エアビーアンドビーが登場する以前の世界では、見知らぬ他人の家で眠りたいと思う人はそう多くはなかった。掲示板サイトのクレイグリストには、部屋を貸したいという書き込みも掲載されていたが、普通の人は怪しすぎて手を出しにくい代物だった。

大物投資家として知られたクリス・サッカも、エアビーアンドビーの可能性を見抜けなかった一人だ。創業者らから投資話を持ちかけられたサッカは、そのアイデアに爆発的な成長よりもむしろ犯罪のリスクを感じた。

エアビーアンドビーの創業者らはまず、サイトのデザインやユーザーエクスペリエンスの向上に努力した。一方でクレイグリストは今でもかつてのデザインのままでいる。クレイグリストの進化は1997年で止まっている。

エアビーアンドビーはスタイリッシュなイメージで顧客にアピールした。サイトはシンプルでクリーンな印象を与え、コンテンツは豊富だが十分な余白が残されており、安心感を与えるデザインになっている。

エアビーアンドビーの成長の原動力は、美しい部屋のリスティングにある。それがエアビーアンドビーの生死を分けたとも言える。

エアビーアンドビーは創業当初、ニューヨークでうまく行かなかった。共同創業者のブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアらは現地を訪れ、問題点を探った。物件そのものは良いのだが、部屋の大家たちはどうすれば見栄えのする写真が撮れるかを知らなかった。

創業者らは最初、メールで写真の撮り方を伝授することも考えたが、ホストらが写真を学んだとしてもうまく行く保証は無い。悩んだ末、彼らは5000ドルの費用を投じプロの写真家たちに部屋の写真を撮らせた。その後、予約件数は2.5倍の伸びになり、コストはすぐに回収できた。

エアビーアンドビーの成功は写真をぬきにして語れない。部屋を掲載したい人はまず自分のプロフィール写真の掲載を求められる。当時のサイト運営の常識では、これは登録者の離脱を招く行為であり、なるべく避けるべきものと考えられていたが、エアビーアンドビーは写真の掲載を義務付けた。

「つながること」の安心感

ホストの笑顔の写真があることで利用者は安心してその部屋に泊まる気になれる。人は相手の顔を見ることで親しみを感じられるし、顔が見えることで見知らぬ他人の部屋に泊まる抵抗感を少なくできる。

写真に加え、エアビーアンドビーの信頼性を担保しているのがSNSアカウントとの連携だ。エアビーアンドビーのプロフィールはSNSとつながることにより、信頼感を増している。SNSはその相手が本当に現実空間に存在する人間であることの証明になる。

ウェブが始まった当初、インターネットは怪しい空間だった。掲示板には性犯罪者があふれていると思われていた。しばらくして、AOLのような企業がより安全な場所にしようと努力したが、怪しいイメージは残り続け、基本的に匿名の世界だった。

当時はネット上で本名や住所を明かさないのが当り前だった。その転換点と言えるのが、マイスペースからフェイスブックへの移行の時期だ。ユーザーネームは本当の名前になり、オンラインでも実名で過ごすのが普通になった。その後ようやく、インターネットは我々の日常と地続きの世界になった。

エアビーアンドビーは今も、当初の理念のもとに前進を続け、人々のぬくもりを大切にしつつコミュニティを運営している。今年1月にはドナルド・トランプの出した反移民令で行き場を失った人々に無料で部屋を提供した。

2014年7月にエアビーアンドビーはロゴのデザインを刷新した。新しいロゴはBélo(ベロ)という名で呼ばれ、その形は人々が「つながっている」ことをあらわしている。エアビーアンドビーの共同創業者、ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアは米国で最高の美大とされるロードアイランド・スクール・オブ・デザインの出身だ。彼らは人々の温もりを取り入れた運営スタイルとデザインで現在の成功を勝ち取った。

Theo Miller