勝利も見えたが…

 プレミアリーグ第13節、チェルシー対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間28日に行われ、1-1の引き分け。この試合ではC・ロナウドがベンチスタート。戦術変更で守備は改善されつつあるが…。(文:阿部勝教)

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 オーレ・グンナー・スールシャール監督解任後、マイケル・キャリックが暫定監督を務めるマンチェスター・ユナイテッドは、現地時間11月28日に敵地でチェルシーと対戦。怪我人が多く、正式な後任監督もまだ決まっていない状況にあるマンチェスター・ユナイテッドだが、粘り強い戦いを見せ、勝ち点「1」を持ち帰っている。

 圧倒的な攻撃力で現在首位を走るチェルシーに対し、キャリック監督は堅守速攻を選択。4-3-1-2の2トップとトップ下の選手が前線から果敢にプレスをかけ、中盤3人は縦パスが入った相手選手を潰してボールを奪取。取ったらすぐに前カウンターを狙っていた。

 そのため、この試合では前線からの守備を期待できないクリスティアーノ・ロナウドはベンチスタート。2トップには走力と運動量があるジェイドン・サンチョとマーカス・ラッシュフォードを起用した。

 この結果、前半はチェルシーに押し込まれ、なかなか戦術がハマらない時間が続いたが、後半開始早々に先制に成功する。

 50分、チェルシーのFKを弾くと、ブルーノ・フェルナンデスが前線に大きくクリア。すると、サンチョとラッシュフォードがこのボールを猛追。ジョルジーニョがトラップしたところでサンチョがボールを奪い、追走するラッシュフォードと相手GKの2対1に。最後はサンチョが冷静に決めきった。

 しかし、マンチェスター・ユナイテッドが狙っていた攻撃が完璧にハマったのはこの1回のみ。64分にはC・ロナウドを投入するも、直後にPKを献上してしまい失点。首位相手に勝利も見えたが、その後決定機を作れずドロー決着となった。

改善されない課題とは…

 前線からの連動したハイプレスや安定した引いた守りなど、スールシャール監督の退任以降、守備面は改善されつつある。しかし、まだまだ問題が残るのはやはり攻撃面だ。

 ポール・ポグバやルーク・ショーといったチャンスメイカーを怪我で欠いていたこともあるが、この日のマンチェスター・ユナイテッドは単純なパスミスも多く、全体の攻守の切り替えも遅かった。

 戦術的な決まりがあったのかもしれないが、自陣でボールを奪っても前線に走るのは2トップとブルーノ・フェルナンデスのみ。ボールホルダーへのフォローは遅く、両サイドバッグのオーバーラップもほとんどなかった。

 そのため敵陣で数的優位を作れず、相手DFに詰められてパスをミスするか、苦し紛れに裏にボールを蹴ることに終始していた。

 先制時のようなカウンターを狙っていたのなら、引いた守りで相手を釣り、ボール奪取後はラッシュフォードやサンチョのスピードを活かして相手DFの裏を狙うべきだった。しかし、それを行ったのは、41分のサンチョが抜け出した場面と先制時のみ。不用意に自陣でパスを繋ぎ、中途半端な攻撃で相手に奪われる場面が目立っていた。

 これまでも簡単にゴール前までボールを運ぶが、最後の局面で手詰まりになり、引いた相手を崩せずに得点できない場面は多々見られた。であれば、今回のように引いた守りで自陣に相手を引き付け、ボールを奪取してから瞬時にロングカウンターを狙うのが最適解だった。

 サンチョやラッシュフォード、アントニー・マルシャルなどスピードがあり、個の能力で局面を打開できる選手は揃っている。現状であれば得点までの過程にこだわらず、数本のパスと個の能力を活かして得点を奪う方が現実的と言えるだろう。

C・ロナウドの今後の起用は…

 この試合では前述した通り、スールシャール監督が指揮していた時には見られなかった前線からのはプレスを行っている。キャリック暫定監督の意向ということも考えられるが、ここ数日報道されているラルフ・ラングニック監督の招聘が大きく影響しているのではないだろうか。

 戦術家であるラングニック監督は、「ゲーゲンプレスの生みの親」とも言われており、ハイプレスを用いた戦術が有名だ。こじつけかもしれないが、招聘に際してスムーズに戦術を浸透させるため、キャリック監督がハイプレスを採用しているとも考えられる。

 仮にそうだった場合、今回スタメンから外れたC・ロナウドの起用はどうなるのか。

 C・ロナウドは出場すれば得点を大いに期待できる。攻撃面では大きなアドバンテージとなるが、守備面では何も期待できない。それに、36歳を迎えたこのFWに90分通して前線からのハイプレスを要求するのは酷な話だろう。

 であれば、今回のようにラッシュフォードやサンチョを前線に置く方がチームとしては機能する。そうなれば今夏復帰したC・ロナウドは、ラングニック監督の就任とともに出場機会を失っていくだろう。

 チーム全体としての戦術を組むのか、それともC・ロナウドを中心とした戦術を組むのか。招聘が噂されるドイツ人監督の就任が、世界最高のストライカーの今後の命運を左右するだろう。

(文:阿部勝教)