読者の皆さんは、カンボジアと言えばどのようなキーワードを連想するだろうか?

観光客に大人気の世界遺産「アンコールワット」を真っ先に挙げる人も多いだろう。はたまた、90年代まで続いた激しい「内戦」や、その後に続いた「復興」を挙げる人もいるかもしれない。政治や経済に関心が強い人の中には、「東南アジアの貧困国」というキーワードを連想する人もいるはずだ。

一方で「カンボジア×テクノロジー」と言われると、あまりピンとこないかもしれない。実際、筆者もカンボジア現地に直接取材に訪れる前まで、その言葉をイメージすることができなかった。

内戦終結から約25年。現在、カンボジア経済は急成長を遂げており、並行して人々の暮らしも劇的な変化を遂げている。その成長・変化を支えているもののひとつが、地理的・時間的制約が少ない「ITテクノロジー」だ。


プノンペン市内

とある日系不動産関連企業のツテを頼り、現地取材に訪れたカンボジアの首都プノンペン。まず最初に驚ろかされたのは「タクシーの利便性」だった。今年に入って、カンボジアではウーバーがサービスを開始したが、その時期を前後して現地ローカルの配車サービスも相次いで登場し始めている。

カンボジアで利用できる配車アプリとしては「iTumo」「CamGo」「Exnet Taxi Cambodia」「PassApp Taxi」「Choice Taxi」「Ugo711 Taxi」などがある。バラエティーも豊富で、競合するサービスが多く、現地では「配車アプリ戦国時代」とさえ表現されるほどだ。そのうち「iTumo」などは日本語にも対応。日本からの旅行者にとっても、非常に便利なサービスとなっている。

現地在住の日本人ビジネスマンは、「プノンペンでタクシーが普及し始めたのは、ここ2年くらい。まだまだ車両台数が多くないという実情があります。ですので、夜になったりすると行きがけの車両を止めるのも意外と大変。配車アプリは、現地の人々や観光客に重宝されていますよ」と言う。


台数の多くないタクシー(空港にて)

「今でも市内の主な移動手段はトゥクトゥク(オート三輪車タクシー)なんですが、メーターがないので値段交渉をする必要がある。面倒だったり、時にトラブルになることがあります。その点、配車アプリは金額も表示されますし、旅行者でも安心して利用できます」

試しに「iTumo」を使ってみる。すると5分もしないうちに”白タク”が到着。とても親切なカンボジア青年が荷物の積み込みを手伝ってくれた。普段は別の仕事をしているそうだが、休日は自家用車と配車アプリで”副業”をしているそうだ。英語も堪能で、カンボジア人の普段の暮らしについてもいろいろと教えてくれた。

普段タクシー運転手をしていない”普通の人々”との交流も、配車アプリならではの楽しみだ。アジア各国の事情に詳しい別の現地在住ビジネスマンからは、こんな声もあった。

「カンボジアのタクシーや白タクは、値段的にも非常にリーズナブルだと思います。しかも、アプリ同士が競合しているのでサービスの質も低くありません。タクシーの数が多い日本や韓国では、業界の利権からか、白タクは犯罪に繋がるみたいな話も根強いですが……僕の知りうる限り、こちらでそのような被害に遭ったという人は聞きませんね」


乗車中にパンクしたトゥクトゥク

カンボジアでは、いままさに社会生活のためのインフラが本格的に整備されていようとしている。言い換えれば、それまで場を占めていた既存のサービスが存在しないため、新しいITサービスが広がるスピードが先進国に比べて圧倒的に早い。前出のビジネスマンが言うように「利権があまりない」というのは、テクノロジーの発展にとって非常に有利な条件となりそうだ。

余談だが、プノンペン空港でWi-fi(おそらく中国製)を借りたところ、1週間5ドル(デポジット50ドル)という破格の安さだった。4G回線で通信速度もとても速い。ちなみに、日本の空港で海外旅行用のWi-fiを同期間借りようとした際の費用は、1万円以上がかかる計算だった。カンボジアのITテクノロジーを視察に行く方々には、ぜひプノンペン空港でWi-fiを借りてみることをおススめしたい。

河 鐘基(ハ・ジョンギ)