●加入からわずか5日で実戦デビュー

 プレシーズンマッチ、レアル・ソシエダ対ボルシア・メンヒェングラードバッハが現地時間23日に行われ、1-1のドローに終わっている。レアル・マドリードからソシエダへの完全移籍が決まった久保建英は、後半頭よりピッチに立ち、新天地での実戦デビュー。そのプレーはどうだったのだろうか。(文:小澤祐作)

 ラ・リーガの開幕がさらに待ち遠しくなった。恐らく、サポーターだけでなく、久保建英自身もそう感じたのではないだろうか。

 現地時間23日に行われたプレシーズンマッチ、レアル・ソシエダ対ボルシア・メンヒェングラードバッハ。レアル・マドリードからソシエダへの完全移籍が決まった久保は、加入からわずか5日、それもトレーニングセッション3回という状態で実戦デビューを果たすことになった。

 出番が訪れたのは後半頭からで、ポジションはトップ下。それまで大先輩である元スペイン代表MFダビド・シルバが務めていた場所だった。

 48分、久保はさっそくチャンスに絡んだ。右サイドに走り込み味方からボールを受けると、ボックス内へ鋭いパスを送る。これが通り、最後はアンデル・マルティンの強烈なミドルシュートに繋がっている。

 その後はなかなかボールに触れられない時間が続いたが、クーリングブレイクの際にイマノル・アルグアシル監督からの指示を受けると、以降はボールタッチ数が増加。どういう言葉があったか定かではないが、若手主体のメンバーで、間違いなく攻撃の中心的存在となっていた。

 そして78分、日本人レフティーは最大のチャンスを迎えた。

●ソシエダはやはり理想的なクラブ

 マーカーの背後を突いてボックス内に走り込みA・マルティンのパスを引き出すと、GKヤン・ゾマーと1対1の状況を作り出したのである。

 しかし、かわそうとしたところでスイス代表GKが伸ばした足にボールが引っかかり、ゴールはならず。ブンデスリーガ屈指のビッグセーバーであるゾマーの対応は見事だったが、アピールという意味ではやはり決めきりたかった。

 結局、久保はゴールもアシストもなく試合終了のホイッスルを迎えることになった。しかし、ボールによく絡み決定機も創出。守備時も首を振って味方とコミュニケーションを取り、しっかりとマークの確認を行っていたなど、新天地デビュー戦としては上々の出来だったと言っていいだろう。

 やはりソシエダは久保にとって理想的なクラブだ。マジョルカやヘタフェと違いボールを簡単に捨てることがなく、必ず自分たちの時間を作れる。選手個々の技術力、ボールを受ける意識も高いため、攻撃の選手一人ひとりが孤立しない。この日の久保はボールロストが少なかったが、テクニックの高さはもちろん、味方のサポートもあったからこその結果と言えるだろう。

 そして何より大きいのは“動き”を見てくれる選手が揃っていることだ。マジョルカでは放り込みサッカーが基本で、かつ出し手に回ることが多かったので、ボックス内で決定機に絡むことがそれほど多くなかったが、ソシエダでは78分のようなビッグチャンスに期待できる。オフ・ザ・ボールの動きにさらに磨きをかければ、ゴール数は自ずと増えていくだろう。

●D・シルバから学ぶべきことは?

 ただ、もちろんだが課題もあった。それは、ボールに寄り過ぎていることだ。

 マジョルカ時代からの癖だろうか、久保はボールに触れたいがために、ボールホルダーの近くにポジショニングすることが多かった。もちろんその全てが悪いわけではないが、動き過ぎることによって味方とポジショニングが被ったり、スペースを消してしまうようなこともあったのは事実だ。

 後半開始早々には、久保が左サイドでボールを持った選手の近くに行くと、その直後「タケー!タケー!」という声が響き、久保がベンチに向かい手を上げるシーンがあった。アルグアシル監督からポジショニングについての指摘だった可能性が高く、それがクーリングブレイクの修正にも繋がったのかもしれない。

 前半に久保と同じポジションで出場していたD・シルバは、あえてボールホルダーから離れることで、味方のスペースを生み出すアクションも見せていた。久保は今後、ボールを受ける動きだけでなく、そうした動きも元スペイン代表MFから学ぶ必要がありそうだ。

(文:小澤祐作)