●「10本以下のパスでゴールを決めることの方が簡単」

 ラ・リーガ第5節、レアル・マドリード対マジョルカが現地時間11日に行われ、4-1でホームチームが大勝した。この日奪ったレアルの4ゴールには、ある共通点が存在している。それこそが、現欧州王者レアルが持つ強さの証だった。(文:本田千尋)

 試合に先立つ会見で、カルロ・アンチェロッティ監督は、次のような“見解”を述べた。

「(レアル・)マドリードは称賛に値するチームだが、33本のパスを繋いでゴールを決めることは、我々のアイデンティティの全てではない。データによる統計によれば、10本以下のパスでゴールを決めることの方が簡単だ。フットボールは変化し続けており、よりダイレクトになっている。最近では、あらゆる国でポゼッション・フットボールは、これまでよりもポピュラーではなくなってきている」

 このイタリア人指揮官のコメントを要約すると、「レアルはポゼッションにはこだわらない。よりダイレクトにゴールを狙う」といったところだろうか。「こだわるべきは試合終了時の結果であり、スタイルではない」と言っているようにも聞こえる。

 もっとも、アンチェロッティ監督の示唆するとおり、ボール支配率の高さを重視するチームはほとんどなくなっているのが、近年のフットボールの傾向であるのは間違いない。“繋ぐサッカー”の代名詞のような存在だったバルセロナでさえ、「よりダイレクトになっている」のが現状だ。

 このような老将の“合理的な思考”を体現するようなサッカーを、エル・ブランコの選手たちは、現地時間11日に行われたラ・リーガ第5節、マジョルカ戦で披露した。

●レアルの選手は勝負所を熟知している

 チャンピオンズリーグ(CL)のセルティック戦からは中3日。グラスゴーでの一戦で負傷したカリム・ベンゼマの代役には、アンチェロッティ監督が会見で予告したとおり、エデン・アザールが入った。また、中盤でもルカ・モドリッチがベンチスタート。トニ・クロースのアンカーの前に、フェデリコ・バルベルデとダニ・セバージョスが先発。3-0で勝利したとはいえ、セルティックがタフなチームだったのは事実。主に疲労を考慮してのローテーションが組まれたようだ。

 CLの初戦に続いて、このマジョルカ戦も結果的には4-1での大勝だったが、決して簡単なゲームではなかった。レアルの選手たちは自陣に引いてこもる相手にかなり苦戦した。敵将のハビエル・アギーレは[5-4-1]の布陣を選択。強度の高い守備ブロックの中で、アザールはなかなかボールに触ることができず、クロース、バルベルデ、セバージョスのトライアングルも、不慣れなメンバー構成だったためか、パスワークに苦慮したようだった。

 しかし、冒頭で示したイタリア人指揮官のコメントのとおり、「ポゼッションにこだわらない」のであれば、敵の固い守備ブロックの攻略に苦戦することも、さほど問題ではなかったのかもしれない。

 そもそも、なぜレアル・マドリードはCLを制覇できるのか、を考えると、何より選手たちが“勝負所”を熟知しているから、ではないか。少なくとも「33本のパスを繋いでゴールを決めること」にこだわっているから、ではないだろう。

 もちろん、モドリッチを筆頭にベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオール、クロースら選手たちの卓越した技術があってこそだが、それ以上に90分トータルで試合を捉え、流れを読み、“勝負所”で「よりダイレクトに」攻めることができているからこそ、重要な試合をものにすることができるのだろう。

 苦戦は問題ではない、と言うのは言い過ぎかもしれないが、苦戦は織り込み済み、といったところだろうか。よって、35分にセットプレーから先制点を奪われたとしても、CLで幾多の修羅場を潜った“エル・ブランコ”の選手たちに心理的ダメージはなかったようだ。

●4ゴールに共通するものはまさに…

 48分にバルベルデが自陣から独走してミドルを突き刺し、前半のうちに追いつくと、72分には、交代で入ったモドリッチからパスを貰ったロドリゴが、自らドリブルでライン間に入っていき、左手前のヴィニシウスにパス。このボールをブラジル代表FWが軽やかに決めて、逆転に成功。さらに89分にはロドリゴが単独で右サイドを突破して、3点目を奪う。

 そしてアディショナルタイムには、FKのチャンスからアントニオ・リュディガーが左足ダイレクトで突き刺して4点目――。結果、4-1でマジョルカに大勝した。

 この4つの得点に共通するのは、“勝負所”で「よりダイレクトに」敵のゴールに迫っていることだ。決してポゼッションにはこだわっていない。むしろレアルの選手たちは、ポゼッションにこだわるとかえってブロックの攻略に行き詰まる、といったような共通認識を持っているようですらある。なるほどポゼッションにこだわらなければ、目の前の固い守備ブロックに対してパスを繋いで崩せないことによる心理的負担も軽減する。

 いずれにせよ、「ポゼッションにはこだわらない。よりダイレクトにゴールを狙う」といったアンチェロッティ監督の“合理的な思考”を体現するようなサッカーで、レアル・マドリードの選手たちは、引いて固めたマジョルカを粉砕した。

(文:本田千尋)