中国のテンセントは「未成年者のゲーム依存を助長している」として政府に名指しで批判されている。国営メディアの人民日報はテンセントの大人気ゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」を取り上げ、「有害」であり常に「負のエネルギー」をまき散らしているとした。

テンセントは速やかに対応し、12歳以下は1日1時間プレイすると自動的にログオフさせる措置などを導入した。だが中国政府は280億ドル(約3兆円)規模の世界最大のゲーム産業の規制を強化する方針で、テンセントのみならずすべての参入企業がその影響を受けると見られる。

人民日報と新華社通信は共にゲーム開発者に対し、ゲーム依存対策の改善を要求した。新華社通信はテンセントのゲームについて「歴史上の人物に仮想の能力を与えることで中国の歴史をゆがめている」と指摘。また依存対策のメカニズムにも抜け道があり、当局は取り締まりを強化すべきだとした。

「王者栄耀が巻き起こしている社会現象は、急成長し規制の追いついていないゲーム産業の欠点を浮き彫りにしている。関連当局は同産業の成長を促すだけでなく、秩序が保たれるよう規制も強化すべきだ」と同社は述べた。

子供の「ゲーム依存」は重大な問題

中国政府にとって「王者栄耀」のようなゲームは早急に解決すべき社会問題だ。小学生がプレイしたいがために親の金を盗み取るという問題も報道された。「王者栄耀」は、ダウンロードは無料だがアイテムの購入は有料で、世界最高の売上を誇るモバイルゲームとなり、2015年に発表されて以来2億人がプレイした。

「王者栄耀」はHSBCのアナリストの試算によると、2017年第1四半期だけでもテンセントのモバイルゲーム関連の売上の40%を占めている。

特に政府の目に留まったのが、杭州市の13歳の少年が父親に「王者栄耀」をやめさせられそうになり、飛び降りて両足を骨折したという人民日報による報道だ。父親によると、少年は「登場人物のように空を飛べると思った」という。

こういった報道は、当局のオンラインゲームに対する印象を悪くしている。中国では2008年、世界で初めてゲーム依存を「臨床的障害」と位置づけた。治療を受けさせるために軍隊型のブートキャンプに子供を入れる親もいたという。2010年には中国文化部が同国初の依存対策法を導入。翌年に政府が全企業に対しプレーヤーの登録に実名を使用させるよう指導した。

「中国でのオンラインゲームに対する規制は今後一層強化される」と、中国政法大学の伝播法研究中心(Communications Law Research Center)で副主任を務める朱巍(Zhu Wei)は言う。「政府は王者栄耀を批判することにより、すべてのゲーム企業に社会的影響のコストを負担させようと考えている」

顔認証によるIDチェック導入の可能性

厳しい方針を打ち出している中国政府だが、取り締まりは進んでいないと、上海に拠点を置く調査会社86 ResearchのアナリストCharlie Daiは指摘する。未成年者がネット上で成人の偽IDカードを購入し規制をすり抜けることは簡単だという。例えばアリババのECサイト「タオバオ」を検索すると、「王者栄耀」の規制をバイパスするサービスが10〜80元(約165〜1300円)で提供されている。

中国政府は実名登録の徹底を図るだろうとアナリストは見ている。企業に顔認証技術を導入させてプレーヤーの顔とIDカードの写真を照合させるような対策の導入を求める可能性もある。「王者栄耀」のプレーヤーの20〜30%は18歳以下であり「今後テンセントのゲーム運営コストは大幅に上昇することになる」とDaiは指摘する。

さらに親が子供をゲームからログオフさせる機能が求められることも考えられる。小学生がゲーム内で購入できる上限金額を設定させる可能性もあると、英国の調査企業IHS MarkitのアナリストのCui Chenyuは言う。

こういった対策は他のアジア諸国ですでに導入されている。例えば韓国では16歳以下は深夜12時になるとオンラインゲームから自動的にログオフさせられる。

同国では2013年、ギャンブルや麻薬と同じような規制をゲームにも適用することが検討された。これはゲームの是非についての議論を呼び、実施には至らなかったが翌年にはオンラインポーカーなどの賭博ゲームにおいて、プレイ時間や金額に上限を設ける対策が導入された。

西欧諸国ではそういった規制はないが、ゲームをプレイする子供10人に1人が依存症になっているという調査結果が、2009年にアメリカで報告されている。米国精神医学会は、ゲーム依存を正式に依存と認めるにはさらなる臨床研究が必要だとしている。

中国に必要なのは推奨年齢やコンテンツの内容を評価するシステムだとZhuは指摘する。中国には西欧諸国と違い、子供向けではないゲームやアプリが分かるようなESRBやPEGIなどの認証システムがないため、「王者栄耀」のようなゲームを誰もがプレイすることが可能だ。

「テンセントのような大企業が対策において先陣を切るべきだ」とZhuは言う。「そして政府はすべての企業で規制が順守されるよう努力するべきだ」

Yue Wang