るドリブルを簡単には止められない。左ウィングを主戦場とし、セルティックでもシーズン序盤は適役不在だった左サイドに定着しつつある。

 ドリブル突破からのクロスやラストパスによるチャンスメイクはもちろん、フィニッシャーとしての能力も高い。アバディーン戦の前半に鋭いカットインからクロスバー直撃の強烈なミドルシュートを放ったように、ゴールへの意識は非常に高く、すでにセルティックでは公式戦7試合出場2得点1アシストと高い確率で得点に関与できている。

 相手のディフェンスラインの背後を狙うランニングや、相手のマークをかいくぐる一瞬の動き出しに長ける古橋との相性のよさもうかがえる。

負傷明け早々の日本代表招集に懸念も…

 今後は右サイドに縦への突破力が武器のアバダ、左サイドに変幻自在の突破とチャンスメイクが特徴のジョタ、そして中央にフィニッシュ役の古橋という補完性の高い3トップが定着していきそうだ。

 ジョタのスコットランドでのデビューが9月に入ってからということもあり、古橋とアバダも含めた3人が同時にピッチに立ったのは9月30日のレヴァークーゼン戦が初めて。アバディーン戦が2試合目ということで、今後より連係や連動が洗練されていけば、攻撃陣の破壊力が増していくに違いない。

 さらにジョタや古橋のユーティリティ性も生かせれば、流れを変えたいときにアジェティやジャコマキスらを投入しながら配置を入れ替え、攻撃パターンに多彩さをもたらすこともできる。ポステコグルー監督は横浜F・マリノス時代にも前線3トップの豊富な組み合わせをチームの武器の1つにしており、考えうるパターンも頭の中にたくさん蓄えてあるだろう。

 こうして新たなユニットが可能性を発揮しはじめ、負傷からも復帰したばかりという状況で、古橋を日本代表へ招集したことには賛否両論あるのは間違いない。特にコンディション面への懸念は大きいだろうが、アバディーン戦ではフル出場しており、当初ほど大きな心配はなさそうだ。

 今回の日本代表は不測の事態に備えて古橋を含め26人を招集しており、いざ合流して状態を見極めてから、7日のサウジアラビア代表戦後に日本への遠征を回避して所属クラブへ帰すという選択肢もなくはない。セルティックではすでに不可欠な存在として立場を確立できており、代表招集による離脱中にポジションを失う可能性も極めて低いだろう。

 古橋が大きな負傷なく日本代表での活動を終えられれば、ジョタ、アバダとともに組むキレキレな3トップはセルティックの攻撃を引っ張る最重要ユニットになるはずだ。

(文:舩木渉)