タイトルだけだと、電気自動車(EV)否定派の意見かと思われるかもしれないが、私はEVに魅力を感じる一人だ。

まだEV黎明期の2009年末から、自宅で200V充電ができるようにして5年乗った。感想はというと「こんなに便利で、不便なクルマはない」だったが、魅力のほうが大きかった感じである。不便は走行距離の短さに尽きた。

そのあたりは後述するが、最近のEVに関する新聞報道はすごい。9月6日の日産リーフの新車発表は特別大きかった。まさに明日からEV時代が到来と告げるような熱い報道ぶりだったな。

英仏が2040年からガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると表明した衝撃ニュースを皮切りに、ボルボが2019年以降の新車をすべて電動化すると発表。ほか、VWグループが2025年までに50車種をEVなど電動化、ベンツも2020年代前半までに10車種以上を電動化、BMWも11車種を予定するなど、EV一直線、驚愕の計画ばかりだ。

日本はといえば、EV量産化の先駆けとなった三菱(2009年)、日産(2010年)が世界的に先行したが、現在では欧・米・中の勢いに押されっぱなし。EVへの興味は薄く、これまでの国内の販売台数は三菱が2万台、日産リーフが8万台。日本には100歳以上の老人が6万7824人いると発表されたが、街でたまに見かける日産リーフは100歳以上の人と出会う感覚ということだ。しかし、その日本もいやが応でもEV大増殖の気配だ。

日産が性能アップの新リーフで年間3万6000台を目標にし、来年にはさらに強力なEVを発売する計画を発表した。それだけでなく、三菱と組んで2022年までにEV12車種を投入、フル充電で600kmを走れるクルマも開発すると表明している。

対するトヨタはEV開発を行う社長直轄の社内カンパニーを発足。2019年から中国での量産化を手始めに世界展開する。マツダとの提携もEV開発を見据えた動きだ。ホンダは来年から中国で展開、欧州ではディーゼルの開発をやめ、2019年から売り出す予定。スバルも2021年から販売開始を表明している。

いずれもまず海外で、後に日本市場導入という道筋だが、なぜ中国が手始めかというと、中国は来年中に日本得意のハイブリッド車をエコカーとして認めない政策を開始するからだ。ガソリン・ディーゼル車の生産と販売を停止する時期についてもすでに検討も始めている。日本メーカーはお尻に火がついた感じだ。

それに、中国はすでに世界一のEV生産国である。石油は工業用としては温存し、EV用の電力は石炭発電で確保するという国策だ。

世界をあげたEV化の動きで思い出すのは、日本の燃料電池車(FCV)のこと。3年前の今ごろは「FCVこそ本道」報道一辺倒で、EVはすっかり忘れられた存在であった。しかし、トヨタのMIRAIは3年かけてまだ1370台、後発のホンダは160台が走っているにすぎない。水素ステーションも全国で91カ所。政府のEVとFCVの二股政策は欲張りすぎと、思えてならない。10年後に期待だ。

走行距離の短いEVには充電設備の充実が絶対条件だ。30分〜40分で80%充電できる急速充電器の数はそれなりに増えていて、現在7136スポット(充電に長時間かかる緩速の100V、200Vは1万4669のスポット。家庭に引かれた普通充電器は別)。現在、ガソリンスタンドは減りに減って3万店程度というから、それに比べればまずまずと思える数だが、順調にEVが売れ始めたら、1時間以上の充電待ちも現実的になる。
 
私が以前乗っていたのは三菱のアイ・ミーブで、走行距離は160km(現在は180km)だった。カタログ燃費と実燃費がかけ離れていることは誰でも知っていることだが、ミーブは徹底的に気を使って走ってもせいぜい7割弱、冬は6割以下だ。その走りは静かで加速もすこぶる気持ち良し。走行安定性も抜群であったが、快適に走ればあっという間、そう50kmも走ればバッテリー残量が急激に減ってしまうから、ひたすら我慢して走った5年間だった。

つまり、EVにおいてのファン・トゥ・ドライブは快適な走りを味わうのではなく、いかに長く走れるかという楽しみだった。ハイブリッド車のオーナーも楽しいのはガソリンスタンドでの給油量(少ないほど、よく走ったという意味で)っていうから同じですね。初代リーフは200km、後に280kmの走行距離だったから、似たり寄ったりだったろう。

とはいえ、アイ・ミーブはセカンドカーとして近距離限定で使えばとても魅力的なクルマだった。3万5000km走ったとき、三菱自動車にいくら節約できたかを同型のターボ車と比較してもらったら、30万円という数字が出た。もっと大きなクルマと比べたらその金額差はさらに大きくなる。ちなみに1km走る費用はたった4円という計算になった。アイ・ターボは3倍の12円強だ。財布には決定的にやさしかった。

新しいリーフの走行距離は、なんと400kmと飛躍的に向上した。世界基準をはるかに超え、250kmは楽に走るだろう。やっと本格的に使えるEVが出てきたといえよう。気持ちいい走りと、エコな走りを皆さんにおすすめできる。もっとも、こう各社から次々とEVが出てくるとなると、どれを買っていいか、購入時期を含めて混乱するかもしれない。それに、100Vや200Vの緩速充電がマンション住まいでもできる態勢作りが絶対に必要だ。

現在EV界で最も注目される会社はアメリカのテスラだろう。今までの高級路線から価格を380万円に抑えたモデル3(走行距離350km)の生産を始め、年間50万台も売ろうとしている。電池は日本のパナソニックとの共同開発だ。


世界のEV界をリードするテスラの最新モデルは3万5000ドルで走行距離は350km。世界で年間50万代販売を目指す。日本での発売は少し遅れて2019年となる。再来年なので補助金額は不明。(Photo by Justin Sullivan / gettyimages)

そのパナソニック創業家の松下弘幸氏(ヒロ松下)は、私が編集長を努めていた『ベストカー』の連載を機に35年来の付き合いだ。インディ500のドライバーとして地上最速の戦いをした後、実業界に転身。テスラのイーロン・マスクとも付き合いがあるという。

「あの人はいま」と言うと、ヒロに叱られそうだが、氏のカリフォルニアの会社は「イノベーションカンパニー」をビジョンに掲げ陸・海・空への取り組みを目指す。次回ではそのヒロ松下が、最近もっとも力を入れている事業について語りたい。

勝股 優