2016年の売り上げは1億ドル、営業利益率は20%以上。創業7年で寄付総額は30億ドルに達し、米フォーブス誌の「次のユニコーン・スタートアップ」にもトップ20にオンリスト。米国のクラウドファンディング市場においては一人勝ち─。

これが、寄付プラットフォーム「ゴーファンドミー(GoFundMe)」のスタートアップとしての実績だ。では、寄付事業体としてはどうか。15年の寄付総額は、すでに赤十字の2倍を超えている。

自己資金のみで成長した6億ドルベンチャー

社会貢献や寄付に限らない米国「クラウドファンディング」全市場において、ゴーファンドミーはNo.1。企業規模は2位につける「キックスターター」の倍以上、まさに王者である。

キックスターターは主に製品開発に特化しており、ファンディングの分野も異なるが、大きな違いは「徴収システム」にある。どちらも集めた金額の5%を手数料として徴収するが、キックスターターでは目標額に達しない場合は、プロジェクトが成立せず、徴収も発生しない。一方、ゴーファンドミーは目標額を達成したか否かにかかわらず、寄付を実行し、5%を徴収する。締切などの期限もない。

ゴーファンドミーの経営陣は、自らを資本主義者だと公言してはばからない。彼らが目標に掲げるのは、より多くの人々が、より多くの金を、より効率的に、多様な「個人」に寄付する未来だ。そして、ゴーファンドミーの利潤は寄付額に比例する。

同社のサイトでは100万人もの人々が、難病であるサンフィリッポ症候群の基金への寄付や、ルイジアナ州で発生した洪水の被災者支援や、自分たちがプラハに新婚旅行するための旅費の援助などを求めている。

CEOのロブ・ソロモン(49)は言う。

「ゴーファンドミー以前、”大衆からの資金調達”に成功した人は誰もいなかった」

はじめから勝利の方程式が見つかっていたわけではない。サンディエゴ在住のブラッド・ダムフォース(34)とアンディ・バレスター(35)が、ゴーファンドミーの前身となる個人のための資金調達サイト「クリエイトアファンド(Createafund)」を立ち上げたのは08年のことだ。

当初はペイパルに支払金を分割する機能がなく、ふたりは寄付ごとの手数料を差し引くことができなかった。収穫の乏しい初年度のあいだに、創業者ふたりは、慈善団体には定期契約ベースのサイト利用を促し、サイト運営者としての手数料は無料とすることで、市場シェアを確保した。

09年にペイパルが支払金を分割できるようになり、活路が開ける。安定した収入が流れ込み、外部出資に頼ることなく成長を続けられるようになった。サイト名を「ゴーファンドミー」に改めたのは10年のことだ。

14年後半、ゴーファンドミーはVC「アクセルパートナーズ」のジョン・ロック(32)の目に留まる。ロックは300人を対象に、個人的な理由のために資金集めをするならどのサイトを使うかというアンケートを取った。すると、95%がゴーファンドミーの名を挙げた。「そのビジネスは、創業者であるブラッドとアンディの想像以上にうまくいっていた」と、ロックは語る。

15年7月、ふたりの創業者はアクセルパートナーズらに過半数の株を売却し、経営の一線から退くことに同意した(現在でも役員ではある)。企業評価額は6億ドル。CEOにはアクセルパートナーズのソロモンが就いた。「はじめてゴーファンドミーを見たとき、そこで起きていることに、ただただ呆然とした」と、ソロモンは言う。

「キャンペーンの数や利用者の数に目を疑ったよ」

「正しい寄付」とは

ゴーファンドミーにおける最大のカテゴリーは、医療費だ。15年に集められた15億ドルの寄付のうち、医療に関連するのもは4億ドルを占めた。とはいえ、同サイトが仲介する寄付金のなかで、税控除が認められるのは、サンフィリッポ症候群の基金宛てのものなど、ほんの一握りに過ぎない。集まる寄付金は、平均して1件1000ドル。18秒に1件、新たな募金キャンペーンが投稿される。 

