ディズニーがネットフリックスへのコンテンツ提供を2019年から停止すると発表してから1週間足らずで、ネットフリックスはこれに反撃する動きを見せた。

8月14日、ネットフリックスはディズニー傘下のABCネットワークの大物TVプロデューサーの、ションダ・ライムズ(Shonda Rhimes)を引き抜くと発表した。

ライムズはABCの医療ドラマ「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」を大ヒットさせた有名プロデューサーだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によるとネットフリックスはライムズが運営する製作会社、ShondaLandと複数年契約を結び、新たなオジリナルドラマの製作に乗り出すという。ライムズとABCの契約は2018年1月で終了する。

この動きはネットフリックスのオリジナルコンテンツ増強策の一貫と見られる。ネットフリックスは現在、1億400万人以上の有料会員を抱え、60億ドル(6600億円)のコンテンツ予算を確保しているが、フォーブスの試算ではそのうち約50億ドルがコンテンツのライセンス費用に投入され、他社の製作スタジオに支払われている。

ディズニーが先週、ネットフリックスからの離脱を表明したことで、他のコンテンツホルダーらがこの流れに追随する懸念も浮上していた。一方でネットフリックスはさらに多くのオリジナルコンテンツの確保に乗り出し、「キック・アス」や「キングスマン」などで知られるコミック出版社大手のMillarworld(ミラーワールド)を買収。また、人気司会者でコメディアンのデイヴィッド・レターマンを起用した新番組の製作もアナウンスしていた。

さらにネットフリックスは、アカデミー賞を受賞した「ノーカントリー」や「ファーゴ」等で知られる映画監督のコーエン兄弟が製作する新ドラマシリーズを来年から配信すると発表した。

調査企業eMarketerの主任アナリストのPaul Vernaは「ストリーミングの世界では競争の激化が進み、オリジナルコンテンツの確保が、他社と差別化を果たす上で唯一の強力な手段となっている」と述べた。

TVよりも自由度の高い製作環境

今回、ネットフリックスがライムズを獲得したことは、同社の成長を強力に牽引することが期待される。ライムズはここ数年、ABCの稼ぎ頭と言えるコンテンツをいくつも生み出しており、WSJによるとライムズの作品が生み出した広告売上やライセンス収入等の合計は20億ドル以上に達している。

ライムズの法廷ドラマ「殺人を無罪にする方法」と「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」の公式サイトのツイッターフォロワー数は、合計で600万人近くに達している。ライムズの番組は常に高い視聴率を獲得しており、グレイズ・アナトミーの最新シリーズは米国の18〜49歳を対象とした調査で、「ウォーキング・デッド」や「ビッグバン・セオリー」らと並び、米国で8番目に視聴率の高いドラマシリーズにあげられていた。

今回の移籍契約でネットフリックスがライムズに支払う金額の詳細は明かされていないが、前払金も含めて莫大な金額になることは容易に予想がつく。ライムズはABCとの契約で、年間1000万ドルを超える金額を手にしており、さらに海外への配信からも莫大なロイヤリティ収入を得ていた。

ネットフリックスのコンテンツ主任のTed Sarandosは声明で「ションダ・ライムズは現代のTV業界を代表する偉大な才能だ。ライムズの作品は人々の心を強く魅了し、時にはタブーを打ち破るスタイルで支持を集めてきた。彼女をネットフリックスに迎え入れたことを誇りに思う」と述べた。

ライムズはネットフリックスへの参加で、ABC時代よりも自由度の高い番組制作が可能になる。TV向けドラマには1話あたりの時間や制作本数の制限がある。また、ヌードや過激な場面は放送できないといった倫理基準にも縛られる。ライムズはネットフリックスへの参入で「より自由な表現活動が可能になる」と述べている。

ディズニーCEOのボブ・アイガーは、同社がネットフリックスからの離脱を決定した後も、ディズニー傘下のルーカスフィルムやマーベルのコンテンツに関しては、ネットフリックスでの配信を継続していくと述べていた。

Madeline Berg