●60試合を戦ったセルティック、大勝でシーズン終了

 スコティッシュ・プレミアシップの2021/22シーズン最終節が現地14日に行われ、セルティックはマザーウェルに6-0で完勝した。長かった1年がこの試合で終了。FW古橋亨梧は圧巻のパフォーマンスで改めて価値を証明し、他にも多くの選手がゴールネットを揺らした。まさに今季のセルティックの強さが詰まった一戦だった。(文:舩木渉)

 長く過酷なシーズンの締めくくりにふさわしい大勝だった。だが、頂点に立ったことへの祝福と別れの寂しさが複雑に絡み合う空間でもあった。

 スコティッシュ・プレミアシップの2021/22シーズン最終節が現地14日に行われ、セルティックはマザーウェルに6-0で完勝した。この一戦がセルティックにとっては今季60試合目の公式戦だった。

 試合前には本拠地セルティック・パークに集まったファン・サポーターが2年ぶりのリーグ優勝を果たしたチームを盛大に迎え、マザーウェルの選手たちも入場時に花道を作って王者を称えた。

 キックオフのホイッスルが鳴ると、セルティックはハイテンポなパスワークで相手を圧倒。ボール支配率は常時80%前後という一方的な展開でゲームが進んでいく。そして、前日に今季限りでのセルティック退団が発表されたオーストラリア代表MFトム・ロギッチに対し、背番号と同じ「18」分に観客から万雷の拍手が巻き起こった。

 8年半にわたってクラブに在籍したレジェンドとの別れを惜しんだ直後から、セルティックのゴールラッシュがスタートする。まずは21分、コーナーキックの流れでこぼれ球を拾ったFW古橋亨梧が振り向きざまの鋭い一撃で先制ゴールを奪って口火を切る。

 40分にはFW前田大然のお膳立てから、MFデイヴィッド・ターンブルが巧みなドリブルシュートで追加点。43分にもセルティックが3点目を挙げ、一気に点差を広げた。

 このゴールは圧巻だった。DFアンソニー・ラルストンの浮き球パスに反応した古橋が2列目から飛び出すと、後ろから来るボールを正確なボレーシュートでゴールに流し込む。1年でセルティックの絶対的エースに成長した日本代表FWの真髄が詰まった、繊細なテクニックと駆け引きの妙を堪能できる1点だった。

●得点王争いに変動が…

 セルティックもマザーウェルも順位や来季の戦いの場所がほぼ決まり切った状況で迎えた試合ということで、残る焦点は個人タイトル争いくらい。勝った負けた以上に、個人としてどれだけの結果を残すかを競うようにセルティックの選手たちが躍動した。

 古橋は前半の2得点によって今季リーグ戦のゴール数を「12」に伸ばし、あと1点で得点ランキング首位に並ぶところまでたどり着く。

 しかし、さらに1点を追加して迎えた後半の62分で交代に。すると代わって入ったFWギオルゴス・ジャコマキスもチームメイトの活躍に触発されたか、大ハッスルで快勝に華を添えた。

 まずは68分、FWジョタのクロスはゴール前で相手DFにクリアされてしまうが、宙に浮いたボールをジャコマキスがバイシクルシュートで押し込みセルティックに5点目をもたらす。そして、このギリシャ代表FWは後半アディショナルタイムにも前田からのヘディングパスに詰めてゴールネットを揺らした。

 ジャコマキスはマザーウェル戦の2得点でリーグ戦でのゴール数を「13」に更新。途中出場ながら古橋を追い抜いて、得点ランキング首位だったロス・カウンティのFWレーガン・チャールズ=クックに並んだ。

 15日にも3試合が組まれており、まだ得点王争いを誰が制するかはわからない。ジャコマキスがポールポジションに躍り出たものの、リヴィングストンのFWブルース・アンダーソンとアバディーンのMFルイス・ファーガソンが11得点で追いかけている。

●セルティックには二桁得点者が4人!

