●グループAを首位通過でEL決勝トーナメント進出が決定

 UEFAヨーロッパリーグ(EL)グループリーグ第6節、アーセナル対チューリッヒが現地時間3日に行われ、1-0でホームチームが勝利している。グループAを首位通過するためには勝利がマストだった試合でミッションを遂行したアーセナル。しかし、その内容は後半から流れを相手に渡すなど褒められるものではなかった。(文:安洋一郎)

 先週行われたPSV戦で勝ち点を取ればUEFAヨーロッパリーグ(EL)グループAの首位通過が決まっていたアーセナルだったが、0-2でまさかの完敗を喫した。これで両チームの勝ち点差は2となり、最終節を終えた時点で勝ち点が並んだ場合、直接対決の結果が順位に影響するため、最終節に1位アーセナルが引き分け以下で終わり、2位PSVが勝利すると首位が入れ替わることが確定していた。

 ELは2位通過だった場合、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)でグループステージ3位のチームと決勝トーナメント進出をかけたプレーオフを戦う必要が生じるため、確実にベスト16に残るには今節チューリッヒ戦の勝利がマストだった。

 チューリッヒも勝利すればUEFAカンファレンスリーグの決勝トーナメントに進出できる可能性を残すなど、両チームが勝利を欲していたこの一戦で、先に優位に立ったのはアーセナルだった。

 17分、ペナルティエリア手前にこぼれた球を左SBのキーラン・ティアニーが左足を一閃。サイドで上下動を繰り返すオーソドックスな左SBであるティアニーは、これまで今季のアーセナルの特徴であるSBが中央に絞る動きをあまり得意としていなかったが、日々の練習の成果が発揮されたことで、この場面では良いポジションを取ることができていた。

 結果的にティアニーのこのゴールが決勝点となり、1-0で勝利したアーセナルだったが、試合終盤に主導権を握っていたのはチューリッヒだった。

 無事グループAの首位通過を決めたとはいえ、なぜアーセナルは試合終盤に相手に流れを明け渡してしまったのだろうか。

●決定機を決めきれなかった2人のFW

 チューリッヒに流れが渡った一つ目の要因は、アーセナルが2点目を決められなかったことにある。17分という最高の時間に先制することができたアーセナルは、その後も主導権を握って攻めることができており、前半だけで12本のシュートを記録している。

 ところがティアニー以外の選手はゴールネットを揺らすことができなかった。

 この試合で最多となる4本のシュートを放ったのがエディ・エンケティア、続く3本のシュートを放ったのがガブリエウ・ジェズスである。しかし、この試合が終了した時点でエンケティアは403分間、ジェズスは517分間も得点から遠ざかるなど、直近は彼らの決定力不足が顕著になっている。

 両者ともにこの試合でも決定機逸が目立ち、特に47分にジェズスに訪れたGKとの1対1のシーンは何があっても決めきらなければいけなかった。先週末のプレミアリーグでも似たようなシーンで外すなど、このブラジル代表ストライカーにとって苦しい状況は続いている。

 アーセナルが決定機を逃したことで、試合は1-0のまま動いた。1点差と2点以上の差は追いかけるチューリッヒからすると全く異なる精神状態であり、「セットプレーなどのワンチャンスでも決めれば同点にできる」という心理の下でプレーすることができる。そのため試合終了のホイッスルが鳴るまで彼らは集中力高く攻め続け、試合を決めきれなかったアーセナルにとっては難しい展開となってしまった。

●イージーなボールロストを連発

 試合終盤にかけて試合の流れがチューリッヒへと渡った2つ目の要因は、アーセナルが自分たちで試合をコントロールできなかったことにある。

 前半に61%のポゼッション率を記録していたアーセナルは、先述した通り多くのシュートを放ち、自分たちが試合の主導権を握っていた。ところが後半になるとポゼッション率は50%まで低下し、67分には結果的にはオフサイドで取り消しとなったが、ゴールネットを揺らされるなど徐々にアウェイチームに押される展開となった。

 こうした状況でアーセナルの選手たちは、1点差という中でもリスクマネジメントを疎かにしたプレーを選択することが多く、69分に右SBのベン・ホワイトが相手選手の密集に向かってドリブルを仕掛けた結果、簡単にロストし、カウンターを食らいそうになった場面がその代表例だろうか。

 74分にエンケティアがオフサイドを取られたシーンも同様だろう。この場面ではエンケティアが裏にフリーで抜け出していたのにも関わらず、リース・ネルソンの球離れの悪さという悪癖が発動し、パスを出すタイミングを誤ってオフサイドとなった。

 このように状況判断ミスでボールを相手にプレゼントしてしまう場面が多く、こうした積み重ねが徐々に流れを相手に受け渡す要因となっていた。

 88分には途中出場の冨安健洋が筋肉系のトラブルで負傷交代となりベンチに下がるなど、 勝利して見事グループAの首位通過を決めたとはいえ、どこかモヤモヤが残る試合となった。相手も決して本調子とはいえず、ゴールを決めきる人が決めて、状況判断を誤ることがなければ、このような難しい試合になることはなかっただろう。

(文:安洋一郎)