技術のコモディティ化が進み、企業の競争力を生む源泉が”事業”というハード面から”人”というソフト面へとシフトしてきている中、「社員のモチベーション」がこれまでにも増して注目を集めている。

モチベーションにフォーカスした経営コンサルティング事業を手がけるリンクアンドモチベーションは3月、今年で7回目となる「Best Motivation Company Award(以下、ベストモチベーションカンパニーアワード)2017」を開催。組織のモチベーション指数が高い企業トップ10を発表した。

受賞企業は、2016年に同社が提供する「社員モチベーション調査」を実施した企業283社の中から選出。選考では、社員に対し全体的な満足度とモチベーションの源泉を質問し、その結果を元に「組織への期待」「組織への満足」「その一致度合」などを総合的に分析し算出した「モチベーションインデックス値」を参考としている。

今年はどんな企業が選出されたのか──ランクインした注目企業を紹介しよう。

”日本一楽しいスーパー”の挑戦 ─ 3位 佐竹食品

労働環境が厳しく、離職率も高い─。そんなイメージが強い小売業界。事実、厚生労働省が発表した調査結果によれば、小売業界における大卒3年以内の離職率は37.5%。トップ5に入るほどの数値となっている。

そうした状況の中、理念やビジョンの共有を徹底し、従業員エンゲージメントを高めている企業がある。総合食料品スーパーマーケット「satake」、生鮮特化型の業務スーパー「TAKENOKO」を展開する、佐竹食品/U&Sだ。同社は理念やビジョンの共有を図るため、2 年に1 度、全店舗を休みにして全社員が集う「ありがとう総会」を実施している。

「スーパーは、ほぼ年中無休(正月休みは除く)で営業しており、必ず誰かが現場に立たなければなりません。そのため、全社員が一堂に会する”場”を持てずにいました」(同社社長 梅原一嘉)

社員数(アルバイト・パート含む)が1700名を超える佐竹食品/U&S。組織内では、従業員の顔と名前が一致しない、全員が同じ思いで働けていない、といった課題も生まれていた。

「だからこそ、全社員が”同じ場所で、同じものを聞き、同じものを見る”ことが、チームワークの醸成に効果的だと思いました。全店舗を1日休みにすることは決して簡単ではありません。1億円の売り上げが減るわけですから。ただし、目先の業績を捨ててでも、全社員に理念やビジョンを共有することが大切だと思いました」(梅原)

結果的に、同社はありがとう総会を中心とした施策の展開により右肩上がりで成長を続ける。お客さんや、取引先から、「社員の目の色が変わった」といった声も届くようになった。

やる気を高める秘訣は「透明性」 ─ 5位 エイチーム

社員のやる気を引き出すために必要なことは何だろうか。この問いに、会社の透明性・オープン化という答えを出している企業がある。それがスマートフォン向けゲーム・アプリおよび、比較サイト・情報サイト・ECサイトなどの企画・開発・運営を行う、エイチームだ。

同社はまだ社員が数名だった、2002年から各事業の売り上げ、利益、目標達成率などを発表する「全社ミーティング」を開始。毎週月曜日に行われる、このミーティングは15年続き、これまでに750回以上も開催されている。全社ミーティングを開催することにした理由を、同社の社長室室長である光岡昭典は、こう語る。

「我々の経営理念『みんなで幸せになれる会社にすること』を実現するためには、社員一人ひとりを信頼して、必要とする。そして会社の情報をオープンにし、全社員が経営について考えるようにすることが大切だと思いました」

おおまかな会社の業績や方向性だけではなく、目標の進捗率や採用状況、はたまたサービスの不具合など、良い情報も悪い情報も毎週、役職や経験など関係なく全社員に共有する。これにより、社内の透明性が高まっただけでなく、社員一人ひとりが経営者の目線を持って働けるようになったという。

「仕事に対するモチベーションも高まり、全社員が意欲的に仕事に取り組んでいます。『エイチームグループの一員である』という当事者意識を持つことで、事業部を超えたノウハウの共有が行われるようになりましたし、何より会社の理念や業務目標も現場レベルまで浸透させることができました」(光岡)

中途社員とも理念を共有 ─ 8位 ユーザベース

企業・業界分析のためのオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA」、ソーシャル機能を兼ね備えた経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を運営するユーザベース。同社は東京のほか、上海、シンガポール、香港、スリランカ、ニューヨーク(グループ会社含む)にも拠点を構え、ビジネスを展開。会社の成長とともに社員数も増え、現在約200名が働いている。

社員数の増加に伴い、同社は改めて理念やビジョンを浸透させ、組織を良い方向に導くため、2015年1月、「カルチャーチーム」という組織を立ち上げた。

具体的に行っているのは、現場の課題を吸い上げて経営層に伝え、解決策をフィードバックしていくこと。そのために、カルチャーチームに所属する3名のメンバーは、社員に対し定期的にアンケートを実施している。

例えば、最近のアンケート結果からは、「人事評価における妥当性」が課題として挙がってきた。同チーム所属し、採用マネジャーを務める村樫祐美はこう語る。

「人事評価制度は当社のミッション『経済情報で、世界をかえる』、バリューの『7つのルール』に基づき、設計されています。当社では新しい社員が続々と入社していて、制度を正確に理解していない社員もいたため、改めて制度設計の思想から評価フロー、また具体的に個々がどのように目標設定をすれば良い成長につながっていくのか、実例を交えた勉強会を実施しました。こうした取り組みが社員1人ひとりの会社の目指す方向と価値観の理解に注力したい思います」

1. LIFULL(旧:ネクスト)

創業年:1997年従業員数:1057名
事業内容:不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOMES(ライフル ホームズ)」、家具・インテリアECサイト「LIFULL インテリア」の運営を手がけるほか、生活に関連サービスを複数運営している。
施策内容:選考を通過するとアクセラレーターからのサポートを受けられる新規事業提案制度「Switch」、合宿で研究・開発に没頭できる「クリエーターの日」などを実施している。

2. イングホールディングス

創業年:1970年
従業員数:159名
事業内容:「企業と個人とのベストマッチング」を生み出すことをテーマに掲げ、多くの求人媒体を駆使した人材採用広告を展開。そのほかにも、研修や企業の人材育成までトータルで提案。
施策内容:モチベーションの向上を目的とした「社員総会」を開催するほか、旅行代理店が驚くほどの盛り上がりを見せるグアムなどへの「社員旅行」を実施している。

3. 佐竹食品/U&S

創業年:1969年
従業員数:1700名
事業内容:”日本一楽しいスーパー”を掲げ、地域密着型の総合食料品スーパーマーケット「Satake」のほか、日本一の店舗数を誇る生鮮特化型の業務スーパー「TAKENOKO」を展開している。
施策内容:マネジメントの重要性を徹底するために、「MI(モチベーションインデックス)値」のランキングを掲示。また2年に1度、全店舗を休みにして全社員が集う「ありがとう総会」を実施している。


2年に1度、全店舗を休業して開催される「ありがとう総会」。休みもバラバラの社員全員が一堂に会する

4. ケーイーシー

創業年:1977年
従業員数:650名
事業内容:教育×エンターテインメントを軸に、「KECゼミナール」や「パソコン教室 わかるとできる」など、小学生から社会人までを対象とした総合教育サービスを展開している。
施策内容:代表の小椋義則氏が仮装とマジックを盛り込んだ動画「オグチューブ」を通して会社の方向性を共有。生徒や保護者を巻き込んだ「ハロウィンチャレンジ」も実施している。

5. エイチーム

創業年:1997年
従業員数:580名
事業内容:名古屋に拠点を構える総合IT企業。インターネット・スマートデバイスをベースにゲームコンテンツおよび、情報サイトや比較サイト、ECサイトなどの企画・開発・運営を行っている。
施策内容:月に1度、社員の「バースデーイベント」を開催するほか、全社員が経営目線を持つために各事業の売り上げ、利益、目標達成率などを発表する「全社ミーティング」を毎週月曜日に実施。

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各事業の売り上げ、利益、目標達成率などを発表する「全社ミーティング」。これまで750回以上も開催。

6. PLAN-B

創業年:2003年
従業員数:292名
事業内容:SEO対策、リスティング広告、Webサイト構築、アクセス解析、コンテンツマーケティングなど、顧客の成果に直結するデジタルマーケティングサービスをワンストップで提供している。
施策内容:四半期に1度、社員総会や納会を実施。全社員で価値観のすり合わせを行うほか、日替わりメニューが300円から楽しめる「社員食堂でんらく」をオープンしている。

7. ウィルゲート

創業年:2006年
従業員数:119名
事業内容:企画、制作、拡散、検証の4つの要素をワンストップで提供するコンテンツマーケティング支援のほか、『暮らしニスタ』や『Milly』などのメディア運営も手がける。
施策内容:コミュニケーション活性化を目的とした全社員参加型の運動会「ウィルゲートカップ」を開催。社員自らの判断で副業を行えるようにし、モチベーション向上を図っている。

8. ユーザベース

創業年:2008年
従業員数:178名
事業内容:企業・業界分析のためのオンライン情報プラットフォーム「SPEEDA」、ソーシャル機能を兼ね備えた経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」を運営。
施策内容:年末にユーザベースが大切にする7つのルールを体現した社員エピソードを紹介する「Year Book」を作成のほか、会社の方向性を全社員に共有。


ユーザーベースは毎週1回の全社会議「みんなの会」を開催。進捗報告や業務連絡が行われている。

9. 出光興産

創業年:1911年
従業員数:9203名
事業内容:潤滑油の製造、サービスステーション(SS)などの石油事業を中心に、アグリバイオや有機ELなどの研究開発、美術館などの芸術文化支援活動(メセナ)も行っている。
施策内容:OJTを中心とした能力開発、全社共通の研修を実施。また、個々の活動記録目標をもとに社員一人ひとりの育成の方向を共有。異動・配置転換を行っている。

10. ベーシック

創業年:2004年
従業員数:105名
事業内容:Webマーケティングメディア「ferret(フェレット)」を運営しているほか、マーケティングオートメーションツール「ferret One(フェレットワン)」を運営している。
施策内容:同郷出身者で集う「テーマランチ」を開催。また、事業創造指針・求める人物像・5年後のゴールなどをまとめた「オリジナルクレド」を策定するほか、年に1回の社員総会を開催している。

選定基準
全体的な満足度を問う「総合満足度」4問と、社員のモチベーションの源泉となる16領域の「モチベーションファクター」に関する設問128問で構成。各設問については、「どのくらい求めているか」「どのくらい満足しているか」を「非常に重要(満足)である」から「全く重要(満足)でない」までの5段階で回答。その結果をもとに組織への期待度、組織の満足度、その一致度合いなどの観点からモチベーション指数を総合的に算出。調査は2016年1月〜12月の間、283社を対象に実施。

Forbes JAPAN 編集部