●長期離脱などがありリズムに乗れず

 数多くの激闘が繰り広げられた2021/22シーズンが幕を閉じた。欧州各国でプレーする日本人選手たちは、果たしてどのような活躍を見せたのだろうか。今回は、スペインのマジョルカに所属する久保建英のシーズンを振り返る。(文:小澤祐作)

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 予想以上に難しいものとなった。久保建英の2021/22シーズンを短くまとめるならば、この表現が適切と言えるのではないだろうか。

 東京五輪での激闘を終え、マジョルカでの“再スタート”を切った久保は、いきなり壁にぶち当たった。第6節レアル・マドリード戦でカリム・ベンゼマとの競り合いの際に膝を負傷し、結果として約2ヶ月の長期離脱を強いられることに。新たなチームの戦い方に慣れてきた中での長期に渡る戦線離脱は当然痛く、実際「手応えを感じていた矢先の怪我だったので、もったいないことをした」と久保自身は当時のことを振り返っている。

 戦列復帰後2試合目の出場となった第16節アトレティコ・マドリード戦は、久保の2021/22シーズンにおける最大のハイライトとなった。1-1で迎えた後半アディショナルタイム、相手が前掛かりになっていた中で広大なスペースへ抜け出し、最後はGKヤン・オブラクとの1対1を冷静に制してマジョルカを劇的勝利に導いたのである。

 しかし、これで勢いを取り戻すかと思われたが、運が悪かった。マジョルカは12月下旬にトップチームの選手4人とスタッフ3人が新型コロナウイルスに感染したことを発表。久保はクリスマス休暇明け後の第19節バルセロナ戦とコパ・デル・レイ3回戦エイバル戦の欠場を余儀なくされるなど、なかなか良いリズムを掴むことができなかった。

 マジョルカは1月のリーグ戦を全敗で終えたが、2月最初の2連戦、カディス戦とアスレティック・ビルバオ戦で勝利を収めることに成功。ルイス・ガルシア・プラサ監督が頭を悩ませていた最前線の枠に、冬に補強したCFヴェダト・ムリキが即フィットしたことが大きかった。その中で久保も躍動しており、ビルバオ戦ではアシストを記録するだけでなく、GKウナイ・シモンのオウンゴールを誘発(ほぼ久保のゴール)と大活躍だった。

 しかし、巨漢FWムリキ頼みの攻撃はすぐに対策され、マジョルカは連勝後のベティス戦、バレンシア戦、レアル・ソシエダ戦、セルタ戦、マドリー戦をすべて黒星で終えることに。そして第29節エスパニョール戦を0-1で落とし6連敗となったところで、クラブはルイス・ガルシア監督を解任。後任に元日本代表指揮官でもあるハビエル・アギーレを迎えた。

 その結果、久保はさらに大きな壁にぶつかることになった。

●負けない戦い方の中で…

 アギーレ監督は、マジョルカを1部残留へと導くために、勝つ戦い方よりも負けない戦い方を優先した。簡単に言えば“守備重視”である。アトレティコやセビージャ、バルセロナといった格上のクラブに対してはもちろんのこと、ヘタフェやエルチェといった下位クラブ相手にもそれは徹底していた。

 そうした中で久保の序列は一気に下がってしまった。ラ・リーガ初挑戦当時と比較すれば同選手の守備意識は確実に上がっていたのだが、やはりインテンシティーという部分はまだまだ物足りない。そのため、アギーレ監督が採用する守備重視の戦術において、久保の必要性というものが薄れてしまったのである。

 事実、アギーレ監督が指揮したリーグ戦9試合中、久保が先発入りを果たしたのは第33節アラベス戦と第35節グラナダ戦の2試合のみだった。その2試合の内容も最悪で、アラベス戦は82分までのプレーでタッチ数わずか30回。グラナダ戦では自身のボールロストから失点を招いており、チームも2-6の大敗を喫するなど、あまりにも残した印象が悪すぎた。