 そんなこんなで圧巻のパフォーマンスを披露した王者セルティックはマザーウェルから6ゴールを奪って大勝を収める。古橋とジャコマキスが2得点ずつ挙げた中、前田も実は3アシストを記録。チームの4点目を決めたジョタは、リーグ戦だけで二桁得点二桁アシストを達成した。

 アンジェ・ポステコグルー監督が作るチームは、どこからでもゴールを奪えるのが特徴の1つでもある。例えばJリーグを制した2019年の横浜F・マリノスにはリーグ戦で二桁得点を達成した選手が3人もいた。2020年も2021年も同様だ。

 今季のセルティックでは、リーグ戦二桁得点の選手が4人いる。彼らの成績を並べてみると以下の通りだ。

ギオルゴス・ジャコマキス:21試合出場/13得点1アシスト
古橋亨梧:20試合出場/12得点2アシスト
ジョタ:29試合出場/10得点11アシスト
リエル・アバダ:36試合出場/10得点7アシスト

 さらにゴールとアシストの合計で二桁以上のゴールに関与している選手を列挙してみる。

デイヴィッド・ターンブル:25試合出場/6得点5アシスト
トム・ロギッチ:32試合出場/6得点6アシスト
前田大然:16試合出場/6得点5アシスト
アンソニー・ラルストン:25試合出場/6得点5アシスト

 これだけ多くの選手が個々で10以上のゴールに絡み、最後まで個人タイトルを争えるようなチームだからこそ、リーグ優勝を果たすことができたと言えるのではないだろうか。

 もちろんジョタやアバダのように年間を通して試合に出続けた選手がいれば、古橋が負傷離脱していた期間にその穴を十二分に埋めて得点ランキング首位タイに立ったジャコマキスのような選手もいる。

 ターンブルの離脱中には冬の新加入選手だったMF旗手怜央やMFマット・オライリーが台頭。ラルストンは後半戦になってDFヨシプ・ユラノヴィッチに右サイドバックの定位置を奪われたが、それでもプレーした試合ではコンスタントに結果を残した。

 ずっと同じメンバーで固定して戦っていたのではなく、常に競争や入れ替わりがありながら、ピッチに立った選手たちがその時のベストなパフォーマンスを発揮して、チームとしても勝利を積み重ね続けることができた。

 リーグ戦の最終成績は38試合で29勝6分3敗の勝ち点93。最終節に6点を加えて92得点22失点、得失点差は+70という異次元の数字になった。

●「我々は決して立ち止まらない」

 ポステコグルー監督はシーズン最終戦を終えて「信じられないほど素晴らしいグループだった。まさしくスコットランドのチャンピオンにふさわしい」とチームのこれまでの歩みを誇った。

 マリノス時代も「どんな時も自分たちのサッカーは変わらない」「誰が出ても同じサッカーができるように」と言い続けていた“ボス”は、スコットランドでも自らの信念を貫き通して理想的なチームを作り上げた。

 そして、ポステコグルー監督が連れてきた日本人選手たちの貢献も見逃せない。特に古橋は特別な存在だった。非常に高い水準が求められる環境で、誰からも認められるエースストライカーとなったのである。

 Jリーグ時代も猛威を振るっていたディフェンスラインの背後への飛び出しに磨きをかけ、欧州の屈強なDFたちに揉まれながら駆け引きやフィニッシュの精度を急速に伸ばしていった。もし約4ヶ月にわたる負傷離脱期間がなければ、リーグ得点王は間違いなく古橋だったはずだ。

 欧州挑戦1年目で、シーズンの約半分を棒に振る長期離脱もありながら公式戦33試合出場20得点5アシスト。欧州5大リーグに比べればリーグ戦の競争レベルはやや落ちるかもしれないが、それでも驚異的な成績と言えよう。

 もし一度も離脱することなく公式戦60試合全てでピッチに立てていたら、年間40得点も夢ではなかった計算になる。

 新監督によるチーム作りの方向性と、集まった選手の能力やキャラクターがうまく噛み合って60試合と過酷なシーズンを乗り切って2つのタイトルを獲得できた。セルティックのポステコグルー体制1年目は、ポジティブな雰囲気とともに幕を閉じた。

「今日はみんなに楽しんでもらい、それから夏を楽しんできてほしい。我々はさらに大きく、強くなって戻ってくる。我々は決して立ち止まらないのだから」

 指揮官はそう力強く語ってシーズンを締めた。リーグ優勝とリーグカップ制覇だけでは満足していない。2年目になる来季は、もっと大きなものを狙っているのだろう。UEFAチャンピオンズリーグの舞台にも挑むシーズン、日本人選手たちとともにどんな戦いを見せてくれるか楽しみだ。

(文:舩木渉)