●古橋亨梧が4ヶ月ぶりの先発復帰

 スコティッシュ・プレミアシップのポストスプリット第34節が現地24日に行われ、セルティックはロス・カウンティに2-0で勝利を収めた。2シーズンぶりのリーグ優勝に向けて前進する中、FW古橋亨梧は4ヶ月ぶりの先発復帰。傑出したパフォーマンスで改めて存在価値の大きさを証明した。(文:舩木渉)

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 ピッチに立って、たった12分間で格の違いを見せつけた。

 右ハムストリングの怪我から復帰後初先発を飾ったFW古橋亨梧は現地24日、ロス・カウンティ戦の12分に見事なヘディングシュートでセルティックに先制点をもたらした。

 MFカラム・マクレガーが右サイドへ大きく展開すると、パスを受けたFWジョタがドリブルで持ち上がる。そして、ポルトガル出身のウィンガーが上げたピンポイントクロスに古橋が頭で合わせた。

 その後、セルティックは終盤にジョタが加点してロス・カウンティに2-0で勝利。33節までの上位6クラブによって優勝や欧州カップ戦出場権が争われるポストスプリットの最初の試合を制し、また一歩リーグ優勝に近づいた。

 4月9日のセント・ジョンストン戦で戦列復帰を果たしていた古橋は、同17日に行われたスコティッシュ・カップ準決勝のレンジャーズ戦まで2試合続けて途中出場していた。徐々に体を慣らしていきながら準備を進め、今回のロス・カウンティ戦で満を持しての先発出場を飾る。

 そして、すぐさま結果を残して見せた。古橋がセルティックの公式戦でゴールを決めるのは、昨年12月19日のスコティッシュ・リーグカップ決勝以来、約4ヶ月ぶりのこと。リーグ戦に限れば昨年12月2日に行われた第16節のハーツ戦以来で、18試合ぶりに訪れた歓喜の瞬間だった。

 今回のヘディング弾は、ただの1点ではない。離脱前の古橋は、絶妙なクロスでアシストを記録したジョタとの間に特別な関係を築いていた。2人のコンビネーションで数多くのゴールを演出してきた。その名コンビが4ヶ月経っても健在であることを、チーム内外に強く印象づける1点となった。

 センターバックの背後に回り、体を当てられないよう距離を取って、助走をつけて跳ぶ。マークを見失った相手DFにジャンプするタイミングを与えず、古橋は15cm近い身長差のあるDFキース・ワトソンの上からクロスボールを正確に叩いた。

 ポジショニングと駆け引きの巧みさが健在であることも、この先制点によって示された。ドリブルしながら顔を上げたジョタも、確信を持ってクロスを選択したことだろう。

●ポステコグルー監督も絶賛

 試合後にはセルティックを率いるアンジェ・ポステコグルー監督が古橋のパフォーマンスを称賛した。英『スカイ・スポーツ』のフラッシュインタビューに応じた指揮官は「キョウゴはシーズンの大部分を欠場することになったが、並外れた選手であることに変わりはない。彼なしでもうまくやってきたが、彼が復帰してきたのは素晴らしいことだ」と語る。

 そのうえで「彼はまだ100%シャープな状態ではない。最高の状態なら今日はおそらく2つか3つのゴールを決められただろうが、ゴールによって彼の努力が報われたのはよかった」と続けた。

 実際、古橋には12分の先制点の場面以外にもビッグチャンスがいくつかあった。

 例えば29分の場面では、左サイドに回ったジョタのクロスにファーサイドで古橋が左足ボレーシュートを放った。うまくミートできなかったため、ふんわりとした軌道でボールはクロスバーに当たってしまったが、クロスを呼び込むまでの動き出しのキレとマークを外すためのターンやステップなどシュートに至るまでのプレーは完璧だった。

 惜しくもオフサイドと判定されてしまったものの、その前の23分にも古橋はMFマット・オライリーのスルーパスに抜け出してゴールネットを揺らしている。ディフェンスラインの動きと1歩分ズレてしまっただけで、この場面の動き出しの鋭さも、4ヶ月前と何ら変わらない。ロス・カウンティのDFアレックス・ヤコヴィッティは背後を取られて完全に虚を突かれ、置き去りだった。

 39分にはオライリーのミドルシュートに反応し、相手GKがこぼしたボールに詰めた。古橋が至近距離から放ったシュートは身長2m超えのGKロス・レイドローが伸ばした左足に阻まれてしまったが、もし「100%シャープな状態」であれば確実に決めていただろう。

 直後の40分には積極的なプレッシングで相手のバックパスをカットした古橋が、FW前田大然とのコンビネーションでペナルティエリア内まで侵入してシュートを放つ。これはゴールの枠を大きく外れてしまったが、2人の“らしさ”が存分に表れたシーンだった。

●次節優勝をかけたレンジャーズ戦へ

 確かにポステコグルー監督が「今日はおそらく2つか3つのゴールを決められただろう」と語った通り、古橋は前半だけでも数多くのチャンスを演出していた。彼1人が入るだけでこれだけ変わるのかと感じるほど、セルティックの攻撃が活性化したのである。

 その後、古橋は64分にFWリエル・アバダとの交代でベンチに下がった。まだ「最高の状態」ではないため、大事をとっての交代だろう。指揮官も事前に60分前後までと決めていたに違いない。

 先発に復帰したロス・カウンティ戦の64分間でセルティックの背番号8が放ったシュートは5本、内訳は枠内シュートが2本、クロスバー直撃が1本、枠外シュートが1本だった。先制点のみならず、限られた時間の中でこのパフォーマンスであれば上出来だ。

 なにしろ次節には事実上の優勝決定戦と言っていいレンジャーズ戦が控えている。リーグ戦は残り4試合で、首位セルティックと2位レンジャーズの勝ち点差は6ポイント。もし次節のダービーマッチで勝利すれば、その差は9ポイントまで広がるため、残り3試合でレンジャーズが追いつくのは極めて困難になる。

 ポステコグルー監督としても、今季二冠を達成するために鍵となる一戦で「100%シャープな状態」の古橋を起用したいはず。そのために慎重にコンディションを調整してきたと言っても過言ではない。

 試合後のクラブ公式インタビューの中でも「みんながキョウゴのことを恋しがっていた」と語っていたポステコグルー監督は、「彼はちょっとした魔法みたいなものを持っている。ゴールは彼が復帰するためにハードワークしてきたことへの報いだ」と古橋を称えた。

 その「魔法」をより強力にしてレンジャーズ戦に挑んでもらいたい。ロス・カウンティ戦での起用法には指揮官からの信頼や願いがこもっていたのだろう。

 古橋は自らのゴールで完全復活を印象づけた。やはり彼は別格なのだと、誰もが感じたことだろう。ピッチに立つだけで攻守両面が活性化し、ゴール前の背番号8に自然とボールが集まってくる。

 悲願のリーグタイトル奪還を目指すセルティックに、頼もしすぎるエースストライカーが帰ってきた。

(文:舩木渉)