●主力温存のアーセナルが白星スタート

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)・グループリーグ第1節、FCチューリッヒ対アーセナルが現地時間8日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利した。この試合では、冨安健洋が今季初の先発出場。完全復活した日本代表DFが圧巻のパフォーマンスをみせた。(文:阿部勝教)

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 敵地に乗り込んだアーセナルは、ガブリエウ・ジェズスら主力選手を温存。冨安健洋など、リーグ戦では出場機会が限られていた7選手がスタメンに名を連ねた。

 リーグ戦同様に4-2-3-1で臨んだアーセナルは、試合開始からボールを保持。右サイドバックに入った冨安を起点としたビルドアップで試合を組み立て、主導権を握っていた。

 試合序盤の4分と7分には、新加入選手もいたためか、何でもないところで連係ミス。不用意に相手にボールを渡してしまい、ピンチを迎える場面もあったが、この日のアーセナルは前線でのボールロスト後に瞬時にプレスをかけるなど守備意識が高く、速い攻守の切り替えでピンチも難なく防いでいた。

 すると、16分にエンケティアのクロスに合わせたマルキーニョスが先制ゴール。前半終了間際の44分には相手にPKを与えてしまい同点に追い付かれたが、66分に今度はマルキーニョスのクロスにエンケティアが合わせ、1-2の勝利を収めた。

 スコアだけ見れば接戦だったかに思えるが、データサイト『SofaScore』によると、アーセナルはボール保持率70%を記録。パス本数はチューリッヒの266本に対して倍以上の647本、シュート本数は10本に対して18本と、ほぼ控えメンバーでも相手を大きく上回っていた。

 そんなアーセナルの中心となっていたのは、冨安だった。

●冨安健洋の何が凄かったのか

 得点にこそ関与できなかったが、18分に相手DF間を抜く鋭いスルーパスをみせると、23分には右サイドからバイタルエリアでフリーになっていたグラニト・ジャカへ攻撃のスイッチを入れる速いパスを配球。さらに、26分にはサイドチェンジからガブリエウ・マルティネッリがクロスを入れるなど、アーセナルは冨安を中心に試合を組み立てていた。

 後半にも、冨安→ジャカ→キーラン・ティアニーと繋いで相手ゴールに迫るなど、冨安はビルドアップの起点となるだけでなく、攻撃のスイッチを入れる役割も果たしていた。

 これは、数字を見てもわかるだろう。データサイト『SofaScore』によると、今季初先発となった冨安は、この試合でのボールタッチ数は両チーム最多のガブリエウ・マガリャンイスより2つ少ない96回。パス本数81本と、成功数77本はどちらもチーム最多を記録している。

 また、守備面でも存在感を発揮。60分と78分の場面では、敵陣でボールを奪って持ちあがる場面もあった。地上戦勝率は100%を記録し、攻守で安定した活躍をみせていた。

●冨安健洋、スタメン奪取の可能性は…

 今季初の先発フル出場を飾った冨安は、プレシーズン中に負傷していたこともあり、リーグ戦ではここまで5試合に出場するも、全て試合終盤の途中出場となっている。

 だが、この試合のパフォーマンスをみれば、完全復活したことは一目瞭然だろう。ミケル・アルテタ監督にも好印象を与えたはずだ。

 今季はここまでベン・ホワイトにポジションを奪われている。戦術理解度とパススキルが高い同選手は、本職でない右サイドバックをそつなくこなしているが、敗戦したマンチェスター・ユナイテッド戦では、そのスピードの無さを狙われて2失点に関与してしまい、現地紙「デイリーメール」で最低評価を与えられていた。

 仮に冨安が先発出場していても、マンU戦の結果は変わっていなかったかもしれない。だが、スピード面では、日本代表DFが勝っているのは確かだ。また、チューリッヒ戦でみせた攻撃面やビルドアップへの貢献度は、ベン・ホワイトに引け劣らない。本調子であれば、冨安の方が右サイドバックでより効果的な働きができるはずだ。

 しかし、1試合の評価で序列が変わることはおそらくない。だが、チャンスは間違いなくやってくる。それが、現地時間11日に行われるリーグ第7節のエバートン戦になるか、まだまだ先になるか。この試合のパフォーマンスを維持できれば、冨安が主力メンバーに返り咲く日はそう遠くはないだろう。

(文:阿部勝教)