●辛くも勝利したバルセロナ

リーガ・エスパニョーラ第12節、バレンシア対バルセロナが現地時間29日に行われ、0-1でバルセロナが勝利した。バルセロナはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)敗退を喫したショックを払拭したが、ロベルト・レバンドフスキへの依存は解消されず。シャビ・バルサのエース依存は、どのような未来を招くのだろうか。(文:本田千尋)
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 “依存体質”は始まっているのだろうか。

 現地時間10月29日に行われたリーガ・エスパニョーラ第12節。FCバルセロナは敵地でFCバレンシアに1-0で勝利した。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループ敗退のショックを引きずっているのか、このバレンシア戦のバルセロナは、パスワークや連動性においてチームとして機能したわけではなかった。

 個々の選手の力量では相手を上回ったので、一見すると試合を優勢に進めたが、フィニッシュワークの機能性と精度を欠く。そして試合は0-0のまま後半のアディショナルタイムに突入――ドロー決着も十分あり得た試合展開に終止符を打ったのは、ロベルト・レバンドフスキだった。

 93分。ペドリからのパスを右のハーフスペースで受けたハフィーニャが、ファーにふわりとクロスを入れる。そこに飛び込んだのがレバンドフスキ。シャビ・バルサのエースFWは、ボールを右のアウトで辛うじて押し込み、決勝点を奪う――。リーガの優勝争いに踏みとどまるために、バレンシアの地で貴重な勝ち点3を手にした。

 しかし、この1-0の勝利を、すんなり喜んでもいいのだろうか。

●バルセロナの劇的な勝利を喜べない理由

 もちろん3日前にCLのグループ敗退が決定し、かつカンプ・ノウでバイエルンに粉砕されるという憂き目にあいながら、チームとして崩壊しなかっただけでも、バルセロナが並のチームではないことの証である。もちろんバレンシアは、選手個々のクオリティやプレスの強度という点でバイエルンに劣るし、その比較的緩いプレッシャーの中で、例えばセルヒオ・ブスケッツやペドリはかなり余裕をもってプレーすることができた。

 仮にCLバイエルン戦の直後の試合がレアル・マドリード戦だったら、目も当てられない状況になっていた可能性もある。だが、CLもしくはELといった欧州の大会に参戦してないバレンシアであれば、チーム状態が悪くてもバルセロナであれば確かに勝ち切ることのできる相手ではあるし、むしろ勝ち切らなくてはならない相手、と言った方が適切だろう。

 そもそもFCバルセロナの本来の立ち位置を考えれば、“CL敗退にもかかわらずチームとして崩壊せずに中堅クラブに勝利したこと”を評価するのは、長きにわたってカンプ・ノウに詰めかけてバルセロナを愛するクレたちからすれば、屈辱的なのかもしれない――ふざけるな、勝って当たり前だ、と。もちろんこれは極端な考え方ではあるが、いずれにせよバレンシアに辛うじて勝っただけで、何日も喜びを爆発させるクレはいないだろう。

 そして、すんなり喜べない他ならぬ理由は、得点を決めたのが“レバンドフスキ”だからだ。

●誰もが認めるレバンドフスキの活躍

 期待の新戦力として獲得したFWがゴールを量産しているのだから、一体何が問題なのか、と思われるかもしれない。このバレンシア戦でゴールを決めたことで、ラ・リーガでは12節を終えた段階で、“レヴィ”は既に13ゴールを記録した。1試合につき1ゴール以上のペースで決めており、チームの総得点29のうち実に半数近くを、ミュンヘンからやってきたポーランド代表FWが決めている、ということになる。

 現状、レバンドフスキの獲得は大当たりだし、名実ともにバルサのエースFWであることは、カタルーニャに住む誰もが認めるところだろう。

 しかし、ここに“落とし穴”が潜んでいるのではないか。これだけレバンドフスキが得点源として確立されてしまうと、困った時はレヴィに預けてしまおう、というサッカーになりかねない。本来のバルセロナが持つバルセロナである所以の機能美や連動性はさておき、やがてサイドに散らしてウイングからのクロスの単調な放り込みに終始してしまう可能性も秘めている。

 実際、このバレンシア戦では、個々の選手は緩いプレッシャーの中でプレーできたが、例えばレアル・マドリードが得意とするボックス近辺でのワンツーやダイレクトプレーを活かした連動した攻撃は見られなかった。

 そういった攻撃における連係面は、今回のバレンシア戦に限らず、そもそもシャビ・バルサではまだ確立されていない点だ。そのような課題を放置したままでいると、皮肉なことにレバンドフスキにボールが集まり、ポーランド代表FWはさらにゴールを量産し、ますます“レヴィ頼みのサッカー”になってしまうだろう。

●依存の先に待ち受ける未来とは?

 “ある選手”に依存したサッカーを確立したチームが、その“ある選手”が去った後にどうなるかは、例えばクリスティアーノ・ロナウドが去った後のユベントスを観れば明らか。かつてロナウドが攻撃の急先鋒としてイタリアを席捲したユーベは、昨季は無冠に終わり、今季はCLのグループで敗退した。もちろんユベントスのCL敗退は、単なる1選手の不在の問題に留まらないが、それでもかつてのロナウドがいるのといないのとでは、攻撃面や特に勝負強さと言う点で、チーム状態に明確な差があるだろう。

 つまり、このまま行くと、バルサもユーベのようになってしまうのではないか。この先、レヴィに依存し切ったカタルーニャの名門は、そのレバンドフスキが去った後で、ロナウドが去った後のユベントスのようになってしまう可能性を秘めている。

 これは考え過ぎなのかもしれない。しかし、バレンシア戦の後半アディショナルタイムに勝ち越し弾を決め切るという、レバンドフスキが勝負強さを発揮する姿は、かつてユベントスで躍動したロナウドの姿を彷彿とさせるのである。

(文:本田千尋)

【了】