●アーセナルはやれることはやったが…

 プレミアリーグ第38節、アーセナル対エバートンが現地時間22日に行われた。5-1でホームチームが勝利したものの、4位トッテナムがノリッジに勝利したことでCL出場権を逃す形となってしまった。また、この試合では快勝を収めたが、アーセナルが抱える問題点が露呈した場面もあった。なお、冨安健洋はハムストリングの負傷でメンバー外となっている。(文:安洋一郎)

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 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場圏内の4位につけるトッテナムと勝ち点2差という状況で最終節を迎えたアーセナル。アーセナルが最終節で勝利をしたとしてもトッテナムが最下位のノリッジに敗れなければCL出場権は獲得できないという難しい状況に陥っていた。

 奇跡の逆転での4位フィニッシュをするためには、当然ながらアーセナルが今節勝利をしなければいけない。そう言った面でもアーセナルの選手たちはモチベーションが高かった。

 一方で最終節の対戦相手となったエバートンは前節クリスタル・パレス戦で劇的な逆転勝利を挙げ、プレミアリーグ残留が確定。一時は降格圏に沈むなど苦しいシーズンを送っていたが、何とか最終節を前に来季もプレミアリーグでプレーすることが決定した。こうした背景もあり、エバートンには前節まであった鬼気迫る“覇気”はなく、モチベーションはアーセナルと比較するとかなり低いことが試合前から予想できていた。

 試合は前半から大方の予想通りアーセナルが主導権を握り、試合を通じて74%もボールを保持。6本のシュートと2本の枠内シュートに終わったエバートンの4倍以上となる26本のシュートと9本の枠内シュートを放ち、5-1の快勝を収めた。

 しかし、トッテナムがノリッジを5-0で下したためアーセナルは逆転での4位フィニッシュは叶わなかった。5位で2021/22シーズンを終え、来季はUEFAヨーロッパリーグ(EL)を戦うことが決定した。

 残されたわずかの可能性に賭けて、今節に向けては自分たちがやれることは全てやったアーセナル。だが、そうした中でも来季以降の戦いに向けて不安に感じてしまう要素があった。

●失点場面でみえた不安要素

 来季ELを戦うことが確定したアーセナル。今季のウェストハムのように少数精鋭でプレミアリーグとELの両方を戦うことも可能だが、シーズン終盤の過密日程を考えると所々でターンオーバーを講じる必要が出てくるだろう。

 となると21名となっている現在のトップチームのスカッドではあまりにも選手層が薄い。現在ローン移籍している選手の中から即戦力として期待できる選手はウィリアム・サリバとエインズリー・メイトランド=ナイルズの2選手ぐらいだろうか。しかもサリバに関しては、来季のCL出場やカタールワールドカップに向けて出場時間を確保したいということもあり、現在のローン先であるマルセイユ残留を強く希望している。

 こうした背景を考えると既存のメンバーは契約満了の可能性がある一部の選手を除けば残留が既定路線となるだろう。そこで今節を踏まえ、来季以降の戦いに不安に感じたのが、普段はあまり出場機会を得ることができていない控えメンバーたちのプレーの“質“だ。

 特に今節気になったのは失点した場面でのロブ・ホールディングの守備である。ホールディングは試合終盤のリードしている場面などで投入すると、相手のクロス攻撃を得意の空中戦で跳ね返すことができるのだが、スタメンでの起用は不安と言わざるを得ない。

 失点をした場面にフォーカスを当てる。ペナルティエリア内の右のハーフスペースでボールを受けたドミニク・カルバート=ルーウィンが、遅れて対応したガブリエウ・マガリャンイスの股を抜いて、中央へ折り返したという場面で、ホールディングはニアに走りこんできたデマライ・グレイのマークについていた。カルバート=ルーウィンが折り返したボールはピンポイントで合わせるようなスピードではなく、この時のホールディングとボールの距離感的にも予測ができていれば十分にクリア可能かと思われた。

 しかし、結果はクリアできずに失点。右CBがニアに走りこんだ選手の対応をしなければいけないという選手配置の時点で、ニアとファーのどちらにクロスを送られても対応するための準備が必要だろう。だが、この時のホールディングの守備対応はニア一択だった。最悪、触れられなくても折り返しのボールに対して足を出すなどファーのケアもしていたという“事実“が見られればまだ擁護できるのだが、自身の目の前を通過したボールに反応することができておらず、明らかに準備不足だった。

●ホールディングの守備対応で露呈したアーセナルが抱える問題点

 今季のアーセナルは怪我人がおらず、ベストメンバーで戦うことができていればどこのチーム相手でも十分に戦うことができていた。しかし、4月にトーマス・パーティとキーラン・ティアニーが怪我によって離脱すると一気に苦しくなってしまった。

 こうした結果になってしまったのは、今節のホールディングの守備対応でも露呈したように「スタメンと控え選手の差があまりにも激しい」ということにあるだろう。今季のアーセナルはヨーロッパのコンペティションを戦っていないため、怪我人が出ない限りはとんどの試合をベストメンバーで戦うことができるスケジュールとなっていた。これがELに出場する来季になるとミッドウィークに多くの試合が組み込まれるため、今季同様に全ての試合をベストメンバーで戦うことは難しくなってしまう。

 となると、今季の怪我人が発生してしまった場合のように、ベストメンバーで試合に臨めないとなると、怪我人の有無関係なしに苦戦を強いられる試合が出てくるだろう。それを避けるためには今夏の補強が重要となる。最低でもLSB、DMF、CFの3つのポジションは、スタメンクラスの選手の補強をしなければいけないだろう。仮にサリバが復帰をしないとなるとCBの補強も必須となってくる。

 当然ながら補強をするには資金が必要だ。既に退団が決定しているマテオ・ゲンドゥージやコンスタンティノス・マヴロパノスといった選手の移籍金は、市場価格よりはかなり安価の金額となっており、残りの余剰戦力を見ても彼らで多額の利益を生むことはかなり困難だろう。本来であれば結果を残せていないニコラ・ペペといった選手も売りたいところだが、選手層があまりにも薄いため、控え選手の代役を確保できない限り、放出はかなりギャンブルとなる。

 多額の放映権による収入が期待できるCLの出場権も逃したため、オーナーのスタン・クロンケ氏がどれだけ補強費をクラブに投資してくれるかが今夏の補強のカギを握ると予想される。昨夏は多額の投資をしてくれたが、今夏の状況は現時点では未知数だ。補強ポイントが多いだけにオーナーからの多額の投資がなければ、スタメンと控え選手の差を埋めることはかなり難しくなってしまい、CL復帰は遠のく一方だろう。
(文:安洋一郎)