●厚みがあり連続性のあるサッカー日本代表の攻撃

 国際Aマッチ8連勝と好調を維持するサッカー日本代表は、1月に開幕するAFCアジアカップを控える。ダビド・ビジャが主宰するサッカースクール『DV7サッカーアカデミー』日本支部のディレクター・コーチを務めるアレックス・ラレアのインタビュー第2回は、攻撃面を軸に日本代表を分析する。(取材・文:川原宏樹)
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【前編はこちら】「面白いスタッツがあります」サッカー日本代表をスペイン人指導者が考察。欧州で高く評価される気が利いたプレーの正体

 前回はミャンマー戦、シリア戦におけるスペイン人指導者アレックス・ラレアの分析を守備面に主題をおいて伝えた。今回は攻撃面の分析をピックアップするが、話は日本代表がこれまでに積み上げてきた成長にまで及んだ。

 どちらの試合も5得点を挙げた攻撃に関しては、「アジアレベルの相手には、なかなか止められない」とアレックスは考察している。

「サイドを崩したときには、伊東純也や南野拓実など必ず逆サイドの選手までもがペナルティーエリアに進入して、クロスに対する準備をしていました。ゴール前には上田綺世というわかりやすいターゲットが存在するうえに、他の選手からも常にゴールの近くで受けようという意識が強く感じられ、それが攻撃に厚みを持たせていました。

 加えて、ネガティブトランジションから素早くボールを奪い返せていたことで、多くの時間帯で日本が攻撃を展開するという試合になりました。そういった厚みがあり連続性のある日本の攻撃は、アジアレベルの相手にはなかなか止められないのではないでしょうか」

 限りなく最高に近い評価をしたアレックスは、ポジショナルプレーの観点から今の日本代表の攻撃が止めづらい理由を説明した。

●サッカー日本代表の好調を支える3つのファクター

「すべてのプレーがうまくつながっていたから、5得点というゴールに結びついたと帰結することもできますが、ポジショナルプレーの観点から見ても日本は素晴らしい展開を見せていました。

 ポジショナルプレーにおいては位置的優位性、数的優位性、質的優位性という3つのファクターが重要になります。どこにその優位性が生まれるかを探り、その優位性を利用して攻撃を仕掛けます。日本は1つ目のプレッシャーラインを越えて相手陣内へ入ったあと、2つ目の中盤のプレッシャーラインを越えるためにサイドへボールを運びます。そのときにサイドバックがオーバーラップしたり、中盤の選手がサポートしたりして数的優位な状況をつくり出してボールを前進させます。そこでボールを前進させられなかったとしても、相手の動きを見ながら数的優位な状況を生み出したところを突いていけます。

 しかも、ボールを前進させられるまでそれを継続的に繰り返せるのです。優位性を生み出せるのは1秒もない刹那のタイミングですが、横方向へボールを動かしながら相手をスライドさせて、見つけ出した刹那の隙や歪みを突ける判断スピードとプレーの正確性を併せ持つ選手が今の日本にはそろっています。このように多くの状況でその優位性を見つけ出して突くというプレーを実現できていた日本は、完璧といっていいほどのサッカーを展開していたように思います」

 ここまでの評価では非の打ちどころがないほど出来がよかったように感じる日本代表だが、アレックスは修正すべき点もあったと指摘する。

「特にシリア戦についてになりますが、序盤など時間帯によっては粗雑なプレーからボールを奪われるシーンが目立っていました。周囲の選手による危機管理や戦術的なファウルによって大半は防がれていましたが、自分たちが有利な状況であるにもかかわらず判断ミスによって相手にカウンターのチャンスを与えてしまいかねないプレーがいくつかありました」

 その原因を追究したところ、モチベーションが関係しているという。

●サッカー日本代表が積み上げてきた「4つの強み」

「先述したように今の日本代表はチーム内の競争力が高く保つことで、モチベーションを高めています。こういった状況におかれた選手たちは、高評価を得ようとハードルの高い大胆で難しいプレーを選択しがちです。状況によってはその選択でポジティブな結果を生み出すことも多々ありますが、今回の日本代表においてはそれでボールを奪われてしまったというのも1つの事実なのです。相手が変わればそういったミスもなくなるということも多々あり、この事実を森保監督がどう評価するのかはわかりません。ただ、相手が変われば致命的になる可能性も秘めているのです」

 2次予選やアジアカップのグループリーグでは大きく格差のある相手との対戦になるが、その後のレベルが上がるチームを相手にしたときには不安を感じてしまう。しかし、日本にはチームとして積み上げてきたものが多く、「4つの強み」を持っているとアレックスは断言。それ故に、アジアレベルであれば簡単には負けないと主張する。

「これまでに何を積み上げてきて戦いに挑むのかということが、チームとしては大事になります。以前は日本の強みといえば、選手個々のスピードやアジリティでした。それはウイングやサイドバックのポジションで今も日本の武器となっています。今はそれと合わせて4つの強みがあると思います。

 1つはポジショニングの精度で、各々の選手の精度が試合を重ねるごとに上がっています。次に、FWの強さが挙げられます。上田綺世にしても他の選手にしても、1対1に強くなりロングボールを蹴っても収めてくれるようになりました。最後に試合を読む力です。未然に相手の攻撃を防ぐ先を読む力が備わってきました。得点を取る力もあれば、失点につながるカウンターを防ぐ力も積み上げてきています。だから、前回と同じようにはやられないだけの力があると思います」

 このように、これまでに積み上げてきた力がアジアレベルで勝つ力になっているという。

 全体的に高評価を与えアジアレベルでは簡単には負けないと論じたアレックスだが、「対戦相手はあくまでもミャンマーやシリアであって、国際的に見て強豪国ではないということを忘れてはいけない」と警告する。「今回の結果は素晴らしいものではあったが、ワールドカップ本大会でベスト8以上を目指す日本に対して必要以上の高評価は危険」と戒めた。

(取材・文:川原宏樹)

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