●首位アーセナル、最下位ウルブスに苦戦

プレミアリーグ第16節、ウォルバーハンプトン対アーセナルが現地時間12日に行われ、0-2でアウェイチームが勝利している。一言でこの試合を言い表すと最下位vs首位の試合なのだが、首位アーセナルはやや苦戦を強いられた。なぜ最下位のチーム相手に苦しみ、それでも最後は勝利を掴めたのだろうか。(文:安洋一郎)

 ミッドウィークに行われたリーグカップでブライトンに敗れたアーセナルだが、チームの調子が悪いから負けたのではなく、今季最もターンオーバーをしたことが敗戦の最大の要因だった。

 選手層が薄いことがアーセナルの致命的な課題であることは変わりないが、ベストメンバーが揃えば強いことも変わりない事実である。そんな首位アーセナルの今節の対戦相手は最下位ウォルバーハンプトン(以下ウルブス)と、対照的なシーズンを送っている両チーム同士が顔を合わせた。

 結果的にアーセナルが2-0で勝利したとはいえ、前半はかなり苦戦を強いられた。下馬評では当然ながら首位チームの方が優位かと思われたが、蓋を開けると前半はウルブスの方が自分たちのやりたいサッカーができていた。逆にアーセナルは失点こそしなかったが、先制点を決められてもおかしくはない展開となり、決勝ゴールを決めたマルティン・ウーデゴールも「前半は難しかった」と苦戦を認めた。

なぜ首位アーセナルは最下位ウルブス相手に苦しい前半を余儀なくされたのだろうか。

●しっかりとしたゲームプランを持っていたウルブス

 今節のウルブスはシンプルで、非常にわかりやすいゲームプランを持っていた。そのプランとは、5-3-2のシステムを採用し、5バックと中盤の3枚で守備をして、ツートップに入ったアダマ・トラオレとゴンサロ・ゲデスの2人の快速FWにボールを送ってカウンターを狙うというものだった。

 アーセナルとしても相手が初めからこのやり方で戦うことはわかっていただろう。しかし、それ以上にウルブスが「ボールを奪ったら前に、前に」とポゼッション関係なく、完全にカウンターに振り切っていたため何度かピンチを迎えた。

 それでもアーセナルがウルブス相手に得点を奪うことができていれば何の問題もなかったのだが、前半は1本も枠内シュートが打てず、ガブリエウ・ジェズスがオフサイドでネットを揺らしたシーン以外に決定機と呼べるものはなかった。

 アーセナルが攻めきれなかった要因には、ウルブスの20歳の若武者ウーゴ・ブエノがブカヨ・サカとの1対1を止めていたことがその一つに挙げられる。この試合における両者の地上戦勝利数は対照的で、ブエノが10戦8勝と80%の勝率を記録したのに対し、サカは11戦2勝と苦戦を強いられていた。

 普段であればサカのドリブル突破から局面を打開してチャンスを作ることができたが、今節ではそこが封じられたため右サイドから効果的に攻めることができず、思ったような攻撃の形を作ることができなかった。

●後半にアーセナルが試合を動かせた要因

 それでも後半に2点を奪って勝利したのは「さすが首位」という戦いぶりだった。

 この試合で決まった2ゴールはどちらも左サイドから崩したものだった。先述した通り、この日のサカはなかなか突破することができず苦しんだが、代わりに左サイドからの攻撃が効果的だった。
 先制点の場面では、ファビオ・ヴィエイラが左に流れたガブリエウ・ジェズスを追い越し、相手の背後を突く形でハーフスペース付近を駆け上がってパスを引き出すと、最後はそこから中に折り返してゴールを演出した。

 ウーデゴールとヴィエイラが併用されたUEFAヨーロッパリーグ(EL)ボデ/グリムトとの試合では、左のインサイドハーフに不慣れのヴィエイラが試合から終始消えていたが、今節は特に後半から存在感を発揮。前半に体調不良でピッチを去ったグラニト・ジャカを彷彿とさせるハーフスペースへの駆け上がりを見せて得点に関与した。

 2点目もガブリエウ・マルティネッリとオレクサンドル・ジンチェンコの左WGと左SBの連係から生まれており、この試合のアーセナルの勝因は「左サイドの攻略」だった。またジェズスが得点を決めきれない中でも局面によって数的優位を作るためにサイドへと流れてくるのは非常に有効であり、それによって相手の守備陣形はパニックを起こして後手に回らざる終えなかった。

 同日に行われた一戦でマンチェスター・シティがブレントフォードに敗れたため、アーセナルは2位と勝ち点5差で首位を独走することに。ライバルと勝ち点を離すことができた上に、今季チームの最重要選手と言っても過言ではないジャカが不在の中でもヴィエイラが似たような動きから点に絡めたというのは、今シーズンを戦い抜く上で良い教材となったのではないだろうか。
(文:安洋一郎)
【了】