●「今季最大のがっかり選手」候補に

 数多くの激闘が繰り広げられた2021/22シーズンが幕を閉じた。欧州各国でプレーする日本人選手たちは、果たしてどのような活躍を見せたのだろうか。今回は、ポルトガルのポルティモネンセに所属する中島翔哉のシーズンを振り返る。(文:舩木渉)

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 ポルトガルの大手スポーツ紙『ア・ボラ』は2021/22シーズン終盤、ウェブ上で「今季最大のがっかり選手は誰?」というタイトルのアンケート調査を実施した。

 同国1部リーグの各クラブが迎えた主だった新戦力の中から特に期待を裏切った18人が候補としてピックアップされ、そのリストの中にポルティモネンセに所属するMF中島翔哉の名前もあった。

 結果は22.2%の票を獲得したベンフィカのMFジョアン・マリオが1位に。そして、ポルトのDFルベン・セメドが得票率19.9%で2位、ベンフィカのFWロマン・ヤレムチュクが得票率15.2%で3位と続いた。

 中島は得票率0.7%で10位タイ。ただ、9位までにベンフィカやポルト、スポルティングCP、ブラガといった人気クラブの選手が並んでいての10位と考えると、決して「よかった」と安心はできないだろう。

 寸評で中島はブラガのFWマリオ・ゴンザレスと「同様に成功できなかった」とバッサリ。2020/21シーズンにトンデラで14得点を挙げてブラガに引き抜かれたスペイン人ストライカーは、新天地で14試合出場2得点と結果を残せず、半年でスペイン2部のテネリフェへ放出されていた。

 ポルトから古巣ポルティモネンセへ期限付き移籍した中島は、リーグ戦で22試合出場1得点2アシストという成績だった。UAEのアル・アインに在籍していた昨年2月に腓骨骨折と靭帯損傷という大怪我を負って復帰まで約8ヶ月かかったとはいえ、かつて二桁得点二桁アシストを記録したシーズンがあるだけに、「期待ハズレ」と見なされても仕方ない。

 昨年10月下旬に戦列復帰を果たした中島は、主にトップ下や左ウィングとして起用された。かつてほどではないにしろドリブルのキレも取り戻し、攻撃の中心を担いながらリーグ戦でわずか1得点。名門ポルトで10番を託された経験もある選手としては、寂しい数字だった。

●わずか1得点。中島翔哉のスタッツはどう変わった?

 では、目に見える「結果」以外のところで実際のパフォーマンスはどうだったのだろうか。サッカーにまつわる様々なデータを収集している『Footmob』を参照しながら、ポルティモネンセで10得点10アシストを記録した2017/18シーズンと今季のスタッツを比較してみたい。

▽2021/22シーズン
得点:1
アシスト:2
出場時間:1766分(22試合、うち先発20試合)
キーパス:37本
チャンス創出:39回
枠内シュート率:49%(17本)
ドリブル成功率:52%(34回)
パス成功率:78%(369本)
クロス成功率:31%(18本)

▽2017/18シーズン
得点:10
アシスト:10
出場時間:2493分(29試合、うち先発29試合)
キーパス:73本
チャンス創出:83回
枠内シュート率:51%(33本)
ドリブル成功率:51%(29回)
パス成功率:78%(601本)
クロス成功率:24%(29本)

 こうして見てみると、各種プレーを「率」にした時の数値はほとんど変わっていないが、「回数」や「本数」の実数が大きく減少している。例えば枠内シュートは「率」だと2%差だが、「本数」だと16本も違う。

 2017/18シーズンに比べてプレー時間が約3分の2になっていることは差し引いて考えたとしても、実数が約50%減となれば「減っている」と言っていいだろう。リーグ最終節のマリティモ戦ではクロスバー直撃のミドルシュートを放ち、決勝点も演出するなど存在感を見せたが、そうした活躍はシーズンを通してみると散発的だった。

 唯一、「回数」が増えているのはドリブルだ。やはり中島と言えば重心の低いキュンキュンのドリブル突破を思い浮かべるファンが多いだろう。確かに大怪我から復帰後、かつてと変わらないようなドリブルが蘇り、ボールを持ったら積極的に仕掛けていく姿勢も見られた。

 しかし、出場時間あたりのドリブル回数が増えたということは、裏を返せば「ドリブルせざるをえなかった」シチュエーションが多かったとも捉えられる。実際、今季のポルティモネンセでは選手間の距離が遠くなる試合が多く、中島がトップ下のスペースでボールを受けても味方のサポートがないまま複数のディフェンスに囲まれて潰されるシーンは幾度となくあった。

 いくらドリブルで相手の守備網を突破しようとする回数が増えても、次の選択肢を探している間に潰されてボールを奪われる。キーパス数やチャンス創出数が大きく減少しているのも、サポート不足と無関係ではないだろう。

