●緊張感のあるゲームで勝利

 ラ・リーガ第33節、マジョルカ対アラベスが現地時間19日に行われ、2-1でホームチームが勝利した。日本代表MF久保建英は先発出場を飾り、82分までプレーすることになった。しかし、タッチ数わずか30回に終わるなど大苦戦。一体なぜ?(文:小澤祐作)

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 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ロドリゴ・バタグリアはサポーターに向け力強いガッツポーズを披露し、喜びを爆発させていた。それほど重要な、そしてプレッシャーのかかるゲームを、マジョルカは制したのである。

 ホームに最下位アラベスを迎えたマジョルカの立ち上がりは、決して良くなかった。開始5分にはコーナーキックからフロリアン・ルジューヌにゴールネットを揺らさせている。オンフィールドレビュー(OFR)の結果、ゴール直前にルジューヌのハンドがあったとして取り消しにはなったが、ゲーム運びを難しくしかねない、危険なシーンだった。

 しかし、その6分後にマジョルカは先制する。パブロ・マフェオの折り返しをアブドン・プラッツが合わせ、1点リードを奪うことに成功した。

 その後しばらくマジョルカは攻めあぐねていたが、前半アディショナルタイムという最高の時間に追加点を奪う。ヴェダト・ムリキがボックス内で強さを見せ、ラストは左足でファーサイドのゴールネットを揺らした。

 これでだいぶ楽になったと思われたマジョルカだったが、73分にアントニオ・ライージョがまさかのオウンゴール。この1点によりアラベスにエンジンがかかり、終盤のマジョルカは防戦一方に。96分にはあわやPK献上といったシーンもあったなど、ホームサポーターにとって心臓に悪い展開が続いていた。

 それでも、マジョルカは8分もあったATを耐え凌ぎ、貴重な勝ち点3を得ることに成功。暫定ではあるものの、残留圏となる16位に浮上した。

●アギーレ体制初先発の久保建英は…

 そんなアラベス戦で、日本代表MF久保建英はスタメンに名を連ねた。ハビエル・アギーレ体制では、これが初めての先発入りとなっている。

 しかし、久保にとっては実に厳しい結果になったと言わざるを得ない。

 4-4-2の右サイドハーフでプレーした背番号17だが、なかなか良い位置でボールに触れず、相手の意表を突くようなスルーパスやドリブルを出せない。シュートは2本放ったが、いずれも可能性のないものだった。

 守備はおおむね頑張っていたが、ペース配分を考えてか、ところどころ力を抜いてしまう場面もみられたのは事実。46分には上がってくるルーベン・ドゥアルテを追うのを途中でやめてしまい、マフェオに2人を見させるような形を作ってしまった。もちろんマフェオとのコミュニケーションの問題もあるが、いずれにしても久保の強度は十分ではなかった。

 先発で起用されながら攻守で微妙なパフォーマンスに終始した久保は、82分にフェルナンド・ニーニョと交代しベンチへ。データサイト『Who Scored』によると、この日の久保のタッチ数はわずか30回で、チームワースト2位だった模様。ワーストはプラッツの23回だが、彼は久保よりも14分先にベンチへ下がっている。

 では、なぜ久保はここまで輝きを潜めてしまったのだろうか。

●必要がなかった久保建英

 それはチームの戦い方にあるとみていいだろう。

 5バックがメインだったアギーレ監督は、これまでとは違うオーソドックスな4-4-2を採用。相手が最下位アラベスということもあり、多少は攻撃にも変化があるかに思われた。

 しかし、コンセプトは5バック採用時と大差なかった。ボールを持ったらリスクを冒さず前に蹴り込み、長身FWムリキに競らせ、こぼれたところにプラッツやダニ・ロドリゲスが反応し押し込む。この繰り返しであった。

 残留に向け後がないアラベス側もまずは失点を回避するべく、ボールを持つと大きく蹴り出す場面が散見。よって、この試合はボールが地上になく、空中を飛び交うことがほとんどだった。そんな展開の中、当然ながら小柄な久保のタッチ数は限られてしまった。

 久保も工夫はしている。内側にポジショニングしてムリキとの良い距離感を保ち、ボールに関与しようとした。しかし、それにより空いたスペースへマフェオが果敢に飛び出してくることで、右サイドの主役は同選手になっていた。つまり、久保は自然とマフェオが活きるための“おとり的存在”になっていたのである。もともとこの狙いであれば久保は役割を完遂したことになるが、もちろんそれは同選手本来の強みではないので、指揮官が用意したものとは考えにくい。

 いずれにしても、この試合に関しては久保の必要性を全く感じなかった。上記した通りロングボール主体の中、ほとんどタッチできず、守備に奔走するだけ。他の選手でも十分できる内容だったと言わざるを得ない。

 ルイス・ガルシア・プラサ前監督と比較しても、アギーレ監督はかなり現実的なサッカーを展開している。残留に向けて勝ち点を得るために、まずは失点をしないことが何よりも優先。それはここ数試合の内容をみても明らかで、今後も変わることはないだろう。

 その中で、ここまで1得点1アシストと攻撃のスペシャリティーを発揮できていない久保の立場は、決して確固たるものではないと言える。守備の貢献度やカウンター時のことを考えれば、アマト・エンディアイエの方がサイドにはハマる。いまのところ、アトレティコ・マドリード戦やエルチェ戦のように、ジョーカーとして起用されるのが、久保にとってはベストになりつつある。

 もちろん今後のパフォーマンス次第で状況はいくらでも変わるだろう。ただ一つ言えることは、アラベス戦における久保の説得力は皆無だったことだ。

(文:小澤祐作)