監督交代はチームの状況を大きく変える大チャンスである。欧州主要リーグも2023/24シーズンの後半に突入し、間もなくアフリカとアジアで大きな国際大会が終わろうとしている。多くのチームが監督交代を試みることが予想されているこのタイミングで、今回は今すぐに招聘が可能な現在フリーの立場にある世界有数の監督10人を紹介する。

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カルロス・ケイロス
生年月日:1970年6月8日
前職:カタール代表監督

 カルロス・ケイロスほど、代表チームでの経験がある監督は他にいないのではないだろうか。

 計8つのナショナルチームで監督を務め、ワールドカップは2010大会から4大会続けて指揮。決して突破が簡単ではない予選を勝ち上がって、多くのチームを世界最高の舞台へと導いている(2度目の指揮となった直近のイラン代表は本大会直前に就任)。

 3月に71歳を迎える経験豊富な名将は、2022年のワールドカップ後にカタール代表監督に就任した。昨年11月から行われているワールドカップ二次予選で2連勝を飾ったが、12月に双方合意のもとで契約を解除して退任となった。これは成績不振(5勝2分5敗)による事実上の解任と見られている。

 直近のカタール代表こそ失敗に終わってしまったが、多くのナショナルチームをワールドカップ出場に導いた手腕は賞賛されるべきだろう。昨年12月からフリーの状況が続いているが、これまでの実績を踏まえれば、アフリカ・ネーションズカップとアジアカップが終わったタイミングで再び職を手にしても不思議ではない。

現在フリーの“最強”外国人監督10人 全紹介
現在フリーの“最強”外国人監督10人(2)
現在フリーの“最強”外国人監督10人(3)

ヨアヒム・レーヴ
生年月日:1960年2月3日
前職:ドイツ代表監督

 2014年のブラジルワールドカップでドイツ代表を優勝に導いたヨアヒム・レーヴも現在フリーの監督の1人だ。

 2004年からユルゲン・クリンスマンのもとでドイツ代表のアシストタントコーチを務めていたレーヴは、ドイツワールドカップ終了直後に監督へと昇格。優勝した2014年大会を含めて、3大会連続でワールドカップの舞台で指揮を執った。

 しかし、就任時からアシスタントコーチ(2014年〜2017年はスポーツ・ディレクター)を務めていたハンジ・フリックがチームを離れてからは大苦戦。2018年のロシアワールドカップのグループリーグ敗退を筆頭に、最後の指揮となったユーロ2020(欧州選手権)も1勝1分2敗でベスト16敗退に終わった。本人も昨年10月に出演したポッドキャストで、退任が遅すぎたと悔いる発言をしている。

 最後の印象があまりに悪いのか、レーヴは2021年夏にフリーとなって以降は監督から遠ざかっている。ただ、本人がドイツ『kicker』誌に語ったインタビューによると、「その仕事が自分にとって魅力的だと感じたら、準備はできている。また挑戦するつもりだ」とやる気十分だ。2月に64歳となったばかりの指揮官にオファーを出すチームは現れるのだろうか。

ジョゼ・モウリーニョ
生年月日:1963年1月26日
前職:ローマ監督

 ジョゼ・モウリーニョはサッカー史において、最も成功した監督の1人だ。

 イングランド、スペイン、イタリアの3つのリーグでリーグ戦とカップ戦のどちらのタイトルも獲得し、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)、UEFAカンファレンスリーグ(ECL)の3つの欧州コンペディションも制覇している。

 直近に率いたローマでは就任初年度から2年続けて欧州コンペディションの決勝へと進出。昨季はセビージャに敗れる形でEL王者となれなかったが、トーナメントで持ち前の勝負強さを発揮した。しかし、リーグ戦では2年連続で6位とCL出場権を獲得するには至らず、やや苦戦を強いられた印象だ。

 今季も開幕からリーグ戦で思うように勝ち点を伸ばすことができず、今年の1月16日に解任となった。あまりに守備的に戦うことから、そのスタイルが批判を集めることもあるが、これまで指揮を執ったほぼ全てのクラブでタイトルを獲得したことからも実績は十分。“スペシャル・ワン”の次なる仕事場はどこになるのだろうか。

ハンジ・フリック
生年月日:1965年2月24日
前職:ドイツ代表監督

 昨年9月に日本代表に敗れた直後にドイツ代表を解任されたハンジ・フリックだが、2019/20シーズン途中から2020/21シーズンまで指揮を執ったバイエルン・ミュンヘンでの手腕は見事だった。

 シーズン途中にアシスタントコーチから昇格した2019/20シーズンはブンデスリーガ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)、DFBポカールを制してトレブルを達成。指揮を執った86試合での平均勝ち点は「2.53」で、これは同じくトレブルを達成したユップ・ハインケスの「2.43」やジョゼップ・グアルディオラの「2.41」を上回る。