ゴーファンドミーに寄付をする人々は、こうしたキャンペーンが「本物」なのか、あるいは、小道具とカメラを持った役者が演じる詐欺行為なのかを、どのようにして見分けたらよいのだろうか。ゴーファンドミーによれば、「詐欺的なキャンペーンは0.1%しか成功しない」という。

「正しい寄付」へのフィルタリングとして、ゴーファンドミーは多くの施策を講じている。支払いを処理する「ウィーペイ」と連携し(ペイパルとは11年に袂(たもと)を分かった)、寄付金の受取人の身元と銀行情報を確認する。他人のためにキャンペーンが立ち上がるケースも多いが、実際に寄付金が支払われるのは、発起人と本人との関係性が確認できた場合だけだ。

また、昨年10月からは、発起人による悪用や詐欺が発覚した場合、寄付者に最大1000ドルを返金する保険システムも導入した。そのほか、集まったお金を発起人が本人に渡さなかった場合は、ゴーファンドミーが最大2万5000ドルを本人に寄付することも誓約している。

募金内容の規制もある。人種や性別を含む10の基準に照らして、テロ行為、憎悪や不寛容を助長するようなキャンペーンは掲載されない。ただ、これらの基準は時として解釈が難しい。

15年に「ザ・ブレイズ」(保守系メディアの司会者グレン・ベックが設立したニュースサイト)のスタッフが呼びかけたキャンペーンは、数日で84万ドル以上を集め、寄付は実行された。しかしその内容は、「ゲイの結婚式にはケータリングをしない」と地元テレビで語って批判され、一時閉店を余儀なくされたインディアナ州のピザ店主を支援するものだった。

各メディアが報じ物議を醸したが、「結局のところ、我々は中立的なプラットフォームなのです」と、同社保証部門トップのダニー・ゴードンは言う。

「ゴーファンドミーは共感を民主化するんです」

むろんライバルもいる。多数の企業が、”手数料ではなく、チップで運営費をまかなう”モデルを掲げて、ゴーファンドミーに挑んでいる。寄付をする人々には、手数料よりチップ制のほうが親和性が高いという目論見だ。彼らは手数料を課金する代わりに、サイトの運営費を加算した金額を寄付するよう呼びかけている。

発足5年目の「ユーケアリング」は、過去2年間で3億ドル弱の寄付金を集めた。社長のダン・セイパーによれば、寄付者の80%が平均6%のチップを加算したという。

起業に特化した「インディーゴーゴー」は、14年に手数料無料の寄付サイト(現在の「ジェネロシティ」)を開設した。寄付者に最大15%のチップを求めるこのサイトは15年、”個人の個人的な事情”への寄付金を推定3000万ドル集めた。

証明された”寄付”市場

15年7月の資金調達を契機に、ゴーファンドミーの成長は爆発的に加速した。調達に先立つ創業からの5年間の寄付総額は10億ドル。その後はわずか9カ月で総額20億ドルに到達、その7カ月後には30億ドルに乗せている。

快進撃は続きそうだ。今年1月にはユニセフなどの大規模慈善団体や企業、イベントなどに強い、企業価値9,000万ドルの寄付プラットフォーム「クラウドライズ」を買収。さらに国を超えた事業拡大計画も発表している。昨年7月にはダブリンにオフィスを構え、アイルランドと英国でのサービスを開始した。カナダとオーストラリアにも進出を果たしており、欧州の数カ国にもまもなく拠点が開かれる。

20年までに、年間の寄付総額は50億〜70億ドルに達するとCEOのソロモンは予測する。「ゴーファンドミーはまもなく、世界最大の寄付組織になるはずです。ゲイツ財団を超えてね」

ロブ・ソロモン◎ゴーファンドミーCEO、投資家。49歳。成長期のヤフーでの役員、旅券横断検索「サイドステップ」CEO(2007年、同業「カヤック」に2億ドルで売却)を経て、グルーポンにてCOOとして急成長に寄与。13年にアクセルパートナーズにジョイン。15年、同社のゴーファンドミー買収に伴いCEOに就任。

Susan Adams