浦和レッズの悪循環

明治安田生命J1リーグ第35節、鹿島アントラーズ対浦和レッズが7日に行われ、1-0で鹿島が勝利を収めた。敗れた浦和はリーグ戦でのAFCチャンピオンズリーグ出場権獲得から遠のくことに。最終盤に突入した今季に希望は残されているのだろうか。(取材・文:元川悦子)
——————————————————

 3日に川崎フロンターレが史上最速タイとなる4度目の優勝を決め、J1は最初の区切りを迎えた。次なる注目点はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権争いだ。34節終了時点で2位の横浜F・マリノスは当確で、3位の座をヴィッセル神戸、名古屋グランパス、鹿島アントラーズ、浦和レッズの4チームが争っている状況だった。

 勝ち点59で並ぶ鹿島と浦和は神戸と5ポイント差。7日の直接対決で負けた方が事実上の脱落となる。絶対に負けられない大一番に向け、両者ともに凄まじい闘争心を燃やしていたはず。決戦の地・カシマスタジアムも観客制限が収容50%まで緩和され、1万6518人が集結。声の応援こそなかったものの、コロナ前の熱気が戻ってきた印象だった。

 3日のサンフレッチェ広島戦でGKをクォン・スンテに変え、4-1に勝利を収めた鹿島は前節とまったく同じスタメンで挑んできた。対する浦和はキャスパー・ユンカーが先発に復帰。その一方でケガの酒井宏樹と柴戸海がベンチ外となり、西大伍と伊藤敦樹がスタメン出場した。

 浦和としてはいつも通り、しっかりとボールを保持し、丁寧に攻撃を組み立て、フィニッシュへ持ち込みたかった。が、開始直後からの鹿島の強度と激しさに面食らい、落ち着きを失う形になった。最終ラインからビルドアップしようにもプレスに引っかかり、簡単にボールを失うため、守勢に回る……。そんな悪循環を余儀なくされる。

指揮官が挙げた課題

 逆に鹿島は三竿健斗とディエゴ・ピトゥカの両ボランチが余裕をもってボールをコントロール。左右にサイドチェンジを送り、常本佳吾と安西幸輝の両サイドバックが高い位置に侵入。そこからクロスを入れるような攻撃チャンスを数多く作っていた。

 とりわけ、異彩を放ったのが安西だ。「鹿島に合流して1〜2カ月はコンディションが上がらなかったが、10月に入って体が動くようになった」と本人も言うように、スピーディーな攻め上がりを取り戻した印象。逆に対面の西は苦しめられた。古巣相手に存在感を示したかったはずだが、「強くプレッシャーに来るのは分かっていたけど、何回か引っかかって怖がってしまったのかなと思う」と反省の弁を口にしていた。

 こうした流れが45分間続き、前半のシュート数は鹿島の10本に対し、浦和はゼロ。前半36分には鹿島の右CKの流れから土居聖真に先制点を決められ、ビハインドも背負った。この展開はリカルド・ロドリゲス監督も想像していなかったに違いない。「前半は望んでいたプレーができなかった。つないでいく中で、あまり意味のないロングボールだったりの攻撃になってしまった」と課題を指摘した。

 今季の浦和は対戦相手によって内容の差が大きく出ることが往々にしてある。リカルド体制の戦い方がある程度、成熟度を増してきた10月以降の戦いぶりを見ると、J1上位の神戸や川崎、鹿島、YBCルヴァンカップ準決勝を戦ったセレッソ大阪には内容・結果含めて苦戦を強いられたのに対し、格下と言えるガンバ大阪や柏レイソルには主導権を握って圧倒的に攻め込む戦いができている。

 最終ラインを統率する1人のアレクサンダー・ショルツも鹿島戦の前半について次のように語る。

「強度が足りなかったし…」

「強度が足りなかったし、ポジショニングもよくなかった。セカンドボールも鹿島に行ってしまった。非常に強い強度の流れからのプレーを見せた鹿島を称えたい」とショルツは話したが、そういう基準に合わせ、超えていくことが彼らの課題と言っていい。

 インテンシティやデュエルを引き上げ、試合開始から互角の展開に持ち込めないとACL出場権はもちろんのこと、タイトルは手にできない。現状の厳しさを再認識させられたこの日の前半45分間だったのではないか。

 戦術家のリカルド監督は巻き返しを図るべく、後半頭からユンカーに代えて小泉佳穂を投入。汰木康也と大久保智明も交代して修正を図った。それでもすぐには流れを引き戻せなかったが、後半の飲水タイム前後から攻め込む時間帯が増えていく。関根貴大が負傷した後、興梠慎三、槙野智章が登場した終盤はなりふり構わずゴールを奪いに行く泥臭い姿勢も見て取れた。

「レッズはACLの大舞台に戻らなきゃいけない」と槙野も口癖のように話していたが、それを果たそうと思うなら、1点のビハインドを跳ねのけ、同点、逆転に持ち込むしかない……。そんな悲壮感も彼らベテランからは感じられた。

 だが、鹿島の堅守は最後まで崩れなかった。

「後半のラスト20分くらいうまく相手にボールを運ばれたが、粘り強く持ちこたえられたかなと。前のメンバーを代えて少し押し返すことができ、相手の時間を減らせた」と相馬監督は采配的中に自信をのぞかせている。ラストの時間帯は犬飼智也も送り込んで5バック気味にして、虎の子の1点を守り抜いた。その気迫こそが常勝軍団の意地なのかもしれない。

 結果としてリカルド体制1年目の浦和は3位・神戸に8ポイント差をつけられ、ACL争いから後退してしまった。

 ただ、浦和にはまだACLの可能性が皆無というわけではない。

まだ諦めるのは早すぎる。浦和の希望は…

「4位という順位が重要になってくるかもしれない。最後まで戦って様子を見たい」とショルツがコメントしたように、4位になれば、天皇杯次第でACLプレーオフ参戦のチャンスが巡ってくるかもしれないのだ。目下、4位の鹿島とはまだ3差。まだ諦めるのは早すぎる。

 加えて言うと、浦和はその天皇杯でベスト4に残っている。自力でタイトルを取って本戦ストレートインの権利を得ることも不可能ではない。それはリカルド監督、選手たちにとって大きな希望だ。

 試合間隔が空く11月のインターナショナルウイークに立て直しを図れれば、J1ラスト3戦と12月12日の天皇杯準決勝に向けて再びギアを上げることもできるはず。今こそ、指揮官のマネージメント力が問われるのだ。

 J1終盤戦には横浜FMと名古屋との試合が残っているし、天皇杯の次戦の相手はルヴァンカップで苦杯を喫したセレッソだ。彼らに鹿島戦前半のような戦いをしていたら、大目標の達成は夢のまた夢だ。インテンシティとデュエルという課題をどう克服していくのか。そのあたりがやや弱いと目される平野祐一、小泉ら今季加入組の伸びしろに期待したいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】