ストーリーが大事、ということを言っていたのはスティーブ・ジョブズだったでしょうか。どれだけ優れた技術があったとしても、人を感動させられるのは、心を動かすのは、ストーリーだ、と。

「働き方の選択肢」を増やしたい。そんな想いで2016年5月、私は仲間たちと、一般社団法人「at Will Work」 を立ち上げました。一人ひとりの生き方のストーリーを大事にすれば、人の働き方は多様化するのではと思ったからです。

まずはみんなで考えることから始めようと、17年2月、第一回『働き方を考えるカンファレンス2017』を行いました。経営者やコンサルタント、政治家まで、いろんな働き方をする54名の方に登壇いただき、様々なストーリーをお話しいただきました。登壇された方々にとっても、観覧された方々にとっても、私たちにとっても、とても多くの気付きがあったと思います。

at Will Workはさらに多くのストーリーを知りたい、触れたい、伝えたいと考え、17年7月から『Work Story Award』という取り組みを始めました。1年に20ずつ、5年間で100のストーリーを見つけようという取り組みです。ちょうど先日、12月7日に今年2017年の20のストーリーを発表しました。

働き方の様々な取り組みは、ここ最近始まったものではありません。働く環境を改善し、働き方をよくしようとすることは、多くの人や企業がすでにはじめていて、そしてさらによくしようと試行錯誤を重ねています。そんな人たちのストーリーから働き方の選択肢が生まれていくと思っています。

この連載コラムでは、「働き方」をテーマに働く私が出会った、素敵な働くストーリーたちをご紹介していきたいと思います。

先日、渋谷ヒカリエで行われた新しい働き方の祭典、『Tokyo Work Design Week』(TDWD)というイベントに登壇する機会がありました。今年5年目、のべ1万3000人が参加した「働き方の祭典」です。オーガナイザーを務める横石崇さんによると「働き方のロックフェス」とのこと。予定調和一切なし、ジャズのセッションのように様々なストーリーたちが組み合わさっていく、そんなイベントでした。

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昨年に続き今年も登壇させていただいたのですが、One JAPAN共同発起人・代表を務める濱松誠さん、ミライフ代表取締役の佐藤雄佑さんと共に「人生100年時代のキャリア戦略」というテーマでお話しさせていただきました。

政府の「人生100年時代構想会議」にも引用されたリンダ・グラットンさんの著者『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)─100年時代の人生戦略』を読んだ方も多いのではないでしょうか。100歳以上生きる時代にどう働いていくべきか、自分の場合はどうなんだろう、何歳までどう働くんだろうと、考えるきっかけになったと思います。

私は、内容には共感したのですが、実は”100歳生きる”ということにまだあまりピンと来ていません。でも、100歳まで生きるかどうかは別として、強烈に実感したのは、世界はものすごい勢いで変わっているということ、そして今後も予想し得ない変化が起こるのだ、ということです。

イベントの中でも、そんな変化の時代にどんなキャリアを自分たちは歩んでいくのか……という話をしつつ、自分と家族の話になっていくという過程がありました。「働き方」は「生き方」でもある、そして「人との関わり方」である、そんな話をしました。

ここ最近、サイボウズの青野慶久社長が、国を相手に計220万円の損害賠償を求め、来春にも東京地裁に提訴する方針を固めた、という報道がありました。「日本人同士の結婚で夫婦が同姓か別姓かを選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反する」というのが訴訟の内容だそうです。

青野さんは2001年に結婚した時、奥様から「姓を変えたくない」と言われ、深く考えずに自分が奥様の姓になり、仕事では旧姓である青野姓で仕事をしています。それから今に至るまで、公文書は西端、仕事上は青野という使い分けをしなければならず、夫婦同姓制度によるあらゆる不便に悩まされているそうです。

男性で、しかも今を時めく上場企業の社長ですから、青野さんは目立っていますが、働く女性には決して珍しい悩みではありません。

実は私、今年の1月に離婚をしたのですが「名前」の持ち方にとても悩むという経験をしました。憲法に反するかどうか、という点はさておき、仕事をするにあたって名前はとても重要であると同時に、その名前を人生の選択によって変えなければいけない可能性があるというのはすごく大変だなとつくづく実感しました。

先ほど「働き方」は「生き方」でもある、と書きましたが、お互いの働き方を突き詰めていった結果、私たち夫婦の選択は離婚してそれぞれの道を行く、というものでした。「藤本」はパートナーの姓で、結婚した10年前はなんの迷いもなく旧姓からこちらに入籍したのですが、離婚の際に、旧姓に戻すかどうかという選択を迫られました。10年間仕事をして「藤本」という社会人としてのブランドができた結果、納得のある選択をしても難しい現実が待っているのだな……という体験をしました。

悩んだ末、私は「藤本」という名前の「新しい戸籍」を作りました。「元の戸籍に戻る」という選択以外に、「新しい戸籍を作る」という選択肢があったのです。

前述の通り、この10年間はすでに今の藤本での名前で仕事をしていて、私としてももう体の一部になっていますし、変えてまた一つずつ説明するのが大変……というのが理由です。戸籍や名前って、社会において重要な意味を持つ割に選択肢は少ないというのが現状ではないでしょうか。

人生100年時代、リンダ・グラットンさんは著書の中で、「価値観は変わるものだから、結婚のあり方も変わる」と書いていました。結婚だけではなく、仕事の価値観や優先順位も変わるでしょう。それと共に社会のあり方や社会自体の価値観も、変わってくるのではないでしょうか。

藤本 あゆみ