主導権は握っていたが…
プレミアリーグ第23節、アーセナル対バーンリーが現地時間23日に行われ、0-0の引き分けに終わった。この試合では、ふくらはぎの負傷により日本代表DF冨安健洋が欠場。終始主導権を握ったホームチームは得点を奪うことが出来ず、公式戦5試合未勝利となった。(文:阿部勝教)
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年が明けてから公式戦で1度も勝てていないアーセナルは、ホームに最下位のバーンリーを迎えた。新型コロナウイルスの影響により消化試合数に差はあるが、今節の時点で4位のマンチェスター・ユナイテッドとの勝ち点差は「3」。勝利すれば得失点差で上回り、チャンピオンズリーグ(CL)圏内の4位に浮上する重要な試合だった。
筋肉系のトラブルにより戦線離脱していた冨安健洋は、今月20日に行われたカラバオカップ準決勝2ndレグのリバプール戦に強行出場。万全のコンディションでの出場ではなかったため再び負傷離脱となり、この試合は欠場となった。
冨安に加え、セドリック・ソアレス、カラム・チャンバースを怪我で欠くアーセナルは、ベン・ホワイトを右サイドバックで起用。空中戦に強みを持っているバーンリー対策として、センターバックには長身のロブ・ホールディングとガブリエウ・マガリャンイスが並ぶ布陣で挑んだ。
後方からのロングボールを主体に堅守速攻を狙う相手に対し、ホームチームはポゼッションサッカーを展開。ボール保持率は75%と常に主導権を握り、両サイドのブカヨ・サカとガブリエウ・マルティネッリを起点とした崩しから幾度もチャンスを作っていた。
前半だけでシュート本数は12本を記録。しかし、ゴール前に常時5人が並ぶ相手の守備を完全には崩せず、ゴール前で精彩を欠いた。 この一戦に勝利するためには後半に改善する必要があった。
攻撃に改善は見えたが…
前半同様、アーセナルは両サイドを起点に攻撃を展開。逆サイドへのロングボールを織り交ぜてピッチ全体を使い、相手を左右に揺さぶって攻め込んだ。
すると、67分に決定機が訪れる。
自陣でキーラン・ティアニーがボールを持つと、エミール・スミス=ロウが2列目から飛び出す。左サイドでDFを抜き去りペナルティーエリアに侵入すると、後方から上がってきたアレクサンドル・ラカゼットにラストパスを送る。GKがスミス=ロウに釣られ、ゴールはほとんどがら空きだったが、ラカゼットはまさかのシュートミス。この日最大の決定機を逃してしまった。
その後も主導権を握り攻め込んだが、アウェイチームも徐々に対応。ゴール前まではボールを運べるが、思うようにシュートを打つことが出来なかった。
ロングボールを織り交ぜたサイド攻撃、相手の虚を突いた2列目からの飛び出しと攻撃に改善は見せたが、アーセナルの攻撃もここまで。11人全員でゴールを死守するバーンリーからゴールを奪えず、スコアレスドローのまま試合終了。4位浮上のチャンスを逃してしまった。
新エースの獲得は必須
この日のアーセナルは、確かにバーンリーを圧倒していた。
データサイト『WhoScored.com』によると、ボール保持率は76%を記録。シュート本数はバーンリーの10本に対して倍の20本、さらにコーナーキックも3倍の12本と多くのチャンスを作っていた。
しかし、その中で枠に飛んだシュートはわずか5本。8本がゴールの枠を外れ、残り7本はゴール前を固めていた相手DFにブロックされていた。
前述した決定機を逃したようにこの日は運がなかったこともあるが、多くの場面では精彩を欠いていた。
試合後ミケル・アルテタ監督も「我々は最後の20mとボックス内で試合に勝つために十分なクオリティを見せられなかった」と話している。
相手の守備を崩せなかったのはチームとしての問題だが、最後の局面ではやはりFWの力量によるところもあるだろう。
その点で言えば、絶対的エースと呼べる存在がいないアーセナルはFWの補強が急務だ。
この試合に1トップで起用されたラカゼットは今シーズンいっぱいで契約満了。ピエール=エメリク・オーバメヤンも退団が噂されている。プレミアリーグでトップ4に入るには、絶対的エースとなる存在が必要不可欠だ。
その補強についてアルテタ監督は「それは複雑です。我々を助け、次のレベルに引き上げてくれる選手と正しい決定を下す必要がある」と話している。
冬の移籍市場が閉まる1月31日までまだ時間はあるが、復活を目指すイングランドの名門は新たなエースとなる選手を獲得することが出来るだろうか。
(文:阿部勝教)