●新生ユナイテッドにいきなり壁

 プレミアリーグ第1節、マンチェスター・ユナイテッド対ブライトンが現地時間7日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利している。エリック・テン・ハフ監督の初陣だったユナイテッドは、なぜ開幕戦を落としてしまったのだろうか。(文:小澤祐作)

 エリック・テン・ハフ監督は、いきなりプレミアリーグの厳しさ、そして難しさを痛感させられることになったと言えるだろう。

 ホームにブライトンを迎えたマンチェスター・ユナイテッドは、新戦力のリサンドロ・マルティネスとクリスティアン・エリクセンらが先発。一方、プレシーズンマッチで好調だったアントニー・マルシャルはベンチ外となり、去就不透明のクリスティアーノ・ロナウドもベンチスタートだった。

 良いゲームへの入りを見せたのはアウェイチームで、ユナイテッドは相手の連動したプレスに大苦戦。嫌な位置でボールを失ってはゴール前に侵入されるなど、自分たちのやりたいことをなかなかさせてもらえなかった。

 相手陣内へ侵入しても迫力は皆無。ブルーノ・フェルナンデス、エリクセンというキックの名手はいるものの、純粋なストライカーがいないためボックス内で勝負できず、ボックス外でボールを動かすだけというシーンが散見された。事実、前半のシュート数はブライトンの12本に対し、ユナイテッドはわずか5本と少なかった。

 そのユナイテッドは、前半のうちにパスカル・グロスに2点を与えている。いずれも敵陣でボールを奪われてからのカウンターだった。

 後半はブライトンのテンションが落ちたこと、選手配置を変更したことなどが相まってユナイテッドペースになり、オウンゴールから1点も返した。しかし、マーカス・ラッシュフォードが再三の決定機を逃したりとなかなか同点には追いつけず。試合は1-2のままタイムアップを迎えることになった。

 試合後テン・ハフ監督は「ガッカリしたのは確か。もちろん期待もあったが、起きてしまったことで、これはプロセスの一環でもある。時間がかかることでもあるし、本当にハードに取り組む必要がある」とコメントを残している。では、ユナイテッドが「ガッカリ」な結果を招いてしまった最大の原因は、果たしてどこにあるのだろうか。

●機能していなかったのは…

 この日の勝敗を分けたのは、前半45分間だと言っていい。ユナイテッドは、ブライトンの狙いにハマってしまった。

 ブライトンは、基本的に1トップのダニー・ウェルベックが2センターバックを監視し、アダム・ララーナがアンカーのフレッジをチェック、そして両ウィングバックが相手サイドバックの位置まで上がることでユナイテッドのビルドアップを封じにかかっている。この連動性と集中力、そして強度は凄まじいものがあった。

 GKから丁寧にボールを繋ぎたいユナイテッドは、このブライトンの迫力に圧倒されている。とくに苦労していたのは、アンカーのフレッジだ。

 フレッジは機動力が魅力で、攻守の切り替えの早さも光るが、ゲームのリズムを生み出せるような、あるいはプレスを剥がせるようなパスセンスや視野を持っていない。そのためビルドアップにおける貢献度はあまりに低く、逆に危険なボールロストを犯すこともあった。

 9分にはGKダビド・デ・ヘアからフレッジにパスが出ると、ララーナの厳しいチェックを受けた同選手はダイレクトで右サイドへ。しかしそこにはレアンドロ・トロサールが待っており(恐らくフレッジは全く見えてなかった)、一気にピンチとなった。幸いフレッジ自らボールを取り返したことで失点は防いだが、ブラジル代表MFの弱点が垣間見えた瞬間だったことは間違いなく、これこそブライトンの狙いだった。

「ディフェンスのせいではない。チームとして守っているのに、中盤で不必要なパスミスを犯してしまい、その後で相手に支配されてしまった」

 試合後にテン・ハフ監督はこう振り返っている。本来フレッジの良さが表れるのはもう一つ前のポジションであることは明らかであり、やはり同選手をアンカーで起用した点は失敗と言わざるを得ないだろう。もちろん中盤の機能不全をフレッジだけの責任とするのは酷で、スコット・マクトミネイもかなりプレーの荒さが目立っていたが、いずれにせよここがブライトンの狙いにハマった1つの要因になってしまった。

●エリクセンのアンカーは良かったが…

 2点ビハインドで迎えた53分、テン・ハフ監督はフレッジを下げてC・ロナウドを投入。それまで最前線にいたエリクセンをアンカーの位置まで下げ、状況の打開を試みた。

 ブライトンのテンションが落ちたことも忘れてはならないが、エリクセンが中盤に入って以降のユナイテッドは、ボールがよく動き、チャンスも作れるようになった。実際テン・ハフ監督も「後半はエリクセンが下がって、C・ロナウドが上がって中盤が良くなったのは確かだった」と話している。

 しかし、エリクセンのアンカー起用はあくまで応急措置といったところで、今後の明確な解決策になることはないだろう。デンマーク代表MFのキック精度は世界屈指であり、攻撃面だけを考えれば問題はないように思えるが、やはり守備面の強度には不安を残す。テン・ハフ監督はアヤックス時代から被カウンター時の対応があまりうまくなく、それに加えエリクセンが中盤底に入るとなると、それこそ諸刃の剣である。

 そう考えると、やはり中盤底の補強は必須だろう。いま現在市場に出ているトップレベルのMFは決して多くないが、理想はバルセロナのフレンキー・デ・ヨング、あるいはウォルバーハンプトンのルベン・ネベスといったところになるはずだ。

 もちろん彼らの獲得は容易ではない。デ・ヨングに関しては粘り続けているが、進展の気配がないのが現状だ。しかし、このままのスカッドで移籍市場のクローズを迎えることになれば、また厳しいシーズンになることだろう。

(文:小澤祐作)