●スペイン代表が今大会初勝利

 UEFAネーションズリーグ(UNL)のリーグAグループ2第3節、スイス代表対スペイン代表が現地時間9日に行われ、0-1でスペイン代表が勝利。今大会初勝利を挙げたが、ルイス・エンリケ監督がやろうとしている新スタイルは、まだ浸透しきっていないようだ。(文:阿部勝教)

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「ファイナル4に進出するためには試合に勝つ必要がある」

 スイス代表戦の前日会見でそう語ったルイス・エンリケ監督は、チェコ代表戦からスタメン9人を変更。3日に行われたポルトガル代表戦に先発したメンバーから、カルロス・ソレールをマルコス・ジョレンテに入れ替えた11人をピッチに送り込んだ。

 対するスイス代表は、前節からスタメン8人を変更。フォーメーションを4-2-3-1から4-3-3に変えてスペイン代表戦に臨んだ。

 ここまでスペイン代表とスイス代表はともに2戦2敗で、今大会初勝利が欲しい両者の一戦は、試合序盤にスコアが動いた。

 13分、敵陣ペナルティエリア手前でフェラン・トーレスが相手CBのパスをカットすると、こぼれ球をマルコス・ジョレンテが拾ってグラウンダーのクロスを入れる。これをパブロ・サラビアがゴール左に流し込み、スペイン代表が先手を取った。
 
 勝利が欲しい両者の試合はここから激しい展開になるかと思われたが、試合は膠着状態に。スペイン代表がボールを保持するも、スイス代表の守備を崩すことが出来ない。一方のスイス代表は、自陣でボールを奪取してカウンターを狙ったが、スペイン代表のハイプレスに耐えられずにすぐにボールをロスト。再びスペイン代表が敵陣でパスを回すといった展開が続いた。

 後半は1点を追いかけるスイス代表が攻勢に出たため、オープンな展開となったが、両者ともに決定的な場面を作ることができずに試合終了。試合序盤に先制したスペイン代表が逃げ切った。

 スペイン代表は今大会初勝利を挙げたが、ルイス・エンリケ監督が提唱する新スタイルはまだまだ浸透しきっていないようだ。

●未完成の新スタイル

 スペイン代表は、ポルトガル代表戦で新スタイルとも言える「即時奪還からの速攻」をみせ、新たな時代の到来を予感させていた。しかし、チームが完成するにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 先制点の場面では、敵陣でボールロスト後にフェラン・トーレスが瞬時にプレス。ペナルティーエリア手前でのパスカットからの速攻でゴールネットを揺らした。この攻撃は新スタイルがうまく機能した得点と言えるだろう。だが、この試合で新スタイルがハマったのはこの場面のみ。前線の選手はハイプレスを仕掛けてボール奪取後に速攻を狙っていたが、後続の選手が付いてこず、2枚目3枚目といった飛び出しがないため、シュートまで持ち込むことが出来ていなかった。

 ボールロスト後のハイプレスは徹底されていた。ボールに近い選手が瞬時にプレスをかけ、敵陣で奪い返す場面は何度も見られた。問題は”速攻”だろう。カウンターを仕掛けるのであれば、アタッキングサードで強引にでも前線の選手が相手DFの裏に抜ける必要がある。しかし、これがまだ出来ていない。

 21分の場面を見ればわかるだろう。スペイン代表は自陣でボールを奪うと、マルコス・ジョレンテが一気に駆け上がる。速攻を仕掛けるのであればここでフェラン・トーレスやアルバロ・モラタがダイアゴナルランで相手DFの背後を狙わなければいけないが、ただ並走するだけ。攻撃は止まってしまい、シュートまで持ち込めず、一度GKに戻してやり直すことになってしまっていた。

 数的不利だったという点はあるが、速攻を仕掛けるのであれば、裏へ抜ける選手がいなければ相手の脅威とはならない。先制点の場面のようにゴール前でしか「即時奪還からの速攻」が行えないのであれば、引いた相手を崩す他の攻撃オプションが必要になってくるだろう。

●新スタイルの鍵を握るのは…

 先述したように、ルイス・エンリケ監督がやろうとしている新スタイルは浸透しきっていない。そのため、攻撃はゴール前まで迫っても全く迫力がなかった。

 何とか1点を奪って勝利はしたものの、このままでは間違いなくW杯で苦戦を強いられることになる。攻撃面の改善は必須だが、新スタイルを貫くのであれば、完成の鍵を握るのは3トップの3人だろう。カウンター時、この3人の連携はほとんど見られなかった。

 両ウイングのフェラン・トーレスとパブロ・サラビアは、サイドライン際に張ったまま。中央に入ったり、下がってボールを受けたアルバロ・モラタの背後にダイアゴナルランするなど、柔軟な動き出しがほとんどなかった。

 モラタは最前線でボールを収めていたが、パスを出した後の動き出しはほとんど無し。ワンツーで裏へ抜けるといったプレーもなく、シュートはわずか1本に終わっている。

 インサイドハーフのガビやマルコス・ジョレンテがハーフスペースを上がる場面などもあったが、前線3人はただ後ろから付いていってクロスを待つだけ。サポートにもいかず、裏へ抜け出すこともなかった。

 これではただ個人技での単調な攻撃を続けるだけで、攻撃が機能しているとは言えない。新スタイルの速攻を遂行するのであれば、モラタが相手DFを釣り、空いたスペースにサイドの選手が飛び出すなどの連携がなければ、21分の場面のように攻め上がってもペナルティーエリア前で止まってしまう。

 W杯まで残り約5ヵ月。 スペイン代表はUEFAネーションズリーグ(UNL)中にこれらの問題を解決し、新スタイルを確立することが出来るだろうか。

(文:阿部勝教)