あの派手な高層ビルやゴルフ場を世界中に展開すべく、トランプは各国で不動産業界の大物たちと提携してきた。トランプ家の子供たちと絆を結んだ御曹司から、砂漠にビバリーヒルズを築く男まで、一挙に紹介しよう。

最新トランプ・タワーを生んだドナルド・ジュニアとの友情
ジュー・キム・ティア/マレーシア

カナダのバンクーバー中心部で2月28日、トランプの名を冠した最新のビルがオープンを迎えた。

雪が降る中、すぐ近くの歩道には約200人が集まり、シュプレヒコールを上げていた。この物件をめぐる交渉が行われていた2012年、こうした抗議運動が起きるとは誰も予想していなかった。

投資額が2億7500万ドル(約310億円)におよぶこのプロジェクトを手がけたのは、マレーシアの大物実業家の息子、ジュー・キム・ティア(37)だ。すでに、住居217戸のうち214戸が合計3億4000万ドルで売約済みだという。

市内で2番目に高い69階建て高層ビルのオープニングとなれば、本来なら列をなしてやって来るはずの地元の政治家や役人が、今回は一斉にボイコット。ある市議会議員は、このトランプ・タワーを「人種差別のかがり火」と揶揄した。

また、グレガー・ロバートソン市長はこう述べている。「トランプの名前とブランドは、彼の無知な思想が現代の世界にふさわしくないのと同様、バンクーバーの街並みにふさわしくない」。
 
しかも、ティア本人が、「トランプ・オーガニゼーションとの契約に手足を縛られている」と発言したこともある。ただ、ティアにとって、トランプは1年半を費やしてようやく見つけた最適なパートナーだった。最終的な決め手となったのは、長男のドナルド・トランプ・ジュニアと築いた友情だったという。

「彼の父親は、大きな支配力を持つ成功者であり、その点で自分の父親と同じです」とティアは語る。

「幼い頃から、そういった期待や責任を背負うことがどのような気持ちか、自分にはよくわかります。だから互いに共感できたのです」

ドバイの高級不動産の仕掛け人 税政策次第でアメリカ進出も?
フセイン・サジワニ/アラブ首長国連邦

トランプ大統領は1月末、イスラム教7カ国の人々を対象とした入国禁止令を発表した。それについて、イスラム教を国教とするアラブ首長国連邦(UAE)でトランプと提携しているフセイン・サジワニは、どう対応するのか─。

売上高が19億ドルのダマック・プロパティーズを率いるサジワニによると、何一つ方針を変えるつもりはないという。それどころか、トランプ・ブランドにさらなる投資を計画しているのだ。

2000年代初めにサジワニが手がけた最初の不動産プロジェクトは、38階建ての高層マンションで、6週間以内に完売した。その後、フェンディやヴェルサーチと提携した住宅を次々と展開。マンション購入者にランボルギーニを1台無料で提供するといった派手なPR作戦で知られるようになった。

そして11年、ドバイ郊外に約4平方キロメートルの高級住宅地「ダマック・ヒルズ」を築く計画に着手した。「中東のビバリーヒルズ」と自ら呼ぶそのエリア内に設けられたのが、トランプ・ブランドのゴルフ場と別荘だ。

トランプといえば、富と権力、そして豪勢さ。そういったブランドとサジワニは手を結びたいのだ。

「ゴルフをたしなむ人々はわかっています。最高のゴルフ場を提供するのは、トランプなのです」と彼は話す。そして、2年後には2つ目のトランプ・ブランドのゴルフ場がオープンする予定で、設計はタイガー・ウッズが手がけるという。

サジワニは、今後はアメリカに進出したいと話す。ただ、15年に2件のプロジェクトを検討しつつも見送った過去がある。理由は、市場が過剰買い状態だったことと、アメリカの高い税金だ。

「新政権が税金を引き下げるという約束を果たすなら、後押しになりますね」

不動産でも政治でもトランプ家と”特別な関係”
ロビー・アントニオ/フィリピン

アルマーニがデザインした渋いグレーと青を基調とするミニマリスト的なインテリア─。ここは、アントニオ家が手がける高層マンションのモデルルームだ。

ロビー・アントニオの父ホセがセンチュリー・プロパティーズを創業したのは、31年前のこと。それからフィリピンの経済は急成長し、その需要に応えるべく、センチュリーは豪華なマンションやオフィスビルを次々と建設し、年間売上高が2億3000万ドルに達するまでになった。

同社は、フィリピン初のコンドミニアムや超高級タワーのグラマシー・レジデンスのほか、パリス・ヒルトンのデザインによるビーチクラブを備えた人工ビーチまで手がけている。

アルマーニやミッソーニ、ヴェルサーチといった欧米の高級ブランドと提携するというのが、センチュリーのやり方である。そして今、首都マニラでオープン間近なのが、息子のロビーが手がけるトランプ・タワーだ。これは57階建ての高層ビルで、投資額は1億5000万ドルにおよぶ。

「トランプとの経験は非常にポジティブなものでした」とロビーは話す。その”経験”の大半はトランプの子供たち、つまりイヴァンカ、エリック、ドナルド・ジュニアと築いた友人関係だ。

そして今、アントニオ家とトランプ家の関係が新たな展開を迎えている。2016年10月13日、過激な麻薬取り締まりで悪名高いフィリピン大統領のロドリゴ・ドゥテルテが、アメリカとのビジネスや貿易を促進するための特使に、ホセ・アントニオを指名したのだ。

それもそのはず、「トランプのアメリカ」とのビジネス関係を強化する役割に、トランプ・タワーを手がける実業家ほどふさわしい人材は見つからないだろう。

”金ピカ”が大人気のインドでトランプ物件を手がける御曹司
アビシェク・ロドハ/インド

トランプが大統領選挙に勝利した昨年11月。2週間も経たないうちに外国から彼のもとを訪れたのは、1番目が日本の安倍晋三首相、そして2番目がインドにおける不動産のパートナーたちだった。カルペシュ・メータ、そしてアトゥールとサガーのチョルディア兄弟だ。

メータは、ムンバイでトランプのパートナーを探す役割を担う。トランプ・オーガニゼーションは通常、1つの国で複数のパートナーと手を結ぶことはないが、インドは例外だ。現時点で、トランプは5件のライセンス契約を交わしており、そのうち2件は今年中に着工する計画だ。

最初のトランプ・ブランドのプロジェクトを担ったのが、チョルディア兄弟だった。2人は、「フォーブス アジア」が特集したインドで最も裕福な100人にランクインしたこともある。彼らは、IT産業のハブ都市として急成長中のプネーで、23階建ての高層ビルを2棟建てた。

そして、現在建設中のムンバイ初のトランプ・タワーを手がけるのが、チョルディア家と同じく政界との結びつきが深いロドハ家だ。

「この国では、トランプという名の認知度が高いので、ぴったりだと考えました」とアビシェク・ロドハは話す。同氏は、このプロジェクトを手がけるデベロッパーを経営しており、インドの不動産長者の息子でもある。
 
完成は18年末の予定で、375戸の住戸数を誇る75階建ての高層ビルになる。正面玄関には金色のガラスとメッシュを使用するという。理由は、「インド人は金ピカが大好き」だからだ。

「トランプが手がける仕事には、どこか壮麗さがあるのです」と、ロドハは称賛を惜しまない。

Forbes JAPAN 編集部