●アーセナル、内容でもチェルシーに完勝

 プレミアリーグ第15節、チェルシー対アーセナルが現地時間6日に行われ、0-1でアウェイチームが勝利している。スコア的には両チームの差はないが、内容を見るとアーセナルの圧勝。チェルシーに全くと言って良いほど攻撃の形を作らせなかった。その理由とは?(文:安洋一郎)

【動画】チェルシー vs アーセナル ハイライト

 スタンフォード・ブリッジで行われたチェルシー対アーセナルのダービーマッチ。勝利したのはアウェイのアーセナルだった。

 試合のスコアは0-1と1点差であり、その1点もセットプレーによるものと、この試合を映像で観ていない人からすると両チームの差はあまり感じられないかもしれない。しかし、実際の試合内容はアウェイのアーセナルが圧倒していた。

 特にこの試合で顕著だったのがチェルシーの攻撃陣の不発ぶりだ。昨季途中までアーセナルで主将を務めたピエール=エメリク・オーバメヤンにも注目が集まった一戦だったが、チェルシーは試合を通じてわずか5本のシュートに留まった。
 
 これは単なる決定力不足ではなく、「シュートチャンスが得点に結びつく見込み」の指標であるゴール期待値がわずか「0.24」だったことからもわかるように、チャンスそのものを作ることができなかった。

 これを逆に捉えればアーセナルの守備が機能していたということになる。アウェイチームはどのようにしてチェルシーの攻撃を無効化させたのだろうか。

●アーセナルがチェルシーの攻撃を無効化できた理由

 この試合でアーセナルが明らかにチェルシーを上回っていたのが、プレスと走力の部分だ。仮にボールを失ったとしてもアーセナルの選手は前線、中盤とポジション関係なく即時奪還を目指して猛烈なカウンタープレスを掛けていた。

 これに対してチェルシーはかなり苦戦した。決勝点が生まれたコーナーキックのきっかけとなったのも、アーセナルカウンタープレスによるものだった。

 61分、チェルシーは最終ラインからチアゴ・シウバがビルドアップを展開しようと試みるも、受け手を見つけることができず、自らドリブルで運んだ。これに対しアーセナルのFWガブリエウ・ジェズスは猛烈なスプリントでシウバの背後からプレスを掛け、ボール奪取することに成功。ゴールネットこそ揺らせなかったが、その流れからシュートまで持ち込みコーナーキックを獲得。そして先述した通り、このコーナーキックから決勝点が生まれた。

 この一連の流れを筆頭にアーセナルのプレスは冴えわたっており、逆に攻略できなかったチェルシーは特に後半、イージーなボールロストを連発してカウンターを食らう場面が多かった。

 チェルシーからすると痛恨だったのは、マテオ・コバチッチを先発起用できなかったことだろう。相手選手に囲まれようが、抜群のテクニックとキープ力でボールを持ち運ぶことができるこのクロアチア代表MFは、これまで何度も相手のプレスを打開してきた。しかし、この試合では軽傷を負っていたため先発起用することができず、代わりにスタメン起用されていたルベン・ロフタス=チークのパフォーマンスも微妙だったため、彼の不在が大きく響いた結果となった。

●守護神の前に立ちはだかるもう一人の「壁」

 これまでアーセナルのプレスについて述べてきたが、チェルシーもこれに対して無策だったわけではない。しかし、マルティン・ウーデゴールらにジョルジーニョを消されてしまったのは痛恨だった。

 ウーデゴールは攻撃時に閃きのあるプレーでチャンスを生み出すのはもちろん、守備時でも高い走力を生かしたプレスバックでチームに貢献する選手だ。このウーデゴールの存在によってジョルジーニョは試合を通じて消されてしまった上に、ダブルボランチでコンビを組んだロフタス=チークも微妙と、チェルシーは中盤を介した攻撃ができなかった。

 中盤を消されたチェルシーはサイドや裏へのロングボールを使ったが、ここで壁として立ちはだかったのが、ウィリアン・サリバとガブリエウ・マガリャンイスのCBコンビだ。特に際立っていたのがサリバで、FW相手でも走り勝てる走力を生かした抜群のカバーリングは相手チームからすると脅威で、右サイド左サイド関係なしに背後へのボールを、個人の能力の高さで回収していた。

 この試合でもクリーンシートを記録したアーセナルは、第15節終了時点でニューカッスルと並び、リーグ最少の11失点しか喫していない。ガブリエウ・ジェズスが1ヶ月以上ゴールから遠ざかっていることもあり、直近のアーセナルで“圧勝”と呼べる試合は前節ノッティンガム・フォレスト戦ぐらいしか見当たらないが、それでも勝ち点を伸ばしてプレミアリーグ首位をキープしているのは守備陣の活躍あってこそだ。

 特に現在のサリバは守備時におけるスピードと強さが素晴らしく、多少判断を誤っても持ち前のスピードで“ミス”を“ミスじゃなく”してしまう。守護神アーロン・ラムズデールの前に、もう一つの壁であるウィリアン・サリバが君臨するアーセナル守備陣から得点を奪うことは容易ではないだろう。

(文:安洋一郎)