●個人の責任ではない得点力不足

 ゴールやアシストを増やして完全復活を印象づけられなかった要因は、今季のポルティモネンセのチーム全体にもありそうだ。2017/18シーズン当時とは監督も戦術も違うため単純な比較は難しいが、改めてチームスタッツも見てみたい(カッコ内はリーグ内での順位)。

▽2021/22シーズン
順位:13位
勝ち点:38(10勝8分16敗)
総得点:31
総失点:55
1試合あたりの枠内シュート数:3.9本(9位)
ビッグチャンス創出数:21回(18位)
1試合あたりのゴール数:0.9(15位)
1試合あたりの失点数:1.3(10位)
クリーンシート数:10回(7位)
1試合あたりのGKセーブ数:3.5回(3位)
1試合あたりのパス成功数:304.7回(12位)
1試合あたりのアタッキングサードでのポゼッション回復回数:3.3回(16位)

▽2017/18シーズン
順位:10位
勝ち点:38(10勝8分16敗)
総得点:52
総失点:60
1試合あたりの枠内シュート数:4.6(5位)
ビッグチャンス創出数:42(5位)
1試合あたりのゴール数:1.5(5位)
1試合あたりの失点数:1.8(16位)
クリーンシート数:4回(18位)
1試合あたりのGKセーブ数:2.9回(10位)
1試合あたりのパス成功数:274.6回(10位)
1試合あたりのアタッキングサードでのポゼッション回復回数:2.9回(12位)

 偶然にも2017/18シーズンと2021/22シーズンは勝ち点も勝ち、負け、引き分けの数も同じだった。しかし、大きく違うのは「得点」に関するデータだ。2017/18シーズンは総得点がリーグ5位の「52」だったのに対し、2021/22シーズンの総得点は「31」でリーグ15位である。つまりしたから4番目という低水準だった。

 2017/18シーズンはFWファブリシオが15得点でチーム内得点王、10得点の中島でも2番目だった。ところが今季はチーム内得点王が冬に湘南ベルマーレから復帰したFWウェリントン・ジュニオールでわずか5得点。中島もファブリシオも1点ずつしか挙げられなかった。

 それでもチームとして同じ勝ち点を積み上げられたのは失点が減っているからに他ならない。GKサムエル・ポルトガルが上位クラブから注目されるまでに成長し、2017/18シーズンに比べて1試合あたりの失点数は0.5点も減っている。クリーンシートの数は2倍以上になった。

 ポルティモネンセが35ポイント前後を積み上げて中位から下位を争う立場なのは、4シーズン前から現在まで変わっていない。その中で守備が改善されていながら攻撃で決め手を欠いたのは、中島だけの責任ではないだろう。

●中島翔哉、来季の所属先は…

 むしろファブリシオをはじめとした他のアタッカーたちのパフォーマンスがよければ、中島のゴール数やアシスト数はもっと増えていたはずだ。個人スタッツの「率」があまり変わっていないのだから、「回数」が増えれば、1つひとつの質も向上していたに違いない。

 復帰まで8ヶ月も要する大怪我を経験したら、元どおりのパフォーマンスに戻すだけでもかなりの時間と努力を要するのは明白。それでも中島は完全復活に着実に近づいている。だからこそ、このタイミングでどんな将来を選ぶかは非常に重要だ。

 現在、中島と所属元であるポルトとの間で結ばれた2024年夏まで残っている。だが、ポルトでは構想外となっており、ポルティモネンセは来季に向けて期限付き移籍の延長を望んでいると現地メディアで報じられているところだ。

 確かにポルトで再びチャンスをつかむのは厳しいだろう。コロナ禍が始まった2019/20シーズン終盤にチームへ戻ることを拒んで物議を醸していた中島には、2020/21シーズン前半戦でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)などにも出場するチャンスが与えられていた。ところが期待には応えられず、アル・アインやポルティモネンセへ貸し出されることになったのである。

 セルジオ・コンセイソン監督は男気あふれる指導者として知られる。今季リーグ最終節でも、それまで一度もピッチに立っていなかった選手たちに、優勝メダルを受け取る権利を与えるためピッチに立つ機会を作った。

 だが、中島に「3度目」はないというのが大方の見解だ。ポルトは今夏、構想から外れている期限付き移籍中の選手たちを整理して財政的な負担を減らすことを目指しており、かつて10番を背負った日本人アタッカーも人員整理の対象になると見られている。

 具体的にはブラガからポルトガル代表DFダヴィド・カルモを獲得する際、金銭とともに交換要員として中島を差し出す準備を進めているという。もしブラガ移籍が決まれば、来季はUEFAヨーロッパリーグ(EL)に出場するチャンスがある。

 笑顔を取り戻した中島は、万全の状態を取り戻しつつある現状でどんな将来を選択するだろうか。メディアに「今季最大のがっかり選手」候補に挙げられたとはいえ、依然としてポルトガル国内では個人レベルで一定以上の評価を獲得している。もちろん復帰途上だった昨年夏より可能性は大きく広がっている。

(文:舩木渉)