ファッションブランドのマイケル・コースは、12億ドル(約1330億円)という多額を注ぎ込み、ジミー・チュウとの「結婚」の合意にこぎつけた。だが、ハネムーンの期間が過ぎたら、両社を待ち受けているのは困難の多い道のりだろう。

販売の低迷が続くマイケル・コースは今回の買収によって、売上高を大幅に引き上げることができるはずだ。また、売上高の70%を北米地域から得ている同社は、アジア・欧州地域で売上高の71%を稼ぎ出しているジミー・チュウと組むことにより、店舗網を世界的に拡大することができる。

さらに、「マステージ」ブランドの位置付けにあるマイケル・コースは、高級靴ブランドのジミー・チュウ買収により、長年にわたって目標としてきた「高級ブランド」市場への参入も果たすことになる(マステージは、「マス(大衆)」と「プレステージ(高級)」を合わせた造語)。

両社の「栄光」は過去のもの?

両ブランドはこれまで、著名人らの支持によって広く人気を得てきた。マイケル・コースは2012年まで10年にわたり、デザイナーを目指す人たちの姿を追うリアリティ番組「プロジェクト・ランウェイ」の審査員を務め、自らがブランドの「広告塔を務めるセレブリティー」となった。

一方、ジミー・チュウは英国の故ダイアナ元皇太子妃やミシェル・オバマ前米大統領夫人といったファッション・アイコンが愛用したこと、人気ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」の中で取り上げられたことなどによって、知名度を上げた。

だが、モデルで前出の番組の司会者でもあるハイディ・クルムが言うように、今日の人気が明日には消えてなくなることもあるのがファッションの世界だ。クリエイティブでの協力を通じて両ブランドがかつての魅力を一部でも取り戻すことは可能かもしれない。だが、結局は経営上のさまざまな問題によって、身動きが取れなくなっていくことも考えられる。

困難な道のり

また、ファッション業界では高級品市場でも横ばい状態が続いている。成長しているとは言えない。マイケル・コースと同じ「マステージ」の各社は、「高級」と「大衆向け」ブランドの双方とも、激しい競争を繰り広げている。

マイケル・コースは今年、現在ある827店舗のうち125か所を閉鎖する予定だ。そして、ジミー・チュウは150店舗を閉める。だが、それでも両社は今後、小売業界で進む「破壊」の影響をより大きく受けることになる。客足減少の影響を克服することを目指した経営の効率化をどのように実現させるのか、その方法は明らかではない。

さらに、「マイケル・コースの店内にディスプレーされるジミー・チュウの靴」は想像するのが難しい。店と商品を逆に考えてみても同じだ。バッグブランド・コーチによる同業のケイト・スペードの買収が先ごろ発表されたが、これら2社の場合にはそうした違和感がない。アンブレラ・ブランドとなるコーチの店内にケイト・スペードの商品が並んでも、無理なく受け入れられる。だが、それぞれにデザイナーの名で知られるマイケル・コースとジミー・チュウの場合は、そうはいかないだろう。

それでも、マイケル・コースは自らがアンブレラ・ブランドとなることを目指している。最高経営者(CEO)兼会長のジョン・アイドルは米CNBCテレビに対し、「これが(自社にとっての)最後の買収にはならないだろう」と語った。アイドルによれば、「ジミー・チュウの買収は、国際的なファッションブランドに焦点を絞り込んだ高級ブランド・グループを築くという戦略の第一歩」だ。

大きな夢だ。ただ、問題はそうした巨大な高級ブランド・コングロマリットの誕生を、世界が必要としているのかどうかということだ。

Pamela N. Danziger