●絶好調・三笘薫が2ゴールに絡む大活躍

プレミアリーグ第27節、リーズ対ブライトンが現地時間11日に行われ、2-2の引き分けに終わっている。この試合で先発出場したブライトンの三笘薫は、前節同様に圧巻の活躍を披露。直近2試合でオープンプレーから失点のなかったリーズを相手に、なぜ日本代表FWは大活躍できたのだろうか。(文:安洋一郎)

 前節ウェストハム戦でPK奪取とゴールを決めたブライトンの三笘薫の勢いは今節も止まらなかった。

 33分に逆サイドからのクロスに対して中央へヘディングで折り返してアレクシス・マクアリスターの得点をアシストしたかと思えば、61分にはドリブルでボックス内まで侵入し、相手選手のオウンゴールを誘発。この試合で決まったブライトンの全ゴールに関与した。2試合連続でプレミアリーグ公式のMOTM(マンオブザマッチ)にも選出されている。

 三笘が大車輪の活躍を見せた一方でブライトンは、リーズに2つのゴラッソを許し、2-2の引き分けに終わっている。

 リーズはハビエル・グラシアが新監督に就任してからの2試合で、前節チェルシー戦のセットプレーからの1失点のみしか喫しておらず、指揮官もチームを立て直した要因に「守備のバランスを見つけること」と回答。守備を修正したことを明かしていた。

 そんなチーム相手に三笘はオープンプレーから2つの得点を演出している。なぜ、この試合でも日本代表FWは活躍できたのだろうか。

●三笘薫が活躍できた理由

 この試合で最初に三笘がスーパーなプレーを魅せたのは、攻撃ではなく守備だった。

 28分に左サイドのジャック・ハリソンが上げたシュートが逆サイドまで流れると、この試合で三笘とマッチアップすることが多かった右SBのルーク・エイリングがボールに対して詰めて、シュートモーションに入った。

 この絶体絶命のピンチを三笘は全力の帰陣でエイリングのマークを見失わず、シュートを打たれる直前に身体を入れて失点を防いだ。三笘が戻っていなければ、先制点を献上していてもおかしくはなかった。

 エイリングと三笘の相性は、後者にかなりの分があった。エイリングは攻撃参加が得意な選手で、果敢なオーバーラップからのクロスやシュートなどに魅力がある選手だ。一方で守備面では、ポジショニングの誤りやテクニシャンを相手とした対人戦の弱さなどの課題を抱えている。

 これらの特徴を踏まえると、三笘が守備でエイリングを封じることができた場合、相性的にはかなり有利なのだ。

 三笘は27分の場面こそ、エイリングに股抜きドリブルを許したが、それ以降、報復するかのごとくリーズの右SBを圧倒するのだった。

●三笘薫がエイリングを圧倒

 ブライトンが先制点を決めた33分の場面では、逆サイドからのふんわりとしたクロスに対して三笘がエイリングに競り勝ち、マクアリスターへとアシストしている。
 この場面でリーズの右SBは日本代表FWに対して、簡単にジャンプをさせ過ぎており、その結果、ヘディングでも正確な折り返しのパスを出されていた。

 43分にはブライトンの左SBペルビス・エストゥピニャンが三笘の背後へとロングパスを供給するのだが、その際にエイリングは全くマークについておらず、日本代表FWはそのまま独走してマクアリスターへとマイナスのクロスを折り返した。最後、三笘のラストパスを受けたアルゼンチン代表MFがシュートを外してしまったため、得点とはならなかったが、この場面も両者の相性が顕著に出た場面だった

 そして61分の得点シーンの場面、ここでも三笘とエイリングはマッチアップした。ボックス内で対峙した両者だったが、止まっているところからの縦への加速にエイリングはついていけず、グラウンダーのクロスを許した。このクロスをリーズの守備陣が立て続けにクリアミスを犯し、ブライトンに2得点目が生まれている。

 76分にも同じくボックス内で両者は対峙し、この場面でも三笘が深い切り返しでエイリングを圧倒した。リーズのガルシア監督は本来のコンディションであれば、対人戦に強いラスムス・クリステンセンを“三笘対策”として起用したかっただろうが、同選手はカタールワールドカップ以降コンディション不良が続いており、エイリングを使わざるを得ない状況にある。リーズからすると、最後の最後まで三笘を止める方法を見つけられなかったことが、ホームで勝ち点2を失った結果に直結している。

 逆に捉えると、この試合の三笘薫は90分間手に負えないアンストッパブルな存在だったのだ。プレミアリーグ挑戦から1シーズンも経っていないが、三笘は本当に止めることが困難なスーパーな選手へと成長している。

(文:安洋一郎)