ラングニックの思想を浸透させる過程

巨大エナジードリンクメーカーがなぜサッカー界に照準を合わせたのか、アンチも注目せざるを得ないその巧妙かつ革命的な戦略史を辿る『エクストリームフットボール』(12月20日発売)より、マンチェスター・ユナイテッドの監督に就任し注目を集めるラルフ・ラングニックについて書かれた1章「欧州を制圧するレッドブル帝国の野望」を一部抜粋で公開する。今回は後編。(文:カラン・テージワーニ)
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 RBライプツィヒが駆け上がっていく過程で、重要な主力選手となったのが2013年に獲得したヨシュア・キミッヒとユースフ・ポウルセンだ。ザルツブルクでも若手選手の獲得によって平均年齢が24歳まで引き下げられていく。サディオ・マネ、ケヴィン・カンプル、ヴァロン・ベリシャ、ペーテル・グラーチのようなテクニックのある選手がラングニック就任後から2回の移籍期間でチームに加入。ラングニックは2つの目的で若手獲得を狙っており、一つが短い期間で適度な活躍を期待できる選手、もう一つが長期的には売却で大きな利益を生む潜在能力のある選手だ。

 安定しなかった2つのクラブは一気に正しい方向に加速する。圧倒的な経済力に後押しされ、RBライプツィヒの快進撃は続く。2015/16シーズンは3部リーグを席巻し、2シーズンで2部を突破。アレクサンダー・ツォルニガーがチームを離れると、ブンデスリーガの舞台でラングニックは監督とSDを兼任。ラングニックの手腕に多くのサポーターが期待し、平均観客数が1万6000人から2万9000人に跳ね上がることになる。東ドイツがラングニックの一挙手一投足に注目していたのだ。

 戦術やマネジメントの成功を支えたのが潤沢な資金力だ。RBライプツィヒは2012年から2016年の間に5300万ユーロを移籍市場に投資し、スカウティングの整備とザルツブルクとの連携を使いながら強力なチームを組織していく。ザルツブルクはオーストリア・ブンデスリーガで絶対的な存在だが、レッドブル帝国は単にスタジアムの成功だけに支えられている訳ではない。ラングニックの思想はレッドブルグループが雇用した多くの人々に受け継がれていったのだ。

 2019年、レッドブルにおけるラングニックの役割は変更される。彼はグローバルにレッドブルグループに属するサッカーチームを横断的にマネジメントすることを求められ、ニューヨークやブラジルのクラブも彼の管轄下となる。『ガーディアン』のインタビューでラングニックは次のようにコメントしている。

「今、私は自分に与えられた役割に満足している。もし他のクラブが私を誘おうとした時、質問は次のようなものになるだろう。『私はクラブの発展において総合的に関与することができますか?』。それが難しければ私は自分の力を半分も発揮できないはずだ。もしクラブの上層部と信頼関係を築き、お互いを尊敬しながら仕事ができるのであれば我々は成功する」

 レッドブルは見事にラングニックの力を引き出すことに成功したのだ。

(文:カラン・テージワーニ)

【追記】ラングニックは2021年11月よりマンチェスター・ユナイテッドの暫定監督を務めている