明治安田生命J1リーグ第30節が18日に行われ、横浜F・マリノスは北海道コンサドーレ札幌と0-0で引き分けた。

 17日に2位の川崎フロンターレが柏レイソルと1-1で引き分けたため、首位のマリノスは札幌に勝てばフロンターレとの勝ち点差を7ポイントまで広げることができた。リーグ戦残り5試合ということも考えれば、非常に大きなアドバンテージになるはずだったが、ホームで4連勝と勝ち点3をつかみ取ることはできなかった。

 しかし、マリノスに勝利のチャンスは十分にあった。特に56分のFWアンデルソン・ロペスがフリーキックの流れからゴールネットを揺らした場面で、得点が認められていれば状況は大きく変わっていたはず。VARの介入と主審のオン・フィールド・レビュー(ピッチ脇のモニターを使っての映像確認)によってゴール前でファウルがあったと判定され、得点は取り消しになってしまった。

 DF永戸勝也が左サイドから低くて速いフリーキックをニアサイドに送ると、相手に当たってこぼれたボールをFWエウベルが拾って隣の味方につなぎ、DF角田涼太朗がシュート。これは相手ディフェンスにブロックされたが、札幌の選手が処理にもたついて再びこぼれたボールにアンデルソン・ロペスが反応して押し込んだ。

 ところが映像で確認すると、アンデルソン・ロペスがシュートを打つ直前にボールに触ろうとしたMF藤田譲瑠チマがクリアのために滑り込んだ相手選手の足首を踏んでしまっていたことが判明。福島孝一郎主審はオン・フィールド・レビューを行なった末に藤田のファウルと判定してアンデルソン・ロペスのゴールを取り消した。

 札幌のMF金子拓郎の足首を踏む形になってしまった藤田は「(アンデルソン・ロペスの前に)自分が触れる可能性があって、足を出した時に……という形だったので、仕方ないかなというのはあります」とファウルの判定を受け入れていた。

 そして「他に決められるシーンだったり、シュートにいくまでいい形なのに最後の質が伴わなくて得点の機会がなくなってしまったシーンがあった。そういったところはチームとして反省して修正すべき」と続ける。

 ピッチ上でゴール前の混戦の近くにいたFW水沼宏太は「正直、あの場面は何が起きたか自分でもわかっていなかった。VARのチェックが入って、何のチェックをしているのかもわからないことが結構あるので、難しいなと思いますね。言われてみれば踏んでいるし、でもゴール前ってああいうものだし、みたいな」と福島主審の判定に理解を示しつつも、選手としての感覚との間にあるギャップとの葛藤を感じているようだった。

 スコアレスドローという結果を覆すことはできない。だからこそ「チャンスはあったので、そこを決めきれば文句なしで勝利できた。自分たちが上に立っているのであれば、そういうチームになっていかないといけない」と、水沼も藤田と同じく矢印を自分たちに向けることの重要性を説いていた。

 とはいえ最近のマリノスはVARに振り回されてしまっている。今回の札幌戦はオン・フィールド・レビューが行われてノーゴール判定になるプロセスに妥当性が見られたものの、2節前のアビスパ福岡戦では相手DF奈良竜樹のFW西村拓真に対する危険なタックルがノーファウルと判定され、VARの介入もなかった。激しく削られた西村は左足関節外側靱帯損傷と診断され、1ヶ月以上の離脱を強いられることとなった。

 マリノスを率いるケヴィン・マスカット監督は札幌戦後のインタビューで「今日はVARが動いていたみたいだが、数試合前に(西村)拓真が靭帯を痛めた時は動いていなかったのではないか。あれを見てくれなかったのは残念」と、アンデルソン・ロペスのゴール取り消しに理解を示しつつ判定の一貫性のなさに言及していた。

 全てが思い通りにいかないのは当然で、人間が関わっている以上、時には間違うこともある。そして、選手も審判もお互いに改善していくための努力はできる。チームキャプテンのMF喜田拓也は次のように語る。

「審判の方の判断が全てなので、そこで自分たちがどうこう言ったところで判定が変わらないのはわかっています。意見することやディスカッションはできる限りしているんですけど、やっぱりどうしても思い通りにいかない、または受け入れ難いものは出てくる。それが結果に直結するだとか、この前で言えば西村選手の怪我につながるところもあった。

もちろん残念、悔しいという気持ちはあるんですけど、それが結果に対する言い訳にはならないというのは分けて考える必要がある。そこの狭間というか。もちろん悔しさだったり、こうだったよねというものもありながら、それを受け入れています。その考え方のバランスじゃないですかね」

「審判の方とコミュニケーションを取るとか、そこを未然に防いだりできる部分も少なからずある」と述べる喜田は、試合後に審判団と意見交換も行なった。藤田の踏みつけが金子のクリアを妨げたわけではなく、アンデルソン・ロペスのシュートに至る過程で「直接ボールの行方やボール自体に関係があるのかというと、ちょっとクエスチョン」という考えを福島主審らに伝えたという。

 そのうえで互いにコミュニケーションを取りながら「少しずつの積み重ねが向上だったり、変わっていくことにつながっていけばいい」と喜田は話す。大事なのは終わったことを悔やみ続けるのではなく、これから先の未来に向けた取り組みだ。

「(福島主審が)VARの方々とどういう話をされていたのか僕らは全部はわからないので、審判の判定がそう(ファウル)だったというなら、もう次の準備をしようと。『動じないで、また次を取りにいくぞ』という声を掛け合っていたので、いい意味でそれ以上でもそれ以下でもない」

 喜田はすでに試合の中での判定やスコアレスドローという結果を受け入れ、前を向いていた。「声を掛け合っていた」という言葉を聞く限り、ファウルをしてしまった藤田や他のチームメイトたちも気持ちを切り替えているだろう。

 札幌とお互いの持ち味をぶつけ合った激戦は、マリノスの選手たちが「矢印を自分たちに向ける」という基本を改めて意識するきっかけになったはず。残り5試合では「思い通りにいかない、または受け入れ難いもの」に左右されない圧倒的な強さを見せられるだろうか。

(取材・文:舩木渉)