タッチ数がチーム最少でも1得点1アシスト

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第4節が現地4日に行われ、アウェイに乗り込んだセルティックはハンガリー王者フェレンツバロシュに3-2で勝利を収めた。グループステージ突破の可能性を残すために重要な一戦で、セルティックに所属するFW古橋亨梧は1得点1アシストの大活躍。改めて監督やチームメイトたちからの信頼に応えるパフォーマンスで勝利に貢献した。(文:舩木渉)

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 まさに電光石火の一撃だった。

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)のグループステージ第4節が現地4日に行われ、フェレンツバロシュ戦に先発出場したセルティックの古橋亨梧は開始3分に先制点を挙げた。

 相手の安易なバックパスをインターセプトしたFWリエル・アバダが、そのままドリブルでペナルティエリア手前までボールを運び、DFのスライディングをかわしつつ左にパスを送る。それを受けた古橋は、巧妙なキックフェイントで足もとに飛び込んでくるDFを置き去りにし、左足一閃。

 完全にタイミングをずらされたフェレンツバロシュのGKボグダン・アダムはシュートに反応できず、見送るしかなかった。アバダのボール奪取から約6秒間でフィニッシュまで持ち込む理想的なショートカウンターだった。

 その後、セルティックは2失点を喫したものの、23分にFWジョタ、60分にはアバダがゴールネットを揺らして3-2の勝利を収めている。アウェイで貴重な勝ち点3をつかみ、2連勝でグループステージ突破に望みをつないだ。

 古橋は絶妙なスルーパスでアバダのゴールをお膳立てし、1得点1アシスト。70分間のプレーでタッチ数はスタメンに名を連ねた選手の中で最も少ない「24回」でも、限られたプレー回数の中で確実に結果を残す。1勝2敗という苦境で迎えた決勝トーナメント進出に向けて重要な一戦で、先発起用という期待に応える活躍を披露して連勝に大きく貢献した。

チーム内得点王なのに先発から外れた理由

 複数のスコットランドメディアによれば、セルティックを率いるアンジェ・ポステコグルー監督は「2失点には失望している」としながらも「我々のパフォーマンスは非常に良かったと思う。3つの素晴らしいゴールを奪い、さらに2つか3つのゴールを決めるチャンスがあった」「2失点は今夜の我々がどんなプレーをしたかを真に反映したものではない」と選手たちを称賛したという。

 とりわけ「今夜の彼らは素晴らしかった」と、それぞれ1点ずつ挙げたアバダ、ジョタ、古橋の3トップの働きぶりに大満足の様子。「ただロングボールを蹴るのではなく、後ろからのビルドアップが彼らにいいチャンスを与えるという事実を無視はできない」と、指揮官自身が掲げるチームスタイルにも自信を深めている。

 10月に入ってから公式戦5連勝と波に乗っていたセルティックだが、3-2で勝利したアウェイのフェレンツバロシュ戦を前に国内リーグの重要な試合で勝ち点を落としていた。今季最初の対戦で0-1と敗れていたリヴィングストンとの一戦を0-0のスコアレスドローで終えていたのである。

 この試合では古橋がベンチスタートとなり、セルティックはゴールを奪えず。公式戦でチーム最多得点を記録しているエースストライカーを先発起用しなかったポステコグルー監督の采配に、多くのファンから不満の声が上がったという。

 しかし、指揮官としても古橋の起用法には考えがあるようだ。できるだけ多くのゴールを決めてもらうためには「選手を守る必要がある」と、3日に行われたフェレンツバロシュ戦の前日記者会見の中で説明している。

「我々はキョウゴやカラム・マクレガーを失っていた時期があった。ギオルゴス・ジャコマキスも、マイキー・ジョンストンも、ジェームズ・フォレストも負傷離脱していて、本当の意味で選択肢がない時期もあった。今は彼らが復帰しているので、試合の中で稼働させ、チームに適応させるために、できるだけ多くのプレー時間を与える必要がある。

一方、キョウゴに関してはシーズンの4分の3を終えたタイミングで日本を離れたこともあって、我々は本当に気をつけなくてはいけない。彼は(9月の)日本代表の活動を終えてセルティックに戻ってきた時、怪我をしていた。

もちろんファンの皆さんがキョウゴがいつもピッチに立っていることを望むのは理解できる。そして、彼はプレーするたびに素晴らしいプレーを見せてくれている。しかし、我々は注意しなくてはならない。まだ11月が始まったばかりで、このままでは来年の4月や5月までの全ての試合でトップレベルのプレーを見せることはできないんだ」

信頼されているからこそ…

 おそらくポステコグルー監督としても、できるなら古橋を毎試合先発でピッチに立たせたいだろう。実際、週に2試合のペースで先発起用していた時期もあったし、古橋自身もそれに耐えうる力強さを発揮していた。

 しかし、Jリーグでプレーしていたことを考えると、本来であればシーズン終盤の最も疲労が蓄積している時期。さらに古橋は毎月のように日本代表合宿に参加するため、欧州とアジアを往復する長距離移動や厳しい連戦を強いられている。

 まして欧州トップレベルの環境に挑戦し始めて数ヶ月という段階で、日本よりも心身ともに高い強度が求められる環境でかかる負荷の重さは計り知れない。ポステコグルー監督は古橋がチームを勝たせるための重要な存在だと信頼しているからこそ、大きな怪我のリスクを極力減らすように、どこかで燃え尽きることのないように、慎重に状態を見極めているのだろう。

 また、ポステコグルー監督は横浜F・マリノス時代から、負傷明けの選手や新加入選手を積極的にピッチに立たせてチームに馴染ませていく方針だった。ジャコマキスやジョンストンらの復帰によって選択肢が増えた今、中長期的な視点に立って選手層をより充実させるために彼らに多くのプレー時間を与えているとも考えられる。

 古橋は以前「10回動いて、1回パスが出てくればいいという精神で動き出しています」と語っていたが、セルティックでは「1回」が「5回」にも「6回」にもなってきている。周囲のチームメイトは必ず背番号8が最前線で走り出すタイミングを見ているし、いい形でパスが出てくるようにもなった。

 非常に良好な関係を築いているジョタも、古橋について「彼の動きは信じられないほどうまい。僕が見てきた中でも、動き出しについては最高の選手の1人だ」と手放しで称賛する。

「キョウゴは『英語がわからなくてもやれる』と言っていたのは面白いよね。だから僕が日本語を勉強して、喋れるようにしようと思っているよ。僕は絶対に彼と話すために日本語を学びにいく。でも、最も重要なのはピッチの中で僕たちがお互いのことを理解し始めていること。試合を重ねるごとに僕たちの関係性はもっと良くなっていくはずだ」

 チームメイトからこれだけ信頼される重要な選手だからこそ、ポステコグルー監督としては何かしらの理由で古橋を失うリスクを避けることが必要だと考えている。ベンチスタートになっても、即ちポジションを失ったという意味ではない。

 むしろ信頼が厚くなっている証と捉えるべきだろう。欧州サッカーの強度に適応しつつある古橋が、今後どのようにステップアップしていくか楽しみで仕方ない。

(文:舩木渉)