●アーセナル、6試合ぶりの複数得点で快勝

 プレミアリーグ第14節、アーセナル対ノッティンガム・フォレストが現地時間30日に行われ、5-0でホームチームが勝利している。アーセナルは直近の5試合で複数得点なしと調子が下降気味だったが、その悪い流れを断ち切ったという意味では貴重な勝利となった。しかし、手放しに勝利を喜べるわけではない。その理由とは?(文:安洋一郎)

 開幕11試合連続の複数得点から一転、アーセナルは5試合連続で1ゴール以下と明らかに調子を落としていた。ミッドウィークに開催されたPSVとのUEFAヨーロッパリーグ(EL)では、ついに今季初の無得点に終わり、内容も0-2のスコア以上での完敗と不穏な空気が流れていた。

 そういった意味では前節終了時点でプレミアリーグの首位に立っていたアーセナルからすると、最下位のノッティンガム・フォレストとの対戦となった今節は、悪い流れを断ち切るにはうってつけの一戦だった。

 5分にブカヨ・サカのクロスにガブリエウ・マルティネッリがヘディングで合わせて先制をすると、5試合連続で得点がなかった苦手な後半に4ゴールを追加して5-0と突き放した。守備でもガブリエウ・マガリャンイスの致命的なミスからシュートを許した場面もあったが、ボックス内にすらあまり侵入させない安定した守りでクリーンシートを記録した。

 これだけの事実を並べると「最高の勝利」だったと言いたいところだが、所々で不安要素が散見されている。

●ネルソンにサカの代役は務まるのか

一つ目の不安要素はブカヨ・サカの負傷交代である。前半途中に足首を痛めてピッチに座り込んだが、一度は出場を継続。だが、結果的に27分に負傷交代となり、ベンチへと下がった。

試合後にミケル・アルテタ監督が残したコメントによるとサカは打撲による負傷交代だったそうで、長い離脱期間が必要となる筋肉系のトラブルでなかったことは、不幸中の幸いと言えるだろう。

サカの代わりに途中出場を果たしたのは、同じくアーセナルユース出身のリース・ネルソンだった。昨季の開幕戦以来のプレミアリーグ出場となったこの男は、後半開始早々にゴールネットを揺らすと、その後も1得点1アシストと5ゴール中3ゴールに関与する大車輪の活躍をみせた。

 エミール・スミス=ロウの負傷離脱、エディ・エンケティアの不調などアーセナルは途中出場からチームにプラスを与えてくれる攻撃的なオプションが少ないため、ネルソンがプレミアリーグの舞台で活躍してくれたことはチームにとっては好材料と言えるだろう。

しかし、ネルソンがサカの穴を埋められるとは限らない。仮にサカが次節以降、複数の試合を欠場するとなると、アルテタ監督は結果を残したネルソンに出番を与えるだろうが、そこで活躍できる保証はない。というのも、ネルソンは今節のようにゴールに関与する活躍をすればフィーチャーされる選手だが、それ以外での貢献度の少なさがこれまでも度々指摘されている。

抜群のテクニックの持ち主で、上手い選手が多いアーセナルの中でもトップクラスの技術を持ち合わせていることは間違いないが、周りの選手を使うことがあまり得意ではなく、自分の調子が悪いときや相手に封じられてしまったときの選択肢が少ない。そのため良いときと悪いときの差がハッキリとしており、どんな時でも安定して結果を残せるサカとは対照的な選手だ。

 辛辣かもしれないが、ネルソンで乗り切れるほどプレミアリーグやELは甘くはない。

●454分間ノーゴールが続くエース

 そして最も不安なのがガブリエウ・ジェズスである。今季からアーセナルの9番を背負う新エースはプレミアリーグの10節までに5ゴール4アシストと多くの得点に関与し、絶好調だったクラブを牽引していた。

 ところが11節からは沈黙が続き、今節終了時点で454分間も得点から遠ざかっている。同期間にアーセナルは得点力不足に悩まされており、ジェズスの不調がそのまま結果に直結している。

 だが、ジェズスは調子が悪いなりにも前線で起点となるなどして、チームに貢献できるタイプの選手だ。今節も得点こそ奪えなかったが、2アシストを記録。そしてタックル成功数もチーム単独1位の3回と、守備面での貢献度も高かった(データは『Sofa Score』を参照)。

 それでも気になったのが決定機の逃し方だ。この試合で同選手はチーム最多の7本のシュートを記録、そのうちの3本が枠内を捉えたが、最後までネットを揺らすことはなかった。

 ジェズスにとって、この試合における最大のチャンスは59分のシーンだろう。相手のパスミスをマルティン・ウーデゴールがかっさらい、ジェズスが完璧なタイミングでペナルティエリア内に侵入してシュートを放つも相手GKディーン・ヘンダーソンの正面にシュートが飛んでしまった。ゴールを決める以外は完璧だったこのシーンは、前所属のマンチェスター・シティで得点という結果が出ないときの彼の姿と重なった。

「チャンスには絡めている」と、ジェズスの今節の活躍はポジティブにも捉えられるが、調子を落としているストライカーへの最高の劇薬は「ゴール」であり、1ゴールでも決めてしまえば、誰にも手が終えなかった今季開幕直後のジェズスが帰ってくるだろう。それがいつになるのか次第で、カタールワールドカップ前までの残り4試合の結果が変わってきそうだ。

(文:安洋一郎)