「配車アプリ」が続々登場しているカンボジアだが、現地の人々に重宝されているITテクノロジーは他にもある。電子マネーなど「フィンテック」はその代表格だ。

カンボジアでよく使われている電子マネーには、「Wing」と「Pi Pay」がある。それらの使い方は、日本の「Suica」を想像してもらえると理解しやすいかもしれない。基本的には、お金をチャージして、サービス加盟店舗で決済に使うというものだ。Suicaは切符販売機でチャージするが、Wingの場合はプノンペンのいたるところ(体感だと500mおきの間隔)に入金を行ってくれる加盟店舗があった。Pi Payも同様だが、加えて街中に「PayGO」というチャージ端末がある。


Wingのアプリ

またWingとPi Payには、日本の「LINE Pay」「Yahoo!ウォレット」、中国「WeChat Payment」のような「個人間送金」を行う機能もついている。特徴的なのは、クレジットカード情報を登録する必要がないという点だ。スマホがあり、登録だけ済ませれば、街中で簡単に入・送金が可能となっている。日本に留学経験のあるカンボジア青年C氏は言う。

「カンボジアはまだ、日本や先進国のように銀行間の連携が成熟していません。プノンペンから田舎にお金を送るのも一苦労です。ですが、電子マネーを使えば、スマホで仕送りをするなど、簡単に送金することができます。それにカンボジアではまだ、クレジットカードを持てない人も少なくありません。電子マネーにすれば、大金を持ち歩く際も便利です」

C氏によれば「カンボジアで一般向けのフィンテックサービスが広く使われるようになったのは、ここ1年くらい」とのこと。いまでは多くの人が普通に使っており、「お金のやりとりがずいぶんと楽になった」と感想を話していた。


そこかしこにあるWingの加盟店舗

Pi Payのチャージ上限は5000ドル。サービスを通じて決済すると、いろいろな商品の割引も受けられる。直近の資料だけ見ても、ドミノピザ30%オフ、ロッテリア20%オフ、アディダス5%オフなど、かなり大掛かりなサービス提供が行われている。なおPi Payサービス普及にはマレーシア銀行大手「CIBM」とドイツ決済サービス事業者「ワイヤカード」が協力しており、今後、他の国におけるシェア拡大も期待されている。

少し話はそれるが、カンボジア国内の通貨についても、補足として説明しておきたい。カンボジアには「リエル」という自国通貨があるが、実際に流通しているものの大部分は「米ドル」となっている。Pi Payのチャージ上限の単位が、ドルとなっているのもそのためだ。


米ドルとリエル

「通貨が米ドルなどで、海外投資家にとって、為替リスクや参入障壁が他のアジア新興国にとって低いのもカンボジアの特徴です。言い換えれば、カンボジア政府や中央銀行が独自の金融政策を取れないというデメリットもありますが、お金の流れという意味で考えると非常にユニークな国です。アメリカの州が、アジアにぽつりとひとつあるというイメージでしょうか。そんな国でフィンテックサービスがどう発展していくか。カンボジア国内の人々の暮らしが変わることもそうですが、グローバル的な見地からも注目だと思います」(現地在住の日系ビジネスマン)

新興国とお金と聞くと、どうしても連想してしまう話題がある。マネーロンダリングだ。カンボジア内務相の政府役人O氏からは、次のような話もあった。

「カンボジアの刑務所に収監されている犯罪者には、多くの外国人が含まれています。主な罪状はマネーロンダリングと麻薬です。国のイメージを変えていくために、それらの犯罪を厳しく取り締まっています。カンボジアは最近、OECDにも加盟しました。本当に発展したクリーンな国になるために、国際社会との協調や国内制度の拡充を進めていきます」

フィンテックはカンボジアの国民生活を変化させ始めているが、今後は社会や国家の資金の流れを健全・透明化することに寄与していくのだろうか。カンボジア×テクノロジーの未来に注目だ。

河 鐘基(ハ・ジョンギ)