 残留に向けて後がなかったラスト3試合の合計プレータイムは、たったの42分間しかなかった。最終節オサスナ戦では、90分間をベンチで過ごしている。これは久保にとって、2021/22シーズン初の出来事だった。

 チームはラスト3試合で2勝1分の成績を残し、見事に目標であった1部残留を勝ち取っている。結果としてアギーレ監督の“やり方”は正しかったということで、久保にとっては少し屈辱的な結末になったと言えるだろう。

 日本人レフティーの2021/22シーズン最終成績は、リーグ戦28試合1得点1アシスト、公式戦では31試合2得点3アシストとなった。この結果を受け、スペイン紙『AS』は「マジョルカで重要度が低下していき、前進は止まってしまった」と厳しい評価を下している。また、マジョルカ再加入時1500万ユーロ(約18億円)あった市場価値は、今月上旬の更新で750万ユーロ(約9億円)まで一気に下落(『transfermarkt』を参照)。これだけでも、久保の2021/22シーズンがいかに厳しいものとなったかがわかるだろう。

●ソシエダからの評価が落ちない理由は?

 その久保だが、来季のソシエダ入りが噂されている。同クラブは来季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場が確定しており、移籍が実現するとなれば日本人レフティーにとって大きなステップアップとなる。

 ソシエダが久保の獲得に動いたのはこれで3回目。『AS』は「ロベルト・オラベSDは、クボのレベル、成長度、将来性から、ブレイクして素晴らしい選手になることを確信している」と伝えている。

 では、なぜマジョルカでリーグ戦1得点1アシストに留まり、監督交代後はレギュラーの座からも外された久保に対し、ソシエダは変わらず高く評価しているのだろうか。その理由は久保が残したスタッツにあると言えそうだ。

 久保は今季のリーグ戦で計1607分間プレーしている。これはGKを除き、マジョルカ内で7番目の成績となっている。決して多い数字とは言えない。

 しかし、攻撃面で残したスタッツは非凡。キーパス32本(チーム内2位)、ドリブル成功数40回(チーム内3位)、ビッグチャンス創出回数3回(チーム5位タイ)、ドリブル成功率62.5%(ドリブル成功数30回以上を記録した4選手の中では1位)となっている(データサイト『Sofa Score』を参照)。アシスト未遂が何度かあったのも事実だ。

 リーグ戦1得点1アシストは失格の烙印を押されても仕方のない結果だが、長期離脱などがありながら、それも攻撃に出る回数がそもそも限られるマジョルカで上記のスタッツを残したのは、ソシエダからすれば高く評価できるポイントなのだろう。そう考えれば、厳しい結末にこそなったものの、久保が過ごした2021/22シーズンは決して無駄ではなかったと振り返ることができる。

 久保のソシエダ入りが決まれば、アドナン・ヤヌザイやポルトゥの抜けた右サイドで起用されることが濃厚とされている。同クラブの代名詞はポゼッションを基調にした攻撃的なサッカーであり、周囲との連係から相手を崩す能力に長ける久保のスタイルとの相性は良さそう。また、ソシエダは若手の育成にも定評があるので、まさに日本人レフティーにとって理想的な場所と言えるだろう。

 ただ、もちろんソシエダは選手やプレーの質がハイレベルなので、高評価を得られているからといってレギュラーを張り続けることは容易ではない。とくに久保の場合、ペナルティーエリア内でフリーになるためのアクションやデュエルの強度という部分に課題を残しているため、そこが改善できなければビジャレアル時代のような苦戦を強いられることになりかねない。

 いずれにせよ、来季は久保にとって重要なシーズンとなる。噂されているソシエダでのプレーになろうが、その他のクラブでのプレーになろうが、リーグ戦10得点以上に直接関与するような結果がそろそろ欲しいところである。その先に、レアル・マドリード復帰という道が見えてくるはずだ。

(文:小澤祐作)