旧ソ連構成国ジョージア(旧グルジア)南西部、黒海沿岸都市のバトゥーミでは、昨年12月まで47階建て「トランプ・タワー」の建設が予定されていた。しかしドナルド・トランプが米大統領に就任し、計画は破談となった。

約6万平方メートルの土地は手付かずのまま残され、所有者のギオルギ・ラミシュビリはかつてない事業課題を抱えた。ビジネスパートナーが米大統領に就任し、プロジェクトが宙に浮いてしまった外国人富豪は、いったいどうすればいいのか?

ラミシュビリの取った対応を見ると、トランプ政権に山積する重大課題に隠れてあまり注目されない大きな問題が浮き彫りになる。トランプが自身の資産を売却しない道を選んだことにより、外国人実業家らは短期的に私腹を肥やしつつも、将来的にはトランプの利益になると示唆することが可能になったのだ。

ラミシュビリは現在、「偽トランプ・タワー」の建設を計画している。このタワーは当初の計画と同じ場所に建てられ、トランプが承認した設計を使用する。

ラミシュビリはこの日、建設予定地のそばに所有するナイトクラブの一室で、パートナー2人と共にミーティングを行っていた。そのうちの一人で、トランプのプロジェクトを長年手掛けてきたテキサスの宅地開発業者、ティモシー・バートンは、計画に乗り気のようだった。

タワーの内装には、大統領の長女イバンカ・トランプ考案の装飾を施す。ジョージア政府はタワーそばの道路を「ドナルド・J・トランプ」と命名するかもしれない。建設計画については既に首相との話し合いも持たれた。

この夜、ラミシュビリとバートン、そしてニューヨークを拠点としたラミシュビリのビジネスパートナー、ギオルギ・ルツヒラゼの3人は、「トランプ」と明言せずにその名前を連想させる名称の考案に取り組んだ。

「Tが使えるじゃないか」とルツヒラゼ。するとラミシュビリは「Tタワー……Tタワーにしよう!」と言ってにんまりとした。ルツヒラゼは続いて、「タワーにTを付ければ、トランプ・タワーになる。あるいは(ニューヨークのトランプ・タワー所在地にちなんで)『五番街タワー』。少しべたな名前だが、ぴったりだ」と語った。

彼らは将来、当初のライセンス契約を復活させ、ビルを公式に「トランプ・タワー」と呼べる日が来ることを望んでいるという。その場合は名前の使用と引き換えに、全売上の約12%を大統領側に払うつもりだ。「タワーはいつでもトランプ印を採用できる。トランプ印の方がタワーに戻ってこれるようになればね」とルツヒラゼは話す。

この計画は、大統領の利益相反問題についての新たな懸念を生むものだ。大統領は今年1月、就任中は海外との取引を一切行わないと誓ったが、現在・過去のパートナーたちは皆、話を進めようと躍起だ。こうなると大統領は外交政策決定の際、自身の事業への影響を考慮せざるをえないかもしれない。

世界の「ミニ・トランプ」たちは本家本元のように、世間を騒がせれば騒がせるほど利益が出ることを理解している。

「(米特別検察官のロバート・)モラーがここに来ても全く構わない」とルツヒラゼ。彼は現在カザフスタンでもトランプ・タワー建設計画の復活に取り組んでいる。トランプの顧問弁護士、マイケル・コーエンを現地に招いた上で交渉を進めてきた。「Tタワーと呼んでも、法律的には何の問題もない。メディア対策としては素晴らしいアイデアだ」と語る。

物議を醸してメディアをあおるかのごとく、ルツヒラゼは次のように続けた。「ロシアからモスクワ住民20人を連れてきて、アパートの部屋を買ってもらうからな。そしてプーチンも一室を購入したってメディアに漏らそう。そうすれば大成功だ」。彼は後に、これは冗談だと語っている。

ルツヒラゼはトランプ・オーガニゼーションの首席法律顧問、アラン・ガーテンと「ほぼ毎週」連絡を取っていると主張するが、ガーテンは彼らの野望については把握していないだろう。「マイケル・コーエンからは嫌われるだろうが、アラン・ガーテンからはさらにひどく嫌われるはずだ」とルツヒラゼは話す。

「米議会でも話題を呼ぶだろう。(利益)相反について、皆が寄ってたかって話し始める。最高だ。相反を山ほど作って、やつらを途方に暮れさせるよ」

この問題について、コーエンやガーテン、トランプ・オーガニゼーション、そしてホワイトハウス関係者にコメントを幾度も求めたが、回答は全くない。

Dan Alexander