●J2リーグ健闘する昇格組

J2昇格1年目の2チームが、対照的な戦略でJ2リーグを戦っている。大木武監督率いるロアッソ熊本はJ1昇格プレーオフ圏内の6位につけており、いわてグルージャ盛岡も残留が十分可能な位置につけている。両者の健闘ぶりの理由は何か。両指揮官の起用法は対照的で、非常に興味深い。(文:ショーン・キャロル)
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 近年のJリーグでは、昇格直後のチームが新たなカテゴリーに驚くほど順調に適応してしまうことがある種の定番となっている。ここまでの2022シーズンも例外ではない。

 例えば、Jリーグ初参戦のいわきFCはJ3で現在首位。J3昇格1年目にして惜しくも最終節でトップ2入りを逃した昨季のテゲバジャーロ宮崎に続く戦いぶりだ。

 最終的にテゲバジャーロは優勝したロアッソ熊本と勝ち点1ポイント差、2位のいわてグルージャ盛岡とは得失点差わずか2点差という成績だった。その熊本と岩手の2チームも、今季の2部リーグでここまで着実な戦いぶりを見せてきた。とはいえ、両チームのやり方は大きく異なっている。

 ロアッソはJ2の中でも特に一貫した顔ぶれで戦っているチームだ。大木武監督は、ペップ・グアルディオラのように考えすぎるメンバー選びをすることは一切無く、単純に重要な核となる選手たちを信頼して毎週末ピッチに送り出している。

 菅田真啓は警告累積のため今週末のヴァンフォーレ甲府戦に出場停止となったが、前節までは河原創とともに全試合フルタイム出場を続けていた。大木監督は6月5日から7月30日までに行われた10試合にほぼ同じスターティングイレブンを続けて起用しており、ロアッソはこの時期にプレーオフ進出を争う順位を固めてきた。

 だからといって大木監督が、チームに対して怠惰であったり消極的であったりするアプローチを取っているというわけではない。

●大木武監督が採る起用法とは?

 彼は経験豊富な戦術家であり、2017年のFC岐阜では中央大学から新卒の古橋亨梧を信頼してプロ1年目から全試合に先発出場させた指揮官でもある。チームに調整が必要とされる場合には、どこを変えるべきかしっかりと理解していることも示してきた。

 例えば栃木SCに2-0の勝利を収めた先週末の試合では先発2人の入れ替えが行われた。チームに多少のフレッシュさを加える必要が生じてくれば、伊東俊や竹本雄飛、田辺圭佑、阿部海斗といったメンバーにも長めの出場時間が与えられている。

 それでもロアッソは、ここまでリーグ戦30試合を戦って25人の選手しか起用していない。500分間以上プレーしている選手はわずか14人だ。

 一方でグルージャは、全く異なるやり方で戦ってきた。秋田豊監督は大幅なローテーションを行っており、今季同じスタメンを2試合連続で選択したことは一度もない。過密スケジュールの中で選手のストレスや負担を管理し、メンバー全体の力を最大化することに重点を置いている。

 結果として34人もの選手たちがここまで試合に出場しており、そのうち25人が500分間以上プレー。さらに中野雅臣と田平起也の2人も、それぞれあと8分と19分で合計500分の節目に届く。

●秋田豊監督の采配に感じる可能性

 現在の順位表を眺めてみれば、その手法はロアッソほど効果を表してはいないように捉えられるかもしれない。勝ち点30のグルージャが降格圏とわずか3ポイント差の19位に位置しているのに対し、ロアッソはグルージャを17ポイント上回る勝ち点で6位の好位置につけている。

 だがグルージャもいくつかの大敗を除けば特に戦力不足を感じさせてはいないし、アウェイでジェフ千葉やファジアーノ岡山や横浜FCに、ホームで甲府や徳島ヴォルティスに勝利を収めるなど、J2初年度から何度か強敵を撃破することに成功してきた。

 残留を争う大宮アルディージャには2戦2勝を飾っており、この6ポイントがシーズンの最後に大きく効いてくることになるかもしれない。

 指導者としての経験という点において、秋田監督が大木監督と対極に位置していることはもちろんだ。だが両者ともにジャージ姿が非常に様になっており、タッチライン際で靴を汚すことも厭わない。鹿島アントラーズと日本代表の元スター選手である前者にも、これから指導者としての輝かしい未来が待っていることが期待できそうだ。

●岩手の起用法が生む好影響

 パンデミックの影響による様々なプレッシャーや22チームで構成されるJ2の過酷な日程を考えれば、実際のところ秋田監督の採用するやり方は素晴らしいアプローチであり、もっと多くのチームが試していないことの方が不思議に感じられる。1年間の試合日程がわずか6ヶ月間に詰め込まれた異常な2020シーズンは特にそうだった。

 ほぼ毎試合起用されている2、3人の選手を除けば、秋田監督は基本的にメンバーを2つのチームに分けている場合もある。その2チームを交互に送り出すことで、リーグ戦や天皇杯、そして新型コロナウイルスの影響で中止され日程の変更された試合を乗り切ってきた。

 ミッドウィークの試合が連続する場合には特に賢いやり方となる。グルージャは5月18日から7月10日までの54日間で立て続けに14試合を組まれ、平均して4日ごとに1試合という日程だった。

 この手法は選手の体力を温存できるだけでなく、成長中の若いタレントに実戦での勝負の機会を定期的に与えることにも繋がる。今後数ヶ月間、数年間のチームとクラブにとってもちろん好影響をもたらすことだ。

 ロアッソとグルージャがシーズンのラスト4分の1をどう戦い抜くかはまだ分からないが、監督がそれぞれ異なるアプローチを採用する両チームは、シーズンが佳境を迎えていく中で引き続き注目に値する存在であることは間違いない。