●好ゲームを予感も試合はまさかの…

 ラ・リーガ第14節。セビージャ対レアル・ソシエダが現地時間9日に行われ、1-2でアウェイチームが勝利した。日本代表MF久保建英はベンチスタートも、味方の負傷により10分から登場。2人少ない相手に対し積極的なプレーを披露し、攻撃を活性化させていた。(文:小澤祐作)

 残念ながら、面白みに欠ける試合となってしまった。

 立ち上がりの内容こそ、好ゲームを予感させるものだった。セビージャは4-3-3の守備陣形でレアル・ソシエダの中盤をうまく潰しながら、テンション高く前からボールを奪いに行く。これを受けたラ・レアルはショートパスで回避を試みるもらしくないパスミスを連発。たまらず前に蹴り出す場面も散見された。

 その一方、ソシエダは守備で奮闘。切り替えを素早く行うなど、流動的なセビージャにそれほど大きな決定機を作らせなかった。お互いにここ最近結果を残せておらず、この試合でなんとか流れを変えたいという意地を見せていた。

 そんな中で先に試合を動かしたのはソシエダだった。20分、それまで完全に消されていたマルティン・スビメンディが一瞬空き、前向きでボールを受けると、ミケル・メリーノに縦パスを送る。そしてメリーノからアレクサンダー・セルロートにラストパスが渡り、大型FWがチップキックでゴールネットを揺らした。劣勢に追い込まれるも、粘り強く耐え、ワンチャンスを仕留める。今季のソシエダを象徴するような一発だった。

 試合が“壊れた”のはこの後のこと。28分にイバン・ラキティッチが、34分にタンギ・ニアンズがそれぞれレッドカードを貰ったのだ。そしてニアンズ退場のわずか2分後、ソシエダはブライス・メンデスの得点でリードを広げている。結果論にはなるが、この時点で勝負はあったと言えるだろう。

 セビージャは前半終了間際にラファ・ミルが1点を返したが、やはり9人対11人ではどうしても前に出られない。後半は、自陣深くに引くセビージャとリスクを冒さずボールを動かすソシエダという、立ち上がりとは真反対の消極的な展開となってしまった。ちなみに後半、ソシエダの支配率は80%以上だった。

 観る側からすると物足りない一戦となったが、ソシエダからすると、3戦未勝利の中、アウェイで危なげなく勝利を奪えたのは大きい。これで暫定ながら順位を3位まで浮上させた。

●久保建英の復帰戦のパフォーマンスは?

 そんなセビージャ戦で、肩の脱臼のためしばらく休養が続いていた久保建英は久しぶりにピッチに立っている。前節のバレンシア戦ですでにベンチ入りはしていたものの、チームが数的不利となってしまったため展開的に出番を得ることは難しく、結果としてW杯前最後のリーグ戦が復帰戦になった。

 久保はこの日もベンチスタートだったが、カルロス・フェルナンデスの負傷により急遽10分からピッチに立っている。セビージャの良い守備を前に投入後しばらくはなかなかボールに触れられず、ボールが来ても味方との呼吸がわずかに遅れオフサイドを再三取られるなど、ゲームへの入り方は少し心配だった。

 しかし、セビージャに退場者が出た後のプレーは際立っていた。久保は主に左サイドに流れてアクションを起こすなど、自陣深くに引いたセビージャのブロックを広げさせるための役割を担っていた。

 結果としてゴールやアシストという目に見える数字は残せなかった久保だが、悲観すべきではない。チャンスには絡んでおり、それらの数字をさらに積み上げる可能性も感じさせた。

 最も悔やまれるのは前半アディショナルタイムのことだ。久保が敵陣深くでヘスス・ナバスからボールを奪うと、ボックス内に侵入。タメを作っている間にダビド・シルバがニアサイドへ飛び込んだことでセルロートが完全にフリーとなり、そこを見逃さなかった久保からノルウェー人FWに決定的なパスが渡った。しかし、セルロートの放ったシュートは弱々しく、GKヤシン・ブヌの手の中へ。アシストのビッグチャンスだったが、結果は残念なものとなった。

 前半、久保はシュート数0本に終わったが、後半は積極的に狙った。70分にはボックス外から強烈なミドルシュート、75分にはカットインから右足で際どいシュートを放った。後半の久保によるフィニッシュは4本。これはチーム最多の数字である。

 もちろんセビージャが9人になった影響がないとは言えないが、復帰戦のパフォーマンスとしては完璧に近い。スペイン紙『エル・デスマルケ』は日本人レフティーにチーム最高評価を与えたようだ。久保が欠場した公式戦3試合でソシエダは未勝利に終わるも、久保が復帰した試合でいきなり勝利したという事実が、ソシエダにおける久保の重要性を物語っているのかもしれない。

●W杯でのプレーに影響はなし?

 時折肩を気にする仕草はあったため、万全ではなかったのだろう。接触する怖さもあったかもしれない。それでもプレーのキレなどに不安を感じさせなかったのは、さすがといったところ。最後の最後で長時間プレーできたのは、選手本人にとってメリットが大きいだろう。

 ソシエダは13日にコパ・デル・レイ1回戦のカサレガス(6部)戦を控えている。前半早々に負傷交代したC・フェルナンデスは長期離脱の可能性があり、シルバは足に再び違和感を覚え、スビメンディも戦列離脱とチームの台所事情は厳しいが、それでも久保に出番が回ってくることはなさそうだ。

 というのも、イマノル・アルグアシル監督は久保について「W杯を視野に入れ、万が一、手が必要な場合に備えベンチに置いておきたかった」とセビージャ戦後に話していた。同指揮官が6部を相手に無理をさせることは考えにくい。

 ソシエダでの活動は一旦終了と言っていいかもしれない。久保はここから、気持ちをW杯へと切り替えて母国のために戦う。

(文:小澤祐作)