ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事は、 IT企業の電子部品を製造する台湾の富士康(フォックスコン)が同州南部に大規模な液晶パネル工場の建設を決めたことを受け、自州に「ウィスコンバレー」が誕生すると述べた。

もちろん、経済的な影響力やテクノロジー分野における重要性でシリコンバレーに匹敵するものにはならないだろう。だが、この計画は知事が主張するとおり、実際に同州経済を大きく変える可能性がある。古い工業地帯が、デジタル時代に適合した新たな存在に転換する大きな一歩になると考えられる。

フォックスコンは7月26日、最大100億ドル(約1兆1000億円)を投じて同州に工場を建設し、1万3000人までの雇用を創出すると発表した。この計画により、アナグマ州(ウィスコンシン州の愛称)は少なくとも、北米初の液晶ディスプレイ工場の所在地であることを誇れるようになる。そして、理想が実現すれば実際に、ウィスコンバレーを生み出すことができるだろう。

ウィスコンバレーは電子機器製造の新たな「生態圏」になり得る。複数のサプライヤーが進出し、州南部から全体へと、そして北中西部の全体へと広がる輸送ネットワークが構築され、経済面での足掛かりが築かれることになる。

同州はこれまで、「ラストベルト地域(斜陽化した鉄鋼業地帯)」とのイメージに苦しめられてきた。自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)やクライスラーも数年前に、州内にあった工場を閉鎖している。

だが、カリフォルニア州フリーモントにあったGMとトヨタの合弁工場建設にかかわった経営コンサルタントによれば、「今回の大型かつ大々的に報道されたプロジェクトは、経済成長におけるウィスコンシン州の存在感を再び増すことになる」。

同州で予想されるのは、現在ネバダ州リノで見られるような状況かもしれない。カジノと鉱業に依存し、経済も活気を失いかけていたこの都市は、電気自動車(EV)メーカーのテスラが建設したリチウムイオン電池工場、ギガファクトリーによって「ハイテクのエンジン」を手に入れた。同工場の設置に伴い、その他のテクノロジー企業もリノに進出。グーグルの施設建設もうわさされている。

液晶パネル工場のような大型の生産施設が建設されれば、サプライヤー各社の工場設置、水インフラの整備、物流ネットワークの構築など、経済成長を促進するようなさまざまな投資が行われる。ウォーカー知事が、ウィスコンシン州ではフォックスコン工場とその他の多数の建設工事から「間接的に」2万3000人の新規雇用が見込めるとしているのはそのためだ。

今後、議会による承認が必要ではあるが、知事はフォックスコンに対し、15年にわたって同州政府と地元自治体、連邦政府が合わせて30億ドル規模の支援策を提供することを約束している。同社はその代わりとして、3000〜1万3000人を雇用する。

フォックスコンがウィスコンシン工場に投資する額の30%を同社への支援措置に充てるのだとすれば、それは「高い金額だ。だが、妥当と考えられる」と別のコンサルタントは指摘する。

そこで、知事にはもう一つ確実に実行すべきことがある。それは、フォックスコンが雇用創出に関する目標を実現できなかった場合に適用される「クローバック条項」(企業側が契約を履行しなかった場合、過去に支給した金額を返還させる内容)を明確に定めておくことだ。

クローバック条項はすでに(米国では)一般的な取り決めとなっており、各州政府は同条項を契約に盛り込むことを、ますます強く主張するようになっているという。前出のコンサルタントによれば、「テクノロジーが短期間で開発・導入される現在、支援措置について合意した後で、企業側が必要とする人員が減少することがよくある」ためだという。

Dale Buss