 ドイツ代表でも就任当初は8連勝と上手く行っていたが、試合を重ねるに連れてストライカーの人材不足の影響も受けて得点力不足が露呈。カタールワールドカップではグループリーグ敗退となり、最後はポーランド代表、コロンビア代表、日本代表に3連敗を喫して解任となった。

 彼に足りないものがあるとすれば“経験”だ。長らく元ドイツ代表監督のヨアヒム・レーヴのアシスタントコーチを務めるなど、“右腕“としての経験は豊富だが、意外にも監督歴は短い。バイエルンでの実績を踏まえると引く手あまただろうが、ドイツ代表でも組織が上手く回らなくなってから修正が効いておらず、監督としての経験不足は気になるところだ。

フレン・ロペテギ
生年月日:1966年8月28日
前職:ウォルバーハンプトン監督

 今季プレミアリーグで最初の退任となったのがフレン・ロペテギだ。クラブと意見が対立したことにより、開幕1週間前に双方合意の下での契約解除でウォルバーハンプトンを去っている。

 ロペテギは監督キャリアの当初はレアル・マドリード・カスティージャを指揮するなど、若手選手の育成に多く関わる機会が多く、2010年からはスペイン代表の年代別代表監督を務めた。後にA代表の主力となるダニエル・カルバハルやアルバロ・モラタらが中心となるチームで、U-19欧州選手権とU-21欧州選手権の制覇を成し遂げている。

 2016年に就任したスペイン代表では、自らが年代別代表監督時代に指導した選手とアンドレス・イニエスタやセルヒオ・ラモスらベテラン選手を上手く嚙み合わせて、就任から全20試合で無敗をキープ。ところがロシアワールドカップ開幕直前にレアル・マドリードの監督に就任することが発表されると、スペイン代表を解任されてしまった。

 その後、率いたセビージャでは2019/20シーズンにUEFAヨーロッパリーグ(EL)を制覇。昨季途中から指揮したウルブスでは最下位に沈んでいたクラブを見事に蘇らせて、最終的には安全圏の13位でのフィニッシュを成し遂げた。クラブでも代表でも実績十分の57歳のスペイン人監督を招聘したいチームは多いはずだ。

アントニオ・コンテ
生年月日:1969年7月31日
前職:トッテナム監督

 昨年3月にトッテナムの監督を解任されて以降フリーが続くアントニオ・コンテは、これまで指揮をしたクラブのほとんどでタイトルを獲得している。中でもリーグ戦での強さはサッカー界屈指だろう。

 2011/12シーズンに選手時代の古巣であるユベントスを9年ぶりにスクデットに導くと、そこからビアンコネリ(ユベントスの愛称)の黄金時代が始まる。そしてこの黄金時代を阻止したのもコンテだった。2019/20シーズンにインテルの監督に就任すると、2季目にユベントスのセリエA10連覇を阻止。インテルを11年ぶりにスクデットに導いた。

 彼の監督としての活躍はセリエAに留まらず、チェルシーではプレミアリーグ優勝を経験。[3-4-3]の攻撃的な布陣に補強で集めた即戦力を上手く嚙み合わせて、あっという間に常勝軍団へと導くのがコンテの手腕の見せ所だ。一方でフロントに対しての要求が強く、喧嘩別れのような形でチームを去るのもお決まりになりつつある。

 クラブでの成功のイメージが強いコンテだが、2014年からの2年間はイタリア代表の監督を務めた。選手の寄せ集めになりがちな従来のナショナルチームとは対照的なクラブチームのような「戦術的」なチームを形成。代表の主力にユベントス時代の教え子が多数いたのが彼の後押しとなり、ユーロ2016(欧州選手権)では大会2連覇中のスペイン代表を撃破。ベスト8でドイツ代表にPK戦で敗れてしまったが、代表チームに与えたインパクトも絶大だった。

ジャメル・ベルマディ
生年月日:1976年3月25日
前職:アルジェリア代表監督

 アルジェリア代表はアフリカ・ネーションズカップ2023での敗退を受けて、2018年8月から続いたジャメル・ベルマディ監督の更迭に踏み切った。

 今大会のアルジェリア代表はグループリーグでアンゴラ代表、ブルキナファソ代表、モーリタニア代表といずれも格下のチームと対戦。しかし、2分1敗と未勝利に終わり、決勝トーナメントに進出することなく大会から姿を消した。

 最後は不完全燃焼で終わり、2022年の予選にも敗れたことで母国をワールドカップ出場に導けなかったベルマディだが、2019年にはアフリカ・ネーションズカップで優勝を果たし、1990年大会以来のアフリカ制覇を成し遂げている。代表通算成績は43勝17分6敗と大きく勝ち越しており、1試合あたりの平均勝ち点は「2.21」と驚異的な数字を残している。これは2014年にワールドカップ出場に導いたヴァイッド・ハリルホジッチの「1.97」を大きく上回る。

 現在47歳のアルジェリア人指揮官はクラブレベルでも大きな成功を収めている。2010年にカタールのレクウィヤ(現アル・ドゥハイル)の監督に就任すると、就任初年度に同クラブをリーグ初優勝に導いた。ベルマディがレクウィヤとアル・ドゥハイルを指揮した5シーズンのうち4シーズンでリーグ優勝を経験するなど、その実績と手腕には確かなものがある。彼を監督に求めるチームは多そうだ。

ホルヘ・サンパオリ
生年月日:1960年3月13日
前職:フラメンゴ監督

 ホルヘ・サンパオリはチリ代表を初のコパ・アメリカ優勝に導いた2015年にはジョゼップ・グアルディオラとルイス・エンリケと並んでFIFA年間最優秀監督にノミネートされるほど評価を高めていた。

 直近ではマルセイユを率いた2020/21シーズンにリーグ・アンで2位という好成績に導き、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場という目標も達成したが、何かと揉めがちなのが彼の短所だ。チリ代表監督はサッカー協会と揉めた末に解任。マルセイユとはクラブと補強方針が合致しなかったことで、翌シーズンの開幕前の辞任を決断した。

 これはクラブの財政難の影響もあるのでサンパオリ1人の責任ではないが、多くの人の記憶に残っているのがアルゼンチン代表を率いた2018年のロシアワールドカップでの出来事だろう。チームとしての戦い方が固まっていない中で本大会を迎えると、無策のままクロアチア代表との第2節で0-3の完敗を喫したことで、完全に選手たちに見限られてしまった。

 昨年4月から指揮を執ったブラジルの名門フラメンゴでも選手と揉めたようで、半年余りで解任の憂き目に合った。チームあたりの平均任期が1.16年であることからもわかるように、どの職場でも短期政権に終わる傾向にある。それでも引く手あまたなのは、これまでの実績と手腕からなのだろう。次なる職場でこそ揉め事を起こさないことを祈るばかりだ。

ルイ・ヴィトーリア
生年月日:1970年4月16日
前職:エジプト代表監督

 ルイ・ヴィトーリアにとってエジプト代表は初のナショナルチームでの指揮となったが、アフリカ・ネーションズリーグ2023で未勝利のままベスト16敗退となったことで解任の憂き目に合った。

 現在53歳のポルトガル人指揮官は、ヴィトーリア・ギマランイスで監督としての評価を高めると、2015/16シーズンに名門ベンフィカの監督に就任した。就任初年度からリーグ優勝を成し遂げると、翌シーズンも連覇を達成。2年連続でリーグの年間最優秀監督に輝くなど、ポルトガル屈指の監督として評価を高めた。

 ベンフィカはチームとして選手の入れ替わりが激しいが、その中でヴィトーリアは下部組織出身の選手を積極的に起用。ヴィクトル・リンデロフ(マンチェスター・ユナイテッド)、ネウソン・セメド(ウルブス)、エデルソン(マンチェスター・シティ)、ルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)は、いずれもこのポルトガル人指揮官がトップチームに昇格させた選手たちだ。

 サウジアラビアのアル・ナスルやロシアのスパルタク・モスクワを経て、2022年7月にワールドカップ出場を逃したカルロス・ケイロスから引き継ぐ形でエジプト代表の監督に就任した。アフリカ・ネーションズカップ2023までは14戦12勝1分1敗とかなり順調だったが、本大会で先述したように全く結果を残せなかった。その手腕には確かなものがあるだけに、すぐに新たなオファーを受けることになるだろう。

グレアム・ポッター
生年月日:1975年5月20日
前職:チェルシー監督

 昨年4月にチェルシーの監督を解任となったグレアム・ポッターには同情せざるを得ない。新オーナーとなったタイミングで、クラブの内部が大きく入れ替わり、選手も飽和しているあの状況で成績を残せる指揮官は誰も存在しないだろう。

 ポッターの名前が一躍有名となったのが、スウェーデンのエステルスンドでの大躍進だ。彼が監督に就任した時点で同クラブは4部に沈んでいたが、5年で1部昇格に導くと、2017/18シーズンにはUEFAヨーロッパリーグ(EL)に出場。ラウンド32ではアーセナル相手に奮闘するなど、4部だったクラブを漫画のような快進撃に導いた。

 2019年夏に監督に就任したブライトンには、それまでのクラブとは真逆のアイデンティティを浸透させ、最終ラインからボールを繋いで相手を崩すポゼッションサッカーに移行。毎シーズンのように残留争いに巻き込まれる中でも、主将のルイス・ダンクをはじめ多くの選手のビルドアップ能力が劇的に成長した。現在ロベルト・デ・ゼルビのもとで成長を続けているブライトンだが、ポッターの指導がなければイタリア人指揮官のもとで成功していたとは限らない。

 チェルシーの監督就任は彼にとって大きな挑戦だったが、不運が重なったこともあり、あっという間に解任されてしまった。それ以降、フリーが続いているが、最近になってプレミアリーグでの試合で目撃情報が相次いでいる。これは現場復帰に意欲的だということをアピールするものなのだろうか。

【了】