●死力を尽くすもベスト16に届かなかったドイツ代表

FIFAワールドカップカタール2022、グループE最終節コスタリカ代表対ドイツ代表が現地時間1日に行われ、4-2でドイツ代表が勝利している。最終的には勝利をしたものの、この試合でもドイツ代表は2失点を喫して難しい展開となった。なぜドイツ代表は世界的なGKノイアーがいるのにも関わらず、必ず失点をするのだろうか。(文:安洋一郎)

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 日本代表対スペイン代表の裏では、さらに壮絶な試合が行われていた。

 コスタリカ代表とドイツ代表は、どちらも勝利をすれば決勝トーナメント進出の可能性があり、両軍ともに死力を尽くした戦いをみせた。

 試合は目まぐるしく動いた。前半早々にドイツ代表が先制するも、後半にコスタリカ代表が2点を取って試合をひっくり返す。このまま試合終了すればコスタリカ代表が大逆転で決勝トーナメント進出という展開から、最後はドイツ代表が意地の3ゴールを叩き込んで4-2で勝利した。

 しかし、サッカーの神様はドイツ代表に味方しなかった。同時間帯に行われた日本代表対スペイン代表の一戦は、日本代表が2-1で勝利。その結果、日本代表がグループEの首位に立ち、敗れたスペイン代表はドイツ代表と勝ち点4で並ぶも、得失点差で上回って2位に留まった。

 その結果、ドイツ代表は3位となり、2大会連続でのグループステージ敗退が確定した。ドイツ代表としては、裏のスペイン代表が負けなければ決勝トーナメント進出が確定していたため、現実的にコスタリカ代表戦で自分たちにできることはした。それでも突破は叶わなかったのだ。

 2大会連続でのグループステージ敗退という屈辱を味わったドイツ代表は、今大会で何が足りなかったのだろうか。コスタリカ代表戦でもグループEを突破できなかった要因が垣間見えた。

●はっきりしているドイツ代表の長所と短所

 ドイツ代表の長所と短所ははっきりしている。それはコスタリカ代表戦でも明らかになった。

 まずは長所から。ハンジ・フリック監督率いるチームらしく、前線から組織的なプレスをかけて相手陣内でプレーし続ける「攻撃的な守備」が現ドイツ代表の持ち味である。70%ボールを保持したコスタリカ代表戦の前半はほぼ全ての時間帯を相手陣内に押し込み続け、被シュートもわずか1本に抑えていた。

 そしてこの試合の先制点の場面のように、ボールを奪ってからも中央でタメを作り、最後は大外を駆け上がったダヴィド・ラウムが高精度のクロスを入れて中で合わせる「中央で作って最後は大外」という形は、ドイツ代表が最も得意としている攻撃の形だ。

 こうした持ち味が発揮できた前半とは対照的に後半はコスタリカ代表の攻撃に苦しんだ。その要因は中盤でのプレスが突破された後の守備の脆さにある。ドイツ代表は「相手陣内での攻撃的な守備」は得意でも「自陣で守り切る守備」は苦手なのだ。

●ドイツ代表が必ず失点を喫する理由

 バイエルン・ミュンヘンの監督時代からフリック監督は超攻撃的なサッカーを展開している。2019/20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝バルセロナ戦での衝撃の8-2の試合を覚えている方も多いのではないだろうか。

 しかし、これだけ大勝した試合でもフリックのチームは失点をしている。それはドイツ代表でも同様だ。2022年にドイツ代表はワールドカップを含めて12試合を戦っているが、そのうち無失点に抑えることができたのはイスラエル代表戦とオマーン代表戦の2試合しかない。他の10試合で失点を喫している。

 これにはフリック監督が攻め勝つというサッカーを志向していることに要因がある。先述した通り「攻撃的な守備」で相手陣内に攻め入って、大量得点で試合に勝利することを目指している。1失点、2失点しようが攻め勝つ超攻撃的サッカーなのだ。

 ドイツ代表でもバイエルン・ミュンヘン時代同様に攻撃の形を作ることはできている。しかし、バイエルン・ミュンヘン時代にいたポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキ級のストライカーがいないこともあり、得点力不足に陥っている。

 今大会でも決定力不足は顕著であり、3試合全てで実際の得点数が「あるシュートチャンスが得点に結びつく指標」である「ゴール期待値」を下回った。その中でも日本代表戦とコスタリカ代表戦では実際の得点数とゴール期待値が2点以上の乖離がある。

 点が決まらなければ、このサッカーで勝ちきることは難しい。その代表例がワールドカップ初戦の日本代表戦だろう。前半にPKで先制するも追加点のチャンスを逃し続け、後半に逆転をされてしまった。

 コスタリカ代表戦でも高い位置を取るサイドバックの背後へのロングボールやサイドチェンジで突破を許しており、かなり厳しい戦いを余儀なくされた。被カウンター時の守備対応も甘く、58分と70分に失点して、一時は逆転を許した。

 これは今大会に始まったことではない。2022年に入ってからずっと同じような形でドイツ代表は勝ちきることができず、引き分け、もしくは敗れることが多発していた。この課題を克服できなかったことがドイツ代表の早期敗退に繋がっている。

 続投するかどうかは不透明だが、フリック監督は2年後のユーロ(欧州選手権)、4年後のワールドカップに向けて「今の戦力では攻め勝つことができない」問題に対して真摯に向き合わなければいけない。

(文:安洋一郎)