●バルセロナ、3-0でも余裕の勝利ではない

ラ・リーガ第4節、セビージャ対バルセロナが現地時間3日に行われ、0-3でバルセロナが勝利した。シャビ・エルナンデスが率いるチームは、セビージャの狙いを逆手に取ってゴールを重ねた。果たして、今のバルセロナを止めることのできるチームはあるのだろうか。(文:本田千尋)
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 チャビ・バルサが“多彩な姿”を見せた。

 9月4日に行われたリーガ・エスパニョーラ第4節。バルセロナは3-0のスコアでセビージャに勝利した。4-0でバジャドリードを粉砕した前節に続く大勝で、熱気あふれるエスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアンの観衆を黙らせた。

 もっとも、試合終了の笛が鳴った時のスコアは3-0だったとはいえ、シャビ・エルナンデス監督が率いるカタルーニャのチームが、フレン・ロペテギ監督が率いるセビリアのチームに対して余裕で勝利を収めたわけではなかった。

 中盤が逆三角形の[4-3-3]の布陣のバルセロナに対し、セビージャは中盤がダイヤモンドの[4-4-2]で挑んできた。バルサがボールを持っているとき、特にGKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンからビルドアップを始めるときに、セルヒオ・ブスケッツ、ペドリ、ガビの中盤の3枚に対して、トップ下のイスコ、左サイドのイヴァン・ラキティッチ、右サイドのジョアン・ジョルダン(場合によってはアンカーのネマニャ・グデリ)の3枚を当ててフタをしてきたのである。

 開始間もない3分の場面で、苦戦の“兆し”は現れていた。

●セビージャがバルセロナを苦しめた方法

 敵のGKのロングフィードをボックスの外の右サイドで足を使って回収したテア・シュテーゲンは、FWユセフ・エン=ネシリのプレスを受けながらエリアの中に戻ると、ボールを両手ですくって胸の内にガッチリと収める。即座に右手でスローイングをしようとしたドイツ代表GKは、しかし投げる動作を取りやめ、ボールを置いて右足でのロングフィードに切り替えた。目の前では、ブスケッツとペドリには後方からマークがつき、ガビの前にはラキティッチが立ってパスコースを切っていたからだ。

 テア・シュテーゲンが蹴ったボールは、中盤で回収され、そのままセビージャにスピードに乗ったカウンターを仕掛けられてしまう。同様に、12分の場面では、中盤を封じられるだけでなく、開いたエリック・ガルシアとアラウホの2CBにも敵の2トップがマークしてきたので、ドイツ代表GKは蹴らざるを得なかった。上がる右SBのジュール・クンデをめがけて蹴られたボールは、そのままタッチラインを割ってしまう。

 17分の場面で最前線のロベルト・レヴァンドフスキに蹴ったロングボールは、そのまま回収されて相手ボールになってしまった。

 このようにして中盤の3枚を“封殺”されたバルサは、ならば後ろから繋ごうとしてもハードなプレスを前に思うように繋げず、セビージャの“攻撃的な守備戦術”に苦しんだ。それでも失点せずに済んだのは、テア・シュテーゲンのセービング技術の高さと、敵のファイナルサードでの攻撃精度の低さに助けられたからである。

 それでは、どのようにしてバルサは“苦境”を脱したのか。

●バルセロナが苦境を脱した3つの方法

 まずは、カウンター。20分の局面では、レヴァンドフスキとハフィーニャを前に残した[4-4-2]のような形で自陣にブロックを敷くと、中盤で奪ったボールを即座にウスマヌ・デンベレに繋いで、高速カウンターを発動。デンべレ、レヴァンドフスキ、ハフィーニャの3トップでセビージャ・ゴールを急襲した。

 デンベレは左に開くポーランド代表FWへのパスを選択。レヴァンドフスキはチップキックでシュート。フェルナンドがクリアしかけたボールを、ハフィーニャが頭で押し込んでゴール。試合が始まってから敵の“攻撃的な守備戦術”に苦しんだバルサだったが、一発のカウンターで風穴を開けた。

 次に、ロングフィード。先制後はペドリがゲームを落ちつかせるなどして、ボールポゼッションを回復してきたバルサは、36分、後方で繋ぐと、右SBのクンデが少し内側をドリブルで進み、最前線のレヴァンドフスキを目掛けてロングフィードを繰り出す。ポーランド代表FWは見事な胸トラップから、右足ボレーでシュートを突き刺す。クンデのバルサらしいSBのポジショニングから、追加点が生まれた。

 そして、セットプレー。苦戦を強いられながら2-0で前半を折り返したバルサは、50分、ショートコーナーから、ハフィーニャがファーに蹴ったボールをクンデが頭で折り返す。そこにエリック・ガルシアが詰めて、3点目――。

 この3つのゴールに共通するのは、いわゆる中盤の3枚を飛ばしていることだ。言い換えると、中盤の3枚の強みにこだわらない、といったところだろうか。

 セビージャが対バルサで選択してきた“攻撃的な守備戦術”で中盤の3枚を封殺されたのなら、後方からのビルドアップに決してこだわらない。ブロックを敷いてカウンター、SBからの斜めのロングフィード、そしてショートコーナーと“多彩な攻撃”を仕掛けていったのが、今回のセビージャ戦のシャビ・バルサだった。敵が抱くバルサ=繋ぐというイメージを逆手に取ってゴールを量産した、とも言える。

 強者は、強者だからこそ、自分たちのスタイルにこだわらない。シャビ・エルナンデス監督率いるバルセロナは、そんな柔軟で“多彩な姿”を示して、セビージャに勝利を収めたのである。

(文:本田千尋)

【了】