●サッカー日本代表に喉から手が出るほど欲しい存在

サッカー日本代表は19日、EAFF E-1サッカー選手権で香港代表と対戦し、6-0で勝利した。海外組が大部分を占める日本代表において、Jリーグ勢で構成された今大会のメンバーからワールドカップ本大会に滑り込むのは至難の業だろう。その中で、「当落選上よりさらに下」と客観視する相馬勇紀は、香港代表戦で自身の価値を証明している。(取材・文:元川悦子)
———————————————-
【動画】日本代表FW相馬勇紀のFK弾がこれだ!

 カタールワールドカップ(W杯)まで4か月に迫った日本代表にとって、今回のEAFF E-1サッカー選手権は数少ない選手底上げの場。「国内組から1人でも2人でも使える戦力を引き上げたい」というのは、森保一監督の本音だろう。19日の香港代表戦に挑んだ面々は、チームの勝利を追及しつつ、自身の強みと価値をしっかりとピッチ上で示す必要があった。

 32歳にしてA代表デビューとなる水沼宏太を筆頭に、初キャップ5人がスタメンに陣取る中、最初に強烈なインパクトを残したのが、左FWの相馬勇紀だった。開始早々の2分、相手のハンドによってペナルティエリア外左寄りの位置で得たFKを右足で冷静に沈め、電光石火の先制点を奪ったのである。

「欲を言えば、もう少しスピードを上げて、いいコースに飛ばしたかったのはあるんですけど、今年チームでも1点決めていて、あそこの角度はすごい自信を持っている。ゴールはゴールなので、1つ決められたことはよかったです」

 本人は嬉しそうにこう振り返ったが、リスタートからの得点というのは、日本代表の大きな課題。最終予選からはセットプレーコーチをつけ、徹底分析を重ねているが、なかなかゴールにつながっていないのが実情だ。

 2010年南アフリカW杯を振り返っても、本田圭佑と遠藤保仁がデンマーク戦で立て続けに直接FKから得点したことで、どれだけ楽になったか分からない。「ひと蹴りでゴールできるキッカー」というのは、短期決戦のW杯では喉から手が出るほどほしい。相馬はまずその可能性を見せたと言っていい。

●相馬勇紀に「必要不可欠なテーマ」

 先制弾でチーム全体が落ち着き、日本代表の攻撃は迫力を増していく。前半20分には22歳の大型FW町野修斗が山根視来のクロスにドンピシャヘッドで合わせて2点目をゲット。さらに2分後には西村拓真も巧みな反転シュートで3点目を叩き出す。これをお膳立てする縦パスを出したのも相馬。インサイドの位置に絞ってラストパスを出す器用さもアピールした。

 前半は西村がもう1点を追加し、4-0で終了。後半へ突入すると、10分にはダメ押しとなる5点目が入る。右サイドで山根がインナーラップし、水沼からパスを受けると、マイナスクロスをゴール前へ送った。ここに鋭く侵入してきたのが背番号16の相馬。理想的な形から自身2点目を蹴り込んだ。

「最初、水沼選手から直接もらおうと思ったんですけど、1つパスがつながった中、ファーで待たずにニアまで動き出したことでゴールにつながったと思います」と本人も手ごたえをつかんだ様子だった。

 格下だろうが、どんな相手だろうが、明確な数字を残すことは、今の彼に必要不可欠なテーマだ。前日のオンライン取材でも「(田中)碧や(三笘)薫は日本を勝たせているし、数字で示している。それが大事なんだと再認識させられた」と短期間で一気に森保ジャパンの中核に上り詰めた東京五輪代表の盟友たちに大きな刺激を受けたことを明かしていた。

●南野拓実や三笘薫にはない武器とは?

「客観的にも現実的にも今の自分は当落選上よりさらに下の位置にいる」と自ら認める序列の低さを覆し、逆転でW杯をつかむためにも、目に見える結果を残し続けるしかない。64分間プレーし、6-0の大勝に貢献した香港戦は悪くない出来だったのではないか。出場した16人の中で最もカタール行き近い印象を残したのも確かだろう。

 ただ、彼の左FWには南野拓実と三笘がいることを忘れてはいけない。南野は2018年秋の現代表発足時からのエースで、森保監督はリバプールで試合に出らなかった時期も決して外さなかった。それだけ絶大な信頼を寄せている。そして三笘も1人で2〜3枚はがせるドリブルスキルとスピードを備えたキーマン。今や「戦術・三笘」という言葉さえあるほどだ。

 ある意味、「森保ジャパン攻撃陣の心臓」とも言える2人がひしめくポジションに割って入るのは容易ではない。2ゴール1アシストという今回の結果だけでは、サプライズを起こすのは難しい。高いハードルをあえて越えようと思うなら、自分の強みを徹底的に研ぎ澄ませていくしかないだろう。

 その武器の1つが、香港戦で示したリスタートだ。直接決められるのは南野や三笘にはない武器。代表ではそうそう蹴らせてはもらえないだろうが、とにかく精度を高めることでチャンスが広がっていくだろう。

 2つ目は2点目のシーンに象徴されるようなゴール前にタイミングよく詰める形。三笘もブライトンデビューとなったエストリル戦で似たような形から得点しているが、右で崩して左が仕留めるのは今の日本代表の重要な得点パターン。相馬も決める力があることをもっともっと体現していく必要がある。

 さらに言えば、個の打開と守備面の献身性をより強烈にアピールしていくことが肝要だ。本人も次のように口にしている。

●3年前のリベンジ

「ちょっと今日は少なかったですけど、個で打開できるっていう攻撃の部分と、何回かプレッシングで相手のサイドバックのところで引っかけることができたんですけど、守備でハードワークして戦えるってところが自分の持ち味かなと。それを前面に出して頑張りたいと思います」

 確かに1年前の東京五輪でも彼の突破力と激しい守備が日本代表にチャンスを演出していた。ドリブラーという観点ではどうしても三笘と重なりがちだが、相馬には相馬のリズムや駆け引きがある。しかも守りの部分は三笘以上に貢献できるはず。そういったよさを今一度、指揮官に認識してもらうためにも、ここから先の戦いが非常に重要になってくる。

 2019年大会の韓国戦に後半から出場し、劣勢を跳ね返せなかった彼は、27日の宿敵との再戦の意味を誰よりもよく分かっているはず。そこで勝利できなければ、逆転W杯の夢は潰える。そのくらいの強い危機感と闘争心を持って、自身のギアを一段階二段階引き上げていくべきだ。

「韓国は本当にインテンシティが高くて球際も来ると思う。技術じゃなくて戦う部分、走力が勝敗を分ける。2019年も(ファン・インボムの)左足一発でやられてしまった。本当に集中しなければいけない」と彼は語気を強めた。

 3年前の悔しさを知る男がリベンジを果たし、カタールへの望みをつなげるというのが、理想的なシナリオだ。それを具現化すべく、相馬には積極果敢にチャレンジを続けてほしいものである。

(取材・文:元川悦子)

【了】