●期待を裏切らなかったダービーマッチ

明治安田生命J1リーグ第14節、浦和レッズ対鹿島アントラーズが21日に行われ、1-1の引き分けに終わった。30年の歴史あるJリーグで“強豪”としてしのぎを削ってきた両チームの対戦は白熱したものとなった。(取材・文:ショーン・キャロル)
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 Jリーグと各クラブのマーケティング部門は、J1からJ3まで各カテゴリーで開催される様々な“ダービーマッチ”を宣伝することにいつも力を入れている。だが実情としては、そういった試合の大部分はたまたま近隣地域に拠点を置いているチーム同士の対戦でしかなく、正真正銘のダービーと位置づけることはできない。

 ある2クラブの激突をダービーと呼ぶためには、そこに本当の意味でのライバル意識が存在し、何年もかけて熟成されてきたような対立感情がなければならない。単に会議室で作り出され、何らかのポスターやハッシュタグで盛り上げられるようなものではない。

 だが浦和レッズ対鹿島アントラーズ戦は、ダービーマッチだ。

 両チームは近隣に位置しているわけでもなければ、互いに憎み合うような理由が元々存在していたわけでもない。だが過去30年間を通して彼らはお互いを何度も何度も刺激し合い、試合のたびに自然と険悪なムードが感じられるようになっていった。

 先週土曜日に埼玉スタジアムで開催された試合も例外ではなかったし、間違いなく期待を裏切らない戦いでもあった。

 僅差で首位に立つ川崎フロンターレに重圧をかけ続けたい鹿島としては、この試合でも勝ち点3を積み上げることを目標としていた。一方の浦和としては、リーグ戦6試合連続のドローに終止符を打って下位グループを抜け出したい。そのためには、3日前に同じピッチで行われた横浜F・マリノス戦で3点ビハインドから衝撃的な追い上げを見せた戦いを勢いに繋げたいところだった。

●優位に立った鹿島アントラーズ

 だが、ひとたびキックオフの笛が吹かれればそんな背景事情も全て二の次となり、両チームとも猛烈な勢いでぶつかり合う。受け身なポゼッションやチェスのような戦術の駆け引きが大半の時間を占める試合が一般的なこのリーグではなかなか見られない気迫だ。

 荒々しい戦いを繰り広げながらも鹿島は前半から非常に動きが良く、アルトゥール・カイキのゴールで早い時間に先制してからは終始試合を支配しているように感じられた。スタジアム南東の一角からファンが打ち鳴らしていた迫力ある太鼓のリズムに後押しされるかのように、攻守両面において優位性を示していた。

 レッズはボールを落ち着かせる時間を与えてはもらえなかった。鹿島は執拗にプレスをかけ、タックルを繰り出し、ホームチームはボールを持ったかと思えばすぐに手放すことを強いられる。西川周作のゴールキックに対してまでも、鈴木優磨がペナルティーエリア手前から睨みをきかせる。アントラーズが攻撃に転じれば、毎回のように冷静かつ危険に感じられた。

 それを可能としていたのは、強固な背骨の存在による部分が大きかった。三竿健斗はCBでのプレーにますます慣れてきており、相手FW陣との荒っぽい立ち回りを非常に楽しんでいるかのようだ。ディエゴ・ピトゥカも同じく接触プレーを厭わず、デュエルを重ねるごとに強さを増していく。そして前述の鈴木もエネルギーに溢れ、どんなチームであってもぜひ前線に欲しがるような存在となっている。

●対照的だった両指揮官

 全てがアントラーズにとって順調に感じられるまま、ハーフタイムが近づいてくる。だが中断1分前となったところで、関川郁万の曲げようとした腕に明本考浩のクロスが当たったとして浦和にPKが与えられる。やや厳しい判定であり、VARレビューも必要とされたが、西村雄一主審はプレーを戻してスポットを指差すことになった。

 鈴木とアルトゥール・カイキは、なんとかアレクサンダー・ショルツの注意力を逸らそうと試みていた。だが、6年前の対戦で槙野智章が仕掛けた同様の作戦を意に介さず鈴木がPKを決めたのと同じゴールに、今回のショルツも動じることなく冷静にシュートを突き刺してみせた。

 リカルド・ロドリゲスのチームはこれで一命をとりとめ、ゴールを決めたことで勢いも増していく。レッズははるかに積極性を高め、後半は非常に見応えのある拮抗した勝負となった。

 両監督はどちらも試合中のほとんどの時間、テクニカルエリアぎりぎりからプレーを見守り指示を送っていた。ロドリゲスは盛んに飛び跳ね、あちらこちらへ動き回りながら、選手への指示やジェスチャーや激励を止めようとはしない。

 一方のレネ・ヴァイラーは学者然とした佇まいで腕を組んで立っており、指定された長方形エリアの左隅から2、3歩以上移動することは滅多になく、目の前の試合展開を精査し続けていた。

●ダービーマッチの真髄

 61分には左SBに位置した明本から鈴木がボールを奪ってエリアへ突進し、アントラーズがリードを奪い返してもおかしくはなかった。だが鈴木はボールを上田綺世へ届けることはできず、突然訪れたチャンスは突然失われた。

 その後はレッズも徐々に勢いを強め、かなり良い形でボールを持ちボールを動かすことができるようになっていく。相手の陣形を広げ、疲れ始めてきたアントラーズの選手たちが人数をかけてプレスを仕掛けるのを難しくしていた。

 82分に松尾佑介が投入されると、不規則な動きや果敢なドリブルですぐに鹿島を悩ませ始める。だが出場10分後にはキャスパー・ユンカーへの折り返しではなくシュートを選択してクォン・スンテに阻まれ、勝ち点3獲得の絶好機を逃してしまった。

 ユンカーはチャンスが消え去ったことに信じられない様子であり、また松尾の見せたリアクションも、自分が何をすべきだったのか十分に痛感しているかのようだった。その3分後には岩尾憲が味方のミスを帳消しにするかと思われたが、エリア手前から放った豪快な一撃はクロスバーを直撃。さらにユンカーもゴールを捉えかけたシュートを安西幸輝にブロックされてしまった。

 2つのチームはどちらも決勝点を求めて奮闘し続けており、終了のホイッスルを聴きたがってはいなかった。それでも数秒後には西村主審が戦いの終わりを告げる。なるべくしてなった結末だった。

 これこそがダービーマッチというものだ。

(取材・文:ショーン・キャロル)