今、最も影響力のあるSNSスターを決めるフォーブスの「インフルエンサーランキング」では今年4月、28歳のカナダ人女性ユーチューバー、リリー・シンがエンタテインメント部門の首位に輝いた。

IISuperwomanIIのユーザー名で一人芝居のコメディ、他の人気ユーチューバーや有名俳優をゲストに迎えた寸劇、女性同士の連帯を呼びかける#GirlLoveシリーズなどを配信しているシンは、現在1200万人以上のチャンネル購読者を抱える。

ユーチューバーは、現実的なキャリアの選択肢——。シンがそのことに気づいたのは、心理学を学んでいた大学4年生の時だった。シンは昔からラッパーやダンサー、女優に憧れていたものの、自信もなければ、どうすればなれるのかもわからなかった。そんな中、シンは初期のユーチューバーの一人、ジェナ・マーブルズの投稿に勇気付けられる。マーブルズが自宅でノートパソコンを使って撮影したコメディ動画を世界に配信している姿を見て、自分にもできるかもしれないと考えたのだ。

シンの最初の投稿は、宗教と人類愛について語るものだった。現在は削除されているその動画の再生回数は70。「私の知り合い以外で見た人は、1人か2人しかいないということ」とシンは笑いながら言う。「その後、他のクリエイターの動画を見て、台本を書くようになりました。はじめはただ思いつくままに喋っていたのです」

シンの動画はすぐにユーチューブ幹部の目に留まり、シンは動画を収益化できるユーチューブパートナーの一員になった。2012年には、マネージャーを雇えるだけの収益が出た。

故郷のトロントからロサンゼルスに出てきたのは1年半前。シンにとって移住は「安全地帯からの脱出」だったという。米国進出によりシンのキャリアの勢いは増し、最近はユーチューブ外での活動も増えている。

年収は8.3億円、女優の道にも開眼

2016年には、カリフォルニアに拠点を置く化粧品ブランドのスマッシュボックスと契約し、シンのトレードマークである真っ赤な口紅「Bawse」を発売(Bawse=仕事のみならず人生のすべての局面において主導権を握るボスを意味するシンの造語)。同社でグローバルマーケティングを担当するバーナード・ザイオンは、「すぐに人気1位になりました。彼女のファンのおかげです」と言う。

今年に入ってからは、初の著書である自己啓発書「How to Be a Bawse: A Guide to Conquering Life」を上梓。同書は米国のバランタイン・ブックス、カナダのダブルデイ、英国のペンギン・ブックスの3ヶ国3社から同時に発売され、「NYタイムズ」ベストセラーランキングのビジネスジャンルで1位を獲得した。シンは春から6月にかけて、11ヶ国27都市をまわるプロモーションツアーを敢行したばかりだ。

昨年末、シンはフォーブスによる「最も稼いだユーチューバーランキング」3位になった。推定年収は750万ドル(約8.3億円)に上る。また今回の「インフルエンサーランキング」では、LGBT活動家/ビデオブロガーのタイラー・オークリーや、今はなき動画共有サービスVine出身のモデル、キャメロン・ダラスなどの人気者を凌ぐ影響力を見せつけた。まるでハリウッドスターのようにマネージャーや複数のパブリシストからなるチームを率いる現在の状況について、シンは「時々周りを見渡して、皆、私についてきてくれているんだと驚くことがある」と言う。

シンの次なるプロジェクトは、女優業だ。レイ・ブラッドベリの「華氏451度」を現代に置き換えたHBOのドラマにビデオブロガー役で参加し、マイケル・B・ジョーダンやマイケル・シャノンと共演する。映画やテレビでのキャリアを視野に入れているシンだが、ユーチューブでの活動もやめるつもりはないという。「私はユーチューブを愛しているし、デジタル空間の可能性を信じています。両方に足を突っ込んでいたいんです」

Clare O'Connor