●「現代サッカーにおいてボール保持率はあまり関係がない」

サッカー日本代表は、23日に控えたFIFAワールドカップ(W杯)グループステージ初戦に向けて準備を進めている。ドイツ代表の選手たちが普段プレーするブンデスリーガで輝かしい活躍を見せる鎌田大地は、「自分たちにもチャンスがある」と話し、勝利のイメージを膨らませる。(取材・文:元川悦子【カタール】)
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 20日のカタールワールドカップ(W杯)開幕戦でエクアドル代表が開催国・カタール代表を2-0で撃破し、熱戦の火ぶたが切られた。日本代表の命運を左右する大一番・ドイツ代表戦も23日に迫ってきた。

 20日も冒頭15分以外は非公開で戦術確認を行った森保ジャパンだが、左ふくらはぎに違和感を抱える守田英正は全体練習に不参加だった。

 となれば、ドイツ代表戦欠場は確実。主軸ボランチの1人を欠いた状態でヨシュア・キミッヒ、レオン・ゴレツカらバイエルン勢主体の中盤を封じなければならない。これは難題に他ならないが、日本代表としては恐れずぶつかるしかない。

 トップ下で先発濃厚の鎌田大地も、守備の比重が高まりそうだ。

「僕らは彼らをフリーでプレーさせず、その先の自分たちが狙っているところでボールを取る守備を進めている。まずは彼らを自由にさせないことが大事かなと思います」と背番号15はこれまで以上に守りの意識を高めて、重要な初戦に挑む構えだ。

 多くの人が想定する通り、ボール支配率ではタレント軍団のドイツ代表に上回られるだろう。ただ、鎌田は「現代サッカーにおいてボール保持率はあまり関係がない」と断言。守勢に回る時間が長かったとしても、一発のショートカウンターやセットプレーで仕留められればいいというシンプルな考えを持っているという。

●ドイツ代表に「つけ入る隙は全然ある」

 確かに、ドイツ代表が16日に戦ったオマーン代表戦を見ても、ハイラインの守備陣の背後に何度も飛び出され、決定機を作られていた。オマーン代表が精度を欠き、結果的にニクラス・フュルクルクの一発でドイツ代表が1-0で勝ち切ったものの、最終ラインの裏が不安定なのは事実。守備の要であるアントニオ・リュディガーがケガから復帰したばかりで万全とは言い切れないところがあるし、ニクラス・ジューレらDF陣もスピード対応に難がある。神出鬼没な動きを見せる鎌田にとって、彼らのところのが「狙い目」なのは、間違いないと言っていいだろう。

「バイエルンと今のドイツ代表なら間違いなくバイエルンの方が強い。つけ入る隙は全然ある。実際、試合を見ていても、相手が強豪国とだけに限らず、僕たちみたいにコンパクトに守っているチームには苦戦している印象がある。自分たちにもチャンスがあるのかなと思います」と鎌田が自信をのぞかせるのも、確固たる根拠があるのだ。

 こうした発言に象徴される通り、彼は以前からドイツ代表を格上と見るのではなく、同じ目線でフラットに捉え、「勝てない相手ではない」と言い続けている。そういうマインドは堂安律や久保建英ら若い世代に伝播し、「今の日本はドイツやスペインと互角の勝負ができる」というポジティブシンキングにつながっている。

 日本代表のマインドの前向きな変化を、ベテランGK川島永嗣も好意的に見ている様子だ。

●あっさり受け流す強心臓

「2019年のコパ・アメリカ(南米選手権)に行った時もそうでしたけど、若い選手は物怖じせずやっていた印象がある。自分たちの世代と違って、強い相手だからどういうという感覚ではないのかなと。こういうグループだからこそ、『自分たちがやってやる』というくらいの気持ちじゃないと勝ち上がっていけないと思います」

 4度目となるW杯出場の39歳が指摘した思考の変化の中心に鎌田がいる。昨季UEFAヨーロッパリーグ(EL)制覇、今季UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント進出と最高の舞台に上り詰め、自身も今季公式戦12得点3アシストという目覚ましい数字を残している男の発言には、やはり説得力があるのだ。

「彼は素晴らしい選手。日本にとって重要で、我々にとって危険な選手。FWの後方やゴール前でもプレーでき、スペースに侵入する鋭さ、高度な得点力を兼ね備えている」と名手GKマヌエル・ノイアーに言わしめたのも、こうした実績があるからこそだ。

 当の本人は「そういう質問を受けたら、彼らも誰か言わないとダメだから。僕自身、真摯に受け止めているというよりも『ああ、そうなんだ』くらいの感じですね」とあっさり受け流すあたりは実に鎌田らしい。

 かつての日本代表のエースである中田英寿、本田圭佑に通じる強心臓のアタッカーは、何か大仕事をやってのけそうな予感を漂わせている。

●鎌田大地が持つ老獪さ

 実際、日本代表がゴールを奪うとしたら、2列目の飛び出しが一番の近道。9月のアメリカ合衆国代表戦も守田から伊東純也を経て、鎌田が仕留めている。ああいったショートカウンターが出れば、今の鎌田は高い確率で決められる力がある。フィニッシュの冷静さは折り紙付きと言っていい。そういった頼もしい人材が今の森保ジャパンにいるのは本当に朗報。どんな厳しいマークを受けようと、技術と創造性、賢さ、老獪さを併せ持つ彼ならやってくれるはず。期待してよさそうだ。

「ドイツに勝つことの意味ですか? もちろん大事ですよね。勝ち点3はほしいし。それこそ自分はよく言ってますけど、日本人の価値をこの大会で高めないとダメ。優勝候補のチームだったり、いいチームに勝つことによって、世界からの自分たちの見られ方を一気に変えられる。ドイツに勝てたら大きく変化する。自分たちの価値を高める上でも、この一戦は大事なのかなと思います」

 鎌田の言うように、本当に日本がW杯ベスト8進出を成し遂げようと思うなら、ドイツ代表やスペイン代表、ベルギー代表といった世界トップ10に入るような国を複数倒さなければならない。ドイツというのは本当にいい試金石なのだ。

 相手の全てを知り尽くす鎌田が中心となって、高い位置でボールを奪い、ドイツDF陣やボランチの空いたスペースに侵入し、数少ないチャンスを決める…。そういったしたたかな戦い方ができればまさに理想的。背番号15には「危険な男」という評価通りの一挙手一投足を見せてもらうしかない。

(取材・文:元川悦子【カタール】)

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