●フリック体制初黒星

 UEFAネーションズリーグAグループ3第5節、ドイツ代表対ハンガリー代表が現地時間23日行われ、アウェイチームが0-1の勝利を収めている。昨夏のユーロ(欧州選手権)後に就任したハンジ・フリック監督の下では12戦で無敗をキープしていたドイツ代表だったが、なぜハンガリーに敗れてしまったのだろうか。(文:安洋一郎)

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【動画】ドイツはフリック体制初黒星…。ハンガリー戦ハイライト
 ハンジ・フリック監督就任からの怒涛の8連勝から一転、強豪との対戦が増えた今年の3月からドイツ代表は勝ちきれない試合が続いている。直近のイタリア戦こそ4-2の快勝を収めたが、その前の4試合では全て1-1と得点力不足が露呈していた。

 勝ちきれなかったとはいえ、この1-1は決定的なチャンスを作るなど内容があった上での引き分けだったのだが、0-1で敗戦した今節はチャンスすらまともに作れず。特に前半のパフォーマンスは酷く、ダヴィド・ラウムのクロスをトーマス・ミュラーが頭で合わせた以外のシーンでゴールを脅かすシーンは一つもなかった。

 後半こそ4バックから3バックにシステムを変更して相手陣内に押し込む展開が増えたが、それでも無敗が続いていたフリック体制においてワーストの試合だったことは間違いない。

 なぜワールドカップを直前にして現監督政権における最悪のパフォーマンスに終わってしまったのだろうか。

●軒並み調子を落とす主力選手たち

 第一に今のドイツ代表には調子が悪い選手が多すぎる。今夏に新天地を求めたアントニオ・リュディガー、ニクラス・ジューレ、ダヴィド・ラウム、ティモ・ヴェルナーが今節のスタメンに名を連ねたが、リュディガーを除く3選手はかなり苦しんでいる印象だ。

 ジューレは負傷の影響もあり、所属するドルトムントではニコ・シュロッターベックとマッツ・フンメルスに次ぐ3番手の立ち位置となっており、ドイツ国内では逆に高いパフォーマンスを披露するフンメルスの代表復帰を望む声が日に日に大きくなっている。

 ラウムもここまでわずか1アシストと新天地にフィットしきれておらず、ヴェルナーは復帰初戦でゴールネットを揺らして以降、4部クラブが相手だったDFBポカールを除き、ブンデスリーガとUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では502分間ゴールから遠ざかっている。

 そしてドイツ代表にとって最大の痛手が、リーグ戦で4戦勝ちなしのバイエルン・ミュンヘン勢の絶不調だ。特にセルジュ・ニャブリはこの試合でも前半からイージーなボールロストを繰り返し、前半のみでの交代が妥当な低調なパフォーマンスに終始した。

 レロイ・サネも1対1のデュエルやドリブル突破での存在感はあったが、前線で違いを作ることができず。好調だったジャマル・ムシアラは先日のトレーニング中にトーマス・ミュラーと交錯して軽傷を負っていたため、ベンチからのスタートとなっていた。

 スタメンのうちの約半分の選手が本調子ではないという状況において、結果を出すのはどの指揮官でも難しいだろう。

●今のドイツ代表に足りないものとは?

 不調のニャブリを下げて後半開始からティロ・ケーラーを投入し、3バックへと変更してボールを支配しようとした采配は間違いなくチームを上向きにさせた。

 それはスタッツにも表れており、ポゼッション率は67%から78%へ、シュート数も3本から7本へと大幅に改善されている。それでも得点を奪えなかったのは、相手陣内に押し込んだ状況で必要となってくる「典型的なストライカー」がいないことが要因の一つだろう。

 かつてのドイツ代表にはミロスラフ・クローゼが最前線に君臨し、フリックがかつて率いたバイエルンにはロベルト・レヴァンドフスキという絶対的なストライカーがいた。しかし、今のドイツ代表、そしてブンデスリーガを見渡しても彼らのようにボックス内で得点を量産できるドイツ人はいない。

 この試合で最前線に入ったヴェルナーは相手の背後にスペースがあれば輝くが、後半のように背後のスペースが消されてしまっては持ち味を発揮できない。

 ネーションズリーグでドイツ、イタリア、イングランドと同じグループで首位を走るハンガリー代表の強さは伊達ではなく、5-4-1の5-4のブロックで縦にも横にも早くスライドをして相手にスペースを与えない守備はこの試合でも際立っていた。こうした堅守の相手にはやはり前述したようなボックス内でクロスに合わせることができるストライカーが必要だということを再認識させられた。

 いないタイプの選手のこと言っても仕方がないため、現状のメンバーの良さをどのように生かせるかを考えると、今のドイツ代表は前線にスピードがある選手が多くカウンターが強みとなる。6月のイタリア戦では相手を自陣に引き込んでからの疑似カウンターが見事に決まっていたが、今節に関しては低調な前半にセットプレーで先制されたことが原因で、点を奪いに相手が前に出てこなかった。こうしたチーム状況においては「先制点」が勝敗の鍵を握るだろう。

 フリック監督は「ワールドカップで負けるより、今負けたほうがいい」と次に向けて切り替えているが、残りの限られた時間でどれだけチームを立て直すことができるだろうか。その答えはちょうど2ヶ月後の11月23日に行われるワールドカップの初戦、”日本代表”との一戦で明らかになる。(文:安洋一郎)