「ヴィエラ2世」と期待された男

サッカー選手は常に怪我と隣り合わせだ。1つの怪我でキャリアを棒に振ってしまう選手もいれば、何度も大怪我を負いながらもその逆境を乗り越えて長く活躍する選手もいる。今回は世界最高級の才能がありながらも、怪我に苦しむキャリアを歩んできた”ガラスの天才”5人を紹介する。

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MF:アブー・ディアビ
生年月日:1986年5月11日
フランス代表:16試合1得点1アシスト

 その負傷離脱の多さからフランスで「l'Homme de Verre(ガラスの男)」とも呼ばれるアブー・ディアビ。当時アーセン・ヴェンゲルが監督を務めていたアーセナルは、オセールでプロデビューを飾った19歳のディアビを06年冬に引き抜いた。

 190cmを超える体格とそのプレースタイルから05年夏までアーセナルに在籍していたパトリック・ヴィエラの後継者として期待されていた。しかし、イングランドで彼を待ち受けていたのは過酷な怪我との戦いだった。太腿の筋肉の負傷や足首の脱臼骨折、膝の前十字靭帯断裂など様々な怪我を負い、アーセナル在籍日数のおよそ半分を怪我人として過ごした。

 15年夏に9年半過ごしたアーセナルを退団し、母国フランスのマルセイユへと移籍した。しかし、母国でもフィットネスや足首の負傷に悩まされ、在籍した2シーズンで公式戦6試合の出場に留まった。17年夏にマルセイユを退団してからはしばらく無所属の状況が続き、19年2月に正式に現役引退を発表している。

全盛期に選手生命を脅かす怪我を負ったのは…

FW:ジブリル・シセ
生年月日:1981年8月12日
フランス代表歴:41試合9得点4アシスト

 プロデビューを飾ったオセールで通算167試合に出場し、87ゴールと得点を量産したシセ。2001/02シーズン、2003/04シーズンはリーグ・アンの得点王に輝き、シーズン終了後にリバプールへと引き抜かれた。しかし、この移籍以降、大怪我に悩まされることになる。

 04年12月、試合中に左足腓骨と脛骨の2箇所を同時に骨折するという選手生命を脅かす負傷を負った。この怪我から2005/06シーズンに復活を遂げるが、シーズン終了後に行われたドイツワールドカップの直前に右足両下腿骨を骨折。本大会のメンバーを大会直前に外れることとなった。

 09年夏に移籍したパナシナイコスで完全復活を遂げ、2009/10シーズンはギリシャリーグで得点王のタイトルを獲得。約2年間離れていたフランス代表にも復帰し、10年夏に行われた南アフリカワールドカップの代表メンバーに選出された。その後はラツィオやバスティアなどでプレーし、15年に一度現役を引退。17年に現在復帰を果たし、40歳となった現在はアメリカ4部にあたるパナシナイコス・シカゴでプレーしている。

バルセロナ移籍後から負傷に苦しむのは…

FW:ウスマン・デンベレ
生年月日:1997年5月15日
フランス代表:27試合4得点2アシスト

 17年夏に大きな期待を背負ってバルセロナに加入したウスマン・デンベレだが、近年は怪我に悩まされ続けている。18歳となった2015/16シーズンにスタッド・レンヌでプロデビューを飾ると、いきなり26試合で12得点5アシストを記録。瞬く間にビッグクラブから関心を集めた。

 プロデビューから1年後の17年夏にドルトムントへ移籍するとドイツでも大活躍。DFBポカールの優勝にも貢献した。18年夏にネイマールがパリ・サンジェルマン(PSG)へと移籍すると、その後釜として1億500万ユーロ(1億2600万円)+ボーナスの移籍金でバルセロナへ完全移籍を果たし、背番号はネイマールが着用していた11を継承した。

 ドルトムント在籍時までは負傷とは無縁のキャリアだったが、バルセロナに加入した2017/18シーズンよりハムストリングの負傷を連発。その他、膝や足首にも怪我を負い、その稼働率はかなり低いものとなっている。2021/22シーズンも開幕から3ヶ月の欠場を余儀なくされたが、11月にシャビが監督に就任し、デンベレも怪我から復帰すると右WGのポジションで多くの試合に起用されている。デンベレとバルセロナの契約は今季終了までとなっており、その去就にも注目が集まる。

直近の6年間で30回以上負傷離脱しているのは…

FW:キングスレイ・コマン
生年月日:1996年6月13日
フランス代表:36試合5得点3アシスト

 2012/13シーズン、2013/14シーズンは下部組織から過ごしたパリ・サンジェルマン(PSG)で合わせて公式戦4試合に出場し、クラブから契約延長オファーを受けていたがこれを拒否。14年夏からユベントスへと活躍の場を移し、背番号は11を着用した。

 しかし、ユベントスでは出場機会を得ることができず、イタリアへの移籍からわずか1年後の15年夏にバイエルンへと移籍。ここから負傷離脱を繰り返すようになり、筋肉系のトラブルや膝の前十字靭帯断裂、関節包損傷などの様々な大怪我を負っている。怪我以外にも病気を患うことも多く、2017/18シーズンは気管支炎、2021/22シーズンには不整脈で手術を行っている。

 『Transfer Markt』によると、バイエルンでのこうした怪我や病気による離脱は既に30回を超えている。2020/21シーズンこそ、キャリア最多となるリーグ戦29試合に出場し、10アシストと自身のキャリアで最高の成績を収めたが、2021/22シーズンは開幕から5つの異なる理由で離脱しており、再び怪我に悩まされるシーズンを送っている。

両膝の前十字靭帯を断裂したのは…

MF:ロベール・ピレス
生年月日:1973年10月29日
フランス代表:79試合14得点18アシスト

 1992/93シーズンにメスでプロデビューを飾ったロベール・ピレスは、1995/96シーズンからリーグ戦3季連続でシーズン二桁ゴールを記録。96年にはフランス代表に招集され、98年のフランスワールドカップ、ユーロ2000(欧州選手権)ではそれぞれ3試合に出場し、優勝メンバーの1人となった

 マルセイユを経て00年夏にアーセナルに加入すると、2年目の2001/02シーズンから絶対的な主力選手に定着し、プレミアリーグとFAカップのニ冠達成に大きく貢献した。しかし、シーズン終了間際に右膝の前十字靭帯断裂の大怪我を負い、2002年の日韓ワールドカップ出場は叶わなかった。

 この頃から徐々に負傷離脱が増え始め、06年夏に移籍したビジャレアルでは加入直後に左膝の前十字靭帯を断裂。アーセナル時代に続き自身2度目の前十字靭帯断裂となったがこの大怪我を克服。しかし、アーセナル時代の輝きを取り戻すことはできず、短期での在籍となったアストン・ヴィラやインドのゴアでのプレーを経て16年2月に正式に現役引退を発表した。