米自動車メーカー大手ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランド、キャデラックのヨハン・ダ・ネイシンは3年前に同社プレジデントのポストに就いた際、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)と取締役会に対し、忍耐を求めた。

新型モデルの開発も顧客サービスの向上も、ディーラーネットワーク全体の近代化も、ある程度の時間を要する。キャデラックを立て直すには、時間が必要だった。そして、同社でのダ・ネイシンの道のりはこの間、少なくとも米国においては厳しさを増してきた。

消費者は高級車への関心を急速に失い、プレミアムクロスオーバーやSUVを好むようになった。だが、それでもダ・ネイシンは、「XT5」にクロスオーバーが加わるまでは、セダン中心の現在のラインナップで何とか形勢を維持しようと力を尽くしている。

セダンの「ATS」と「CTS」の米国での販売台数は今年7月、それぞれ前年比で63%、40%減少した。さらに、同様に市場の変化に直面する競合他社の一部は、在庫が増えつつある高級車の大幅な値引きを行ったり、利益率が低いレンタカー会社などへの割引価格での一括販売を行ったりしたりしている。

調査会社IHSマークイットからフォーブスが入手した情報によると、今年5月までの車両登録データが示すのは、日産が今年販売した「インフィニティ」の22%が、レンタカー会社に納められていたということだ。この割合は、高級車としては異例の高水準だ。

市場調査会社J.D. パワーのパワー・インフォメーション・ネットワーク(PIN)のデータによれば、BMW「3シリーズ」や日産「インフィニティQ50」などのセダンは販売奨励金の額を引き上げている。それぞれの値引き額は平均で1万1780ドル(約130万円)と1万244ドル。一方、キャデラックが「ATS」に適用している値引き額は、これらの2分の1程度だ。

そして、こうした措置の結果は予想どおりに表れている。キャデラックの市場シェアは7月、インフィニティに奪われる形で縮小。さらに、もう一つの予想どおり、インフィニティの親会社である日産自動車の今年第1四半期の営業利益は、前年同期比13%減を記録。これは主に、米国での販売費用がかさんだためとされる。

米国以外では「回復」

一方、キャデラックの今年上半期の業績は、米国以外では好調だ。中国では販売台数が前年同期比75.4%増となり、そのおかげで世界全体でも、同27.1%増を記録した。米国内で値引き販売を抑制できるのも、こうした各国市場の状況によるものだ。

実際のところ、中国市場がなければキャデラックの復調はあり得なかっただろう。同社は世界全体で昨年、1978年のピーク時の36万825台には及ばないものの、30万8718台を販売した。中国以外でも、ロシアと韓国、そして西欧と中東の両地域で販売台数が増えている。

キャデラックの販売台数に占める各国市場の割合は、最も多くを販売していた時期には米国が97%を占めていた。だが、その後は割合の減少が続き、2016年には55%となっている。

当然ながら、何年にもわたって販売の低迷が続いたキャデラックにとって、最大の課題は消費者間のブランド認知を変えることにある。ダ・ネイシンはこの点について、調査結果が示す数値は持続的な改善傾向にあり、楽観視する理由があると述べている。

「取り組むべきことはまだ残されている。だが、ブランドに対する認識という点では危機を脱したと見られる。非常に心強く思っている」

Joann